働くほど年金が減る!?高齢者に立ちはだかる『50万円の壁』とは 65歳以上で働きたい?働きたくない?年金制度と働き方の未来
MBSニュース / 2024年11月22日 18時29分
いわゆる年収103万円の壁の見直しが本格的に動き出した一方で、働きたい高齢者の前に立ちはだかる「月50万円の壁」と呼ばれる問題。50万円を超えると、もらえるはずの年金の額が減ってしまう…一体どういうことなのか、未来の高齢者の働き方はどう変わるのか、第一生命経済研究所総合調査部の谷口智明さんに聞きました。
人手不足の深刻化…2035年の日本はどうなる?
パーソル総合研究所の試算によると、2035年には日本の労働力需要は7505万人と予測される一方で、供給は7122万人にとどまり、384万人が不足するとされています。これは2023年と比較して約1.85倍深刻な状況です。
このままでは私たちが普段受けているサービスやお店など、社会全体に深刻な影響が出かねません。こうした問題を解決してくれるかもしれない大きなカギが65歳以上のシニア世代だといいます。65歳以上の高齢者が“希望通りに働く”ことができれば、218万人分の労働力となり、不足分の過半数をカバーできる可能性を秘めているからです。
あなたは65歳以上で働きたい?世代間でギャップ
では、高齢者自身は働くことに対してどのような意識を持っているのでしょうか?
番組のLINEアンケートによると、10代~40代では、「65歳以上で働きたくない」と回答した人が半数以上。一方50代以上では「65歳以上で働きたい」と考える人が半数を占める結果となりました。
「働きたい」理由としては、住宅ローンを抱えている、年金だけでは生活が不安、人生を豊かに過ごしたいなど。「働きたくない」理由は、好きな時間を過ごしたい、もう十分働いたなど、様々でした。
しかし、現実には、高齢者の就労を阻害する様々な障壁が存在します。その一つが、今回のテーマである「50万円の壁」です。
働くほど年金が減る!?「50万円の壁」の仕組み
「50万円の壁」とは、65歳以上で厚生年金を受給しながら働く(会社勤めをしている・していた)人が、一定額以上の給料をもらって働くと、年金が減額されるという制度です。
具体的には、厚生年金と給料の合計が50万円を超えた場合、その超えた分の半額が厚生年金から差し引かれます。例えば、厚生年金20万円、給料30万円の人は減額されませんが、給料が40万円になると、超えた分の10万円の半分の5万円が減額されます。
年金制度を維持するためにみんなで支えあおうという考え方もあれば、疑問を感じる人もいるのではないでしょうか。では、「50万円の壁」は、どのようにして生まれたのでしょうか?
「50万円の壁」制度の背景にある歴史と課題
その歴史は、1954年にまで遡ります。当時の老齢年金は、退職を条件に支給されていました。しかし、1965年に制度が改正され、働いていても一律8割支給で年金をもらえるようになりました。
しかし、一定以上の収入がある人は給付を抑制し、制度の支え手になってもらう必要が生じ、制度改正が繰り返され、現在の「50万円の壁」に至っています。高齢者に働いてほしいという国の思いはありますが、一方でこれまで収めてきた年金がもらえないというのは、矛盾があるのではないかと、第一生命経済研究所の谷口さんも話していました。
制度改正に向けた動き 基準額引き上げ?撤廃?
厚生労働省は、「50万円の壁」問題を解決するために、基準額の引き上げや撤廃を検討しています。
基準額を引き上げることで、より多くの高齢者が年金減額を気にせず働けるようになります。また、撤廃すれば、すべての高齢者が収入に関係なく働けるようになり、労働力不足の解消に大きく貢献することが期待されます。
共同通信によると、撤廃によって増えると見込まれる支給額は4500億円に上るといいますが、この財源は高所得会社員が払う厚生年金保険料の引き上げで賄うという案もあるようで、新たな反発も出るかもしれません。
まだある!壊してほしい〇〇の壁「定年後の待遇の壁」
高齢者の就労を阻害する問題は、「50万円の壁」だけではありません。
多くの企業では、60歳で定年退職後、再雇用制度を利用して働き続けることができます。しかし、再雇用後は給与水準が大幅に下がるケースが一般的です。
第一生命経済研究所の谷口さんは、果たして無条件に年を取ったからという理由で、その給与水準を下げてもいいのか、ここをもっと議論すべきではないかと話します。さらに、定年時に会社側と労働者、両者が納得する再雇用条件の話し合いの場が必要だといいます。
「同一労働同一賃金」という言葉がありますが、ここまで頑張って働いてきた方が、同じレベルの仕事ができて、同じクオリティの仕事の成果が出せるのであれば、ただ60過ぎたという理由で給与水準を下げるというのは、高齢者に頑張ってほしい社会としてはどうなのか、ここもっと議論することが、未来の労働者の働き方を改善する上で必要ではないかということです。
働き手不足と制度の壁による働き控え…円満解決の方法は見つかるのでしょうか。
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