【斎藤知事】PR会社のSNS運用は『仕事』か『ボランティア』か...双方で食い違う認識 専門家は「今の公選法はSNSに対応できていない」と指摘
MBSニュース / 2024年11月29日 12時4分
兵庫県知事選でのSNS戦略などをめぐって、「公職選挙法違反の疑い」が指摘されている問題。斎藤元彦知事の代理人弁護士が11月27日、初めて会見を行いました。代理人弁護士は、問題の発端となったPR会社社長のコラムについて「盛っている」などと説明し、双方の認識に「多くの食い違い」があることが浮き彫りになりました。SNS運用は仕事だったのか、ボランティアだったのか...。そして今後、事件に発展する可能性はあるのか?専門家の見解などをもとにまとめました。
会見で明かされた『これまでの経緯』と『請求書の内容』
27日に行われた斎藤知事の代理人弁護士による会見では、これまでの出来事が時系列に沿って語られました。まず9月19日、兵庫県議会で斎藤氏への不信任決議案が全会一致で可決。9月26日、斎藤氏が兵庫県知事選への出馬を表明。9月30日、斎藤氏は知事職を失職。その後、知事選で再選を果たしました。
会見では、ことの発端となっているPR会社社長との出会いについても語られました。9月末ごろ、支援者から「ボランティアとして協力していただける方」として社長夫妻を紹介されたということです。9月29日には斎藤氏が会社を訪問。そこでSNSやポスター制作の話も出たといい、この時の様子は社長のコラムにも写真で掲載されていました。
そして、9月30日以降、PR会社から見積書が発行されました。その項目にはポスターデザイン制作、YouTube用動画撮影などがあったということです。ただ、広報全般の依頼やSNS戦略の策定については“なかった”と強調。10月3日~9日ごろには、制作物5項目に絞って個別に口頭で依頼をしたということです。
会見ではPR会社が発行した請求書が会見で公開されました。内訳は「メインビジュアル企画・制作」「チラシデザイン制作」「ポスターデザイン制作」「公約スライド制作」「選挙公報デザイン制作」で、請求総額は計71万5000円。政治活動や立候補の準備をするための対価だと代理人弁護士は語っていました。
PR会社の社長とスタッフの活動は「仕事?ボランティア?」
大きなポイントは、選挙期間中に行っていたSNS運用をPR会社が仕事として請け負っていたのか、ボランティアだったのか。
代理人弁護士によりますと、9月29日の斎藤氏の会社訪問以降、社長夫妻は斎藤氏の考えに賛同し、応援活動を始めたということです。その上で、▼公式応援アカウントの取得▼公式応援アカウントへの記載事項のチェック▼街頭演説会場における動画撮影・アップロードなどを、会社としてではなく“社長がボランティアとして行った”と語りました。
一方で、PR会社社長が投稿したコラムには「仕事」と書かれていて、双方の認識の食い違いが浮き彫りとなっています。
そのコラムの内容について代理人弁護士は「事実である部分と事実でない部分が記載されている」「SNS戦略全般を任せたというのは全く事実ではない」と強調した上で、「盛っているという認識」だと語りました。
コラムを発端にさまざまな疑惑が出ていることを受け、PR会社側を提訴する可能性はあるのか?という点について、代理人弁護士は、展開によれば名誉毀損等の問題もあるかもしれない、としつつも、現段階では斎藤氏の行為が法に抵触していないと説明することに徹すると述べていました。
会見では、“PR会社の従業員で選挙運動に関わった人はどうなのか?”という質問がありました。代理人弁護士は、PR会社のスタッフで選挙運動に関わった人は全員ボランティアだと思う、と回答しました。
これについて、うるわ総合法律事務所の松田真紀弁護士は、従業員が休暇を取って個人として選挙運動活動をしていたなら問題ないが、もし出勤日で給料が発生していれば買収と判断される可能性があると指摘しています。
過去にとある選挙陣営の選挙対策本部に参加したことがあるという松田弁護士。公職選挙法違反について判断する上で、斎藤氏本人がPR会社社長とのやりとりの中で「どこまでどう認識していたか」が重要だといいます。27日の代理人弁護士の会見ではその部分に「疑問が残った」という感想を持ったということです。
また、代理人弁護士が会見で「知事とPR会社との認識がずれている」と述べていたことに触れ、事実を明らかにするには社長本人の説明が必須だ、とも松田弁護士は指摘しました。ただ、PR会社社長に説明義務はありません。
選挙があると、実は警察が“総動員”で動いている!
では、一般論として、選挙のときに警察はどう動いているのか。10月27日に投開票が行われた衆議院選挙をめぐり、関西で公職選挙法違反で摘発された事案を見てみます。
▽11月15日 運動員に報酬を支払った買収の疑いで、大阪府太子町議を逮捕
▽11月25日 投票所で親族らに特定の候補者の名前を書くよう指示したとして、福知山市の元市議を書類送検
▽11月26日 現金を郵送して投票を依頼したとして、大阪府の元教職員を書類送検
過去に選挙陣営の選挙対策本部に参加したことがある松田弁護士は「法に触れるか触れないか、みんなで協議しながらやった。お金についてはものすごく気を使った」と述べています。
以前、千葉県警捜査二課で選挙違反事件を担当していた河野重幸氏によりますと、国政選挙や統一地方選挙の場合、全国47都道府県の警察が一斉に取締本部を立ち上げます。捜査二課(贈収賄や詐欺などの事件を扱う)は総動員され、そのほかの捜査員も含めて捜査体制を組みます。具体的には、捜査員の事前教養(公職選挙法について勉強)や、街頭演説のチェック、買収などの情報があれば裏付け捜査などを行うということです。
現在の兵庫県警について河野氏は「さまざまな意見や情報が寄せられていると思う」とした上で、どの情報が本物でどれが虚偽か“交通整理”するのが大変なのではないかと指摘しています。
SNSの時代に今の選挙ルールは追いついていない?
松田弁護士と河野氏が共通して話していたのは、「今の公職選挙法はSNSに対応できていない」ということです。松田弁護士は、公職選挙法に多くの問題があると指摘していて、選挙運動かどうかについては線引きが難しく、グレーゾーンがあるといいます。その上で、SNSはせっかくの自由なメディアだが、今後は新たな制限も考える必要があるのではという見解を示しました。河野氏は、正規の選挙活動と称して相手陣営への妨害も行われていることを指摘しています。
今後、選挙のルールをどう変えていくかが課題かもしれません。
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