憧れの地「葉山」での生活はまさかの...湿気に加え旗竿地、傾斜地、狭小地 四重苦を克服した兼用術で海や山の自然と暮らす家【住人十色】
MBSニュース / 2024年12月10日 18時50分
舞台は神奈川県葉山町。超人気別荘地の葉山で“三重苦”の変形地を克服した家を紹介する。
住人(アルジ)は、夫妻ともに建築家の3人家族。東京から移り住み、憧れの葉山に新居を構えた。家があるのは、「旗竿地」と呼ばれる細長い通路の先にある見通しの悪い変形地。しかもただの旗竿地ではなく、敷地に2メートル以上の高低差がある「旗竿傾斜地」だ。さらに、斜面のため土砂崩れの規制があり、基礎を敷地いっぱいまで建てることができなかった。そのため、家の一部を宙に浮かせてせり出すような造りにしている。
旗竿地、傾斜地、狭小地という厄介な三重苦の変形地。そんな土地に建つ家の中は、天井高4メートルも。18帖もあるひとつながりのメインスペースは南向きで、3面の大開口から眺望が開け、たっぷりと明るい光が注いでいる。葉山の町並みが満喫できるこの大パノラマは、家を宙に浮かせたおかげ。敷地の高低差を逆手にとって、旗竿地では得られない明るさと眺望を手にしたのだった。
一方で、高低差を活かした家の中は段差だらけ。しかし、デメリットとなりそうな段差をあえて利用し、スペースを緩やかに仕切る役割のほか、収納やベンチにするなど使い方を兼用。家具を減らすことでスペースも確保できた。
結婚後、都内の賃貸マンションで暮らしていた住人(アルジ)夫妻。子どもの誕生を機に、自然豊かで人気の別荘地・葉山での暮らしを夢見るように。ところが移住者が急増する激戦区だったため、手にすることができたのは3年後。しかも旗竿傾斜地だった。家を建てるにはかなり困難な変形地・・・と思いきや、実はその場所は、「南ひな壇」という南側に開けたひな壇状の土地。日当たりや眺望が確保された知る人ぞ知るお得な土地だった。おかげで住人(アルジ)は旗竿地、傾斜地でも開けた眺望を手にし、驚きの兼用術で狭小を克服。だが、問題はこれだけでなく、本当はまさかの“四重苦”だったという。その4つ目の問題とは・・・?
メインスペースから段差を下りると、景色を眺めながら調理ができるキッチンがある。可動式のオープンな収納は使いやすさも抜群で、引き出しをつけるよりもコストダウンができた。ただキッチンだけでは手狭だったため、背後にある広いすのこの空間も調理台として活用している。実は、このスペースは夫の寝室も兼ねていて、朝夕は調理台、夜は寝室になるという。
さらに、土間の玄関周りにも工夫が。打ち合わせなどに使うテーブルは、段差を活かした収納棚の天板を伸ばしたもので、お客さんが来たときには玄関から靴をはいたまま座れるようになっている。しかも、テーブルは階段の一部も兼ねている。
2階は明るい光が差し込むセカンドダイニング。その隣には、あざやかな緑色の扉がある。開けてみるとバスタブがぽつんとあり、壁も扉と同じ緑色をしている。部屋に個性を出すために色をつけたそうで、浴室はあえて浴槽だけにして、体を洗うときは隣の独立したシャワーブースを利用。浴室はお湯に浸かるだけの優雅な空間になっている。
今では、毎日のようにすぐそばの海に出かけ過ごすのがファミリーの日課に。ただ、そんな暮らしには葉山ならではの悩みがあるという。それが4番目の問題の「湿気」。海と山に囲まれた葉山は潮風が山に当たって湿気が溜まりやすくなり、服や靴がカビてしまうのだという。そのため、ウォークインクローゼットの天井はすのこにして、空気が循環するようにしている。この家では湿気対策のため、あらゆる場所にすのこを使用。クローゼットのすのこの上は妻と子どもの寝室になっていて、服もカビることなく、寝るときは熱が逃げて快適なのだそう。
段差だらけの家は小さな子どもにも変化があったそうで、夫は「自由自在にいろんな段差を飛び越えてます。家が成長させてくれるじゃないですけど、運動神経を鍛えてくれるかもしれないですね」と笑う。そして住み始めてみると、さまざまな場所が居場所になるという発見があったといい、「最初に用途が決められた部屋があるんじゃなくて、その時々に応じて使い方を工夫して考えていくような」と新たな出合いを楽しんでいる。
厄介な変形地を逆手に取って手にした憧れの暮らし。海や山の自然とともに、段差も飛び越えて家も子どもも一段と大きく育っていくだろう。(MBS『住人十色』2024年12月14日放送より TVerでも放送後1週間配信中)
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