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昭和49年に神戸の大地震を指摘していた報告書『壊滅的な被害を受けることは間違いない』 地下に潜む地震リスクの警鐘(1) 【阪神・淡路大震災から30年】

MBSニュース / 2025年1月15日 18時7分

 2025年1月17日で阪神・淡路大震災の発生から30年となる。「関西で大地震は起きない」は、言うまでもなく“迷信”だった。 震災の21年前、神戸での大地震のおそれを指摘した調査報告書が存在する。その題名は「神戸と地震」。発行は1974(昭和49)年だ。この研究は、大阪市立大学表層地質研究会(代表・笠間太郎教授)が神戸市の委託を受け、1972~73年に地震学者などが実施した研究報告である。

昭和49年の報告書『神戸と地震』

 3つの調査報告が掲載された「神戸と地震」の結論は断定的で明瞭だ。たとえば、地盤調査をふまえ「活断層の数多くある神戸市周辺においても今後大地震が発生する可能性が充分ある」と。さらにー。

壊滅的な被害を受けることは間違いない

 六甲山地の断層の多くは活断層だと考えられるとしたうえで、「将来都市直下型の大地震が発生する可能性はあり、その時には断層付近でキ裂・変位がおこり、壊滅的な被害を受けることは間違いない」と記されている。

 この研究に関わった1人が、当時34歳だった地震学者、尾池和夫・京都大学名誉教授(84)だ。

 1970年代当時「活断層は繰り返し大きな地震を引き起こすもの」との知見があり、兵庫県南東部の六甲山の地下には「六甲山断層」が存在し、神戸市街地の地下を通ることが分かっていた。

 地震はどこで起きるのか―。そこで、発生頻度が高いものの人間が揺れを感じることはほとんどない微小地震(マグニチュード1以上~3未満)は「六甲山断層」で起きているかを尾池氏は調べた。高感度地震計を設置した結果、「六甲山断層」などの活断層に沿った地下約15km周辺に地震が集中していると分かったという。

 地震は浅い場所で起きると揺れが大きくなりやすい。ただ、当時の科学では、活断層の地震発生間隔が何年くらいなのかは、まだ明らかにはできなかった。

当時、報告書は活かされたのか…

 震災後、活断層の存在が注目され、「活断層」という言葉は、一般的に広く知られるようになった。尾池氏によると、「活断層」の文字が自治体の報告書に使われたのは「神戸と地震」が初めてだという。発行当時、「神戸にも直下地震の恐れ」との見出しで新聞報道された。では、発行後、防災行政にどのような影響を与えたのだろうか。

 しかし、神戸市を取材すると、「危機管理室担当者が市役所内で調べた限りでは『神戸と地震』の冊子が見つからなかった」という。では、「神戸と地震」は政策や計画などに反映されたのだろうか?この点については、「現在、神戸市の危機管理担当職員にこの資料が広く認知されている状態ではなく、調べた限りでは分からない」という。

“もう少し人が死なずにすんだかもしれない”

 一方、尾池氏は、「『神戸と地震』の研究の代表者から、「報告書はなかったことになった」と聞いた」と振り返る。尾池氏は、震災後「この報告書のことが伝わっていれば(阪神・淡路大震災で)もう少し人が死なずにすんだかもしれないと、だんだん思いました。残念ではありますね」と話した。

「神戸と地震」が「壊滅的な被害を受けることは間違いない」と指摘した21年後に起きた阪神・淡路大震災。取材時の最後に聞いた。「阪神・淡路大震災が発生して30年。地震学者としてどのようなことを思いますか?」と。

 「専門家が言っていることはちゃんと聞いてほしいと思うし、それに対して対策はしてほしいですよね」と。地震学の知見を積み重ねてきた尾池氏の言葉は重い。

「神戸と地震」のまえがきには、「この報告は、『神戸市における地震対策』の第一歩」とある。21年後に起こる大震災への備えの歩みとなったのだろうか。その歩みはどれほどだったのだろうか。すでに「50年前のできごと」となった今、当時の関係者は退職し、検証が難しいのが実情だ。

 神戸の地下に潜む地震リスクに警鐘を鳴らした「神戸と地震」。起きうる地震リスクを伝える―阪神・淡路大震災が私たちに示した大きすぎる教訓である。 

◆取材・文 福本晋悟
MBS報道情報局 災害・気象担当デスク。「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」特別研究調査員。阪神・淡路大震災発生時は滋賀県在住の小学3年生。震災で両親を亡くし転校して来たクラスメイトと過ごした。

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