【三菱UFJ銀行】女性行員なぜ見つからずに?貸金庫窃盗 「性悪説」で守ってきた銀行の安全神話揺らぐ そもそも貸金庫ってどんなもの?様々なタイプがあった【MBSニュース解説】
MBSニュース / 2024年12月18日 12時13分
三菱UFJ銀行の元女性行員が、貸金庫から顧客の金品などを盗んでいたとされる問題、被害額は十数億円という驚きの金額も出てきています。銀行トップの半沢頭取は記者会見で、「銀行の信用・信頼を根底から揺るがすもの」と謝罪しました。 安全だと思われていた銀行で起きた事態に、元銀行員の金融ライターは「仕組みを考えるとできる。逆に今までなんで起きていなかったんだろう」と話しました。貸金庫の種類や防犯の仕組み、我々が銀行について知っておくべきポイントをまとめました。
銀行の安全は「性悪説」で守られている
知っていましたか、銀行の安全は「性悪説」で成り立っている。つまり、人間の本性は悪いものなんだ、銀行員も悪いことをするかもしれない、と考えたうえでセキュリティ対策を何重も行っています。
銀行員はこんなに疑われいるのか、というほど。毎日のようにカバンの中を抜き打ちチェックされたり、本部監査部からの抜き打ち検査など、性悪説に基づく日常的なチェックが行われています。
また銀行は毎日午後3時に閉まりますが、その後は当日朝から午後3時までの取引で、1円でもズレがなかったか、ということを計算して、1円でもズレていたらズレがなくなるまで帰れない。間違いを特定して、もしお釣りを多く返してしまった場合などは、その人の家まで行って頭を下げ、誤差を修正するということを毎日も行っているほど、入念なチェックを行っているということです。
1.6万円~利用可能な「貸金庫」
貸金庫は、銀行内に戸棚のように鍵付きで並んでいて、そこを有料で貸し出すサービスです。審査に通れば誰でも利用可能で、多くの方が不動産の権利書・保険証書、遺言書や宝石などを入れたりしているようです。
現金を入れるのは推奨していませんが、実際何を入れているのかはプライバシーの観点から銀行員も把握していません。年間利用料は約1.6万円~3万円です。(腐るものはダメとか一定のルールはあります)
貸金庫は「自動型」と「一般型」の2種類 今回開いたのは旧式
元銀行員で金融ライターの椿慧理さんによりますと、貸金庫は新型の「自動型」と、旧式の「一般型」のおおむね2種類に分かれているといいます。
自動型は、まず貸金庫室に入るためにカードキーが必要です。貸金庫室に入ったあとも指紋などの生体認証で本人確認が必要になります。貸金庫は契約した本人しか利用できず、配偶者や親子でも基本的には利用できません。※代理人登録などを行うと利用可能
室内で自分の貸金庫を呼び出して、他の人の貸金庫は見ることもできない、触ることもできないというタイプもあれば、半自動で、貸金庫がずらり並んでいるけれども、自分の貸金庫の番号だけ操作できるタイプもあるそうです。そして最後に自分で持っている鍵でこれを開けることができます。貸金庫室には1人づつしか入ることはできませんし、銀行員も介入できません。
窃盗が行われた「一般型」銀行で保管した副鍵が悪用か
もう一つが「一般型」少し古いタイプのものです。こちらは受付簿に名前と届け出印を出すことで本人確認をします。その後、銀行側が鍵を開けて、中に入ることができます。
金庫を開けるには、自分の鍵と銀行の鍵を合わせて、同時に開くようになっています。ただ、自分の鍵については、なくしてしまうリスクがあるため、スペアキー(副鍵)を用意して、銀行が保管しているといいます。
副鍵の保管方法は、勝手に開けられないように封筒に入れて、自分の届けた割印と、銀行側の封緘印をして、預かります。さらに副鍵が入った封筒は金庫に保管し、ICカードが無いと出せないようにし、記録が残るように何重にもセキュリティを重ねて保管しています。
それほどの体制の中、今回なぜ起きたのか・・激震が起きた理由は。
窃盗した行員は支店長代理 役職のため窃盗できたか
盗むことができた一番のポイントは元行員の役職です。女性は支店長代理で、支店のNo.3かNo.4ぐらいの立場、抜き打ちチェックが入ったときには、チェックに立ち会うようなポジションでした。
つまり、どういうチェックを行っているかを確認することができる役職にいたそうで、逆にチェックの抜け道もわかりうる立場だったということです。
専門家は、副鍵の入った封筒について、・きれいにはがして戻したか、・印のチェックが厳密ではなかったか、どちらかの手口ではないかとみています。
会見した三菱UFJ銀行は、チェック体制が少し甘くなっていたところはあるとし、今後の対策として、複数人でのチェックを徹底しようとしています。副鍵については、各支店にあったものを本部で一括管理するような対策も発表しています。安全のためには銀行員が介入しない自動型貸金庫が望ましいのですが、高額なコストが必要です。
専門家によりますと、そもそも「貸金庫業務は儲からない」といいますが、何のためやっているかというと、富裕層を囲い込むためです。そこにコストはかけたくないというのが本音のようですが、信頼性を担保するためにどうバランスをとっていくのかが、今後の課題となっています。
専門家「個人は今後ネットバンクに行く時代になる」
振り返れば、銀行の不祥事はほかにもあります。元銀行員で金融ライターの椿慧理氏によりますと、昔からある事案は、「外回り」で預かったお金を着服して偽の証書を渡したり、現金で税金の支払いをしたはずが、その分が払われてなく、3年後に本人に届いた督促状で明るみになった、など。
エリートと呼ばれる銀行員が、こういったことをしてしまう理由。多いのが・ギャンブル、さらに・住宅ローンを組んだ時だそうです。支出が増えて自身の収支バランスが崩れたときに、目の前で大金が動くのを見て、不祥事を起こしたという話もあるようです。半沢頭取の会見では、今回の元行員はお金を散財していたのでなく、投資に回していたのでは、という話もありました。
いまの銀行の考え方。金融ライターの椿慧理氏によりますと、銀行の稼ぎはほぼ「法人」です。最近は定期預金のノルマなどもないそうで、個人顧客はお金ばかりかかって儲けにならないそうです。
ATM1台1か月の運用コストは数百万円だそうで、本当は減らしたいし、実際に減るかもしれません。個人は利便性を考えても、ネットバンクを利用していく時代になってきているという見解を示しています。
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