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海を渡ったレスキュー隊員「日本の救助技術を持ち帰りたい」フィジーから大阪で訓練に励む 被災地の厳しい現実も学んだ2か月間に密着

MBSニュース / 2024年11月20日 11時43分

 災害大国とも言われる日本。その現場で培われた救助技術は世界でもトップクラスと言われています。こうした救助技術を海外のレスキュー隊員らに伝えるプロジェクトが行われています。災害救助の実践経験も豊富で、組織として西日本最大の大阪市消防局。国を背負い訓練に臨む海外からの隊員の2か月間に密着しました。

南太平洋 フィジーから来た消防士

 車に閉じ込められた人を助け出す訓練。参加するのは東南アジアやオセアニアなどの7つの国からやってきた9人のレスキュー隊員らです。

 豪雨や地震などの自然災害が頻発する日本。実際の現場で磨かれた救助技術は、世界でもトップクラスとされています。

 国際協力を行うJICAは、こうした技術を開発途上国に伝えるプロジェクトを26年前から行っていて、これまでに60以上の国から約230人が参加しています。

 【入校式の様子】
 (シモンズ・ヴィニアナさん)「私はシモンズです。国はフィジーです」

 シモンズ・ヴィニアナさんは南太平洋の国、フィジーの消防士で、14人を指揮するエリートです。シモンズさんはシングルマザーで9歳のひとり娘ミシェルさんを両親に預けてやってきました。

 (シモンズ・ヴィニアナさん)「日本の技術を学んで国に持ち帰りたいです」

急速な発展を遂げるフィジー 高層ビルからの救助技術が課題

 日本から飛行機で約9時間のフィジー。美しい海が印象的ですが、近年は高層マンションも多く建設されています。急速な都市化の一方で、高層ビルからの救助技術が追いついていないことが課題となっています。

 (シモンズ・ヴィニアナさん)「私たちはどのように高層ビルに入って救助するかを学んでいません。なので、適切に救助するための技術を学びたいです」

 
【低所救助の様子】
 「3、2、1 降下」「リリース、リリース」

 この日は、シモンズさんが課題としていた高層ビルに取り残された人を、上の階から救助する訓練。ロープとカラビナだけを使うシンプルな方法です。日本では機材がない状況でも安全に対応できるよう、これを徹底的に叩き込まれます。

 
(シモンズ・ヴィニアナさん)「カラビナロック!安全環よし」
 (教官)「全部全部。ノーノーノー」

 シモンズさん、要救助者を吊り上げるためのカラビナをつけるのに手間取ります。手順ひとつとってもフィジーとは違うようです。一か所でもかける場所を間違うとバランスが崩れ、落下の危険性が高まります。

 (シモンズ・ヴィニアナさん)「フィジーではカラビナなどの安全装備に限りがあるので、全員が持っているわけではありません。国に戻ったら装備の充実を提案したいと思います」

「きょうの授業はとても感情を揺さぶられました」

 国のレスキュー活動をより良くする任務を託された隊員たち。2か月間の研修では技術の訓練だけでなく、隊員の心のケア方法や被災地の厳しい現実などについても学びます。

 今年の元日に発生した能登半島地震。大阪市消防は発生の翌日から現地で救助活動を行い、所属する大隊が13人を救出しました。

 【能登半島地震での救助の様子】
 (救助隊員)「分かりますか。頑張ったね。大丈夫やからね」

 途上国の隊員らの研修では、地震で倒壊した建物から女性を救出した時の体験が語られました。

 (能登半島地震で救助にあたった隊員)「この女性は亡くなっているが、なんとか建物の外に出してあげられました。旦那さんが奥さんに言った『ごめんな』という言葉が印象的で、救助活動に時間がかかってしまったこと、やれることをやるが、もどかしい気持ちです。改めて、災害の恐ろしさと悔しさを痛感した一日となってしまいました」

 (シモンズ・ヴィニアナさん)「きょうの授業はとても感情を揺さぶられました。救助した隊員は精神的にも肉体的にも負担が大きかった」

日本の救助隊は「自分たちも必ず帰ってくる」

 研修日程の中盤。地震を想定した訓練の日です。余震などによる二次被害の危険性もあるため、短時間での作業が求められる難しい任務です。

 手順はまず先遣隊が要救助者がいる場所までのルートや障害物などを確認し、情報を仲間の隊員らに共有します。そして必要な機材を持った救助隊が、2人一組で入って要救助者を助け出します。

 今回、シモンズさんは先遣隊の役割を担います。メジャーなどを使って中の状況を正確に把握します。

 (シモンズ・ヴィニアナさん)「要救助者はここにいます。金網があります。切らないといけない必要があります」

 救出を担当する隊員2人がシモンズさんの情報をもとに中に入ります。

 「要救助者がいたぞ!」
 「OK」

 と、その時。外で待機する隊員が、笛を吹き余震を知らせます。

 「必ず戻りますからね」

 安全確保のため、一度外に出ます。実際に、能登半島地震でも、救助活動中に何度も余震が襲いました。こうした状況のなか救助を行う必要があるのです。

 (能登で救助にあたった隊員)「日本の救助隊は安全を担保した上で救助活動を行う。自分たちも必ず帰ってくる。けがせず家族のもとに帰ってくることを念頭に置いた活動をしています」

隊員から母親の顔に 母国に残した娘とのひと時

 午後6時、訓練を終えたシモンズさんは、まっすぐ宿舎のホテルに戻ります。夕食はいつもコンビニで調達します。

 (シモンズ・ヴィニアナさん)「これはお米のグラタンですね」
 
 バラエティ豊かな日本のご飯ものにはまっています。

 (シモンズ・ヴィニアナさん)「米が大好きなんです。フィジーでは米にココナッツミルクをかけて食べたりします」

 まっすぐホテルに戻るわけは…

 ひとり娘、9歳のミシェルさん(9)とのビデオ通話です。時差があるため、フィジーは午後9時半を回ったところ。ちょっと眠そうです。ビデオ通話では学校であったことなどを話します。

 (ミシェルさん)「日本はどう?」
 (シモンズ・ヴィニアナさん)「いい感じよ」

 訓練に励む隊員から母親に戻るひと時です。

訓練の全日程が終了 「この経験を国の同僚にも伝えたい」

 そして、いよいよ研修の最終日「WE CAN DO IT!」2か月の訓練の成果を披露します。

 (シモンズ・ヴィニアナさん)「1・2・3。カラビナよし!安全環よし!」

 シモンズさん。手間取っていたカラビナの取り付けもスムーズです。9人全員が手際よく任務をこなし、すべての行程を修了しました。

 (シモンズ・ヴィニアナさん)「自信を持って言えることは、この2か月で多くの技術を学び、新しい経験ができたことです。国に帰ったら、この経験を同僚にも伝えたいです。もう少し日本にいたいですが、家族が待っていますから」

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