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【尹錫悦大統領を拘束】韓国で『内乱罪』は無期懲役・死刑レベル 『大統領を屈服させた』という野党のアピール?混乱の裏側には「与党vs.野党」の政治的な戦いが...【専門家が解説】

MBSニュース / 2025年1月16日 12時10分

 韓国の尹錫悦大統領の『非常戒厳宣言』を捜査する合同捜査本部は1月15日、内乱を首謀した疑いで尹大統領に対する拘束令状を執行しました。韓国で現職の大統領が拘束されるのは史上初めての事態。いま、いったい何が起こっているのでしょうか?朝鮮半島情勢に詳しい東海大学の金慶珠教授に詳しく聞きました。◎金慶珠:東海大学教授 専門はメディア論 朝鮮半島情勢に詳しい 韓国・ソウル出身で幼少期を兵庫・西宮で過ごす

尹大統領めぐる「弾劾裁判」と「内乱罪にあたるかどうかの捜査」

 去年12月に出された尹大統領による「非常戒厳宣言」をきっかけに混乱が続いています。その後、弾劾訴追案が可決となりました。現在、尹大統領は弾劾裁判にかけられていて、辞めさせられるかどうかが決まります。1月14日には初弁論が行われましたが、尹大統領は欠席しました。

 ―――金教授は、この弾劾裁判について今後どのような結果になると予想しますか?

 「遅くとも4月には結果が出る、早ければ2月末か3月とも言われていますが、争点は結構シンプルです。去年12月3日に出された戒厳令が重大な憲法違反であるかどうか、この1点が争われることになりますが、おそらく弾劾は免れないというのが大方の見方です。そうなると、その後60日以内に次の大統領選挙が行われるという流れです」

 非常戒厳宣言をめぐっては、内乱罪にあたるかどうか、刑事事件としても捜査が進められています。これまで3度の出頭要請がありましたが、尹大統領は応じず。そして、2度目の拘束令状執行で1月15日に拘束をされました。

―――内乱罪とは、どのような刑なのでしょうか?

 「内乱罪は非常に重い罪です。大統領は国のトップですから様々な免責特権などがあるんですけれども、内乱罪のみ訴追ができる仕組です。内乱罪で有罪になると、『無期懲役または死刑』以外には該当しない、それだけ重大な罪ですので、尹大統領も相当、司法的な戦いを繰り広げると思いますが、最高裁においてまで内乱罪になるかは法曹界も意見が分かれるところです」

 韓国では過去に後に大統領になった全斗煥氏(1980年代の軍事クーデターで政権を取った勢力)が、民主化になった後に内乱罪で死刑判決を受けたことがあります。ただその後、次の大統領の恩赦という形で死刑は実際には執行されなかった歴史がありました。

野党側が『大統領を屈服させた』とアピールしたい?

 一連の混乱について金教授は「実は与党vs.野党の政治的な戦い」だといいます。今回、拘束に応じた尹大統領ですが、合同捜査本部の構成に不満があり、捜査の正当性を認めないアピールをしています。

 ―――背景には、合同捜査本部に野党が作った組織が入っているという見方がある?

 「そうですね。一連の逮捕劇を法律論的に見るとそんなに意味はないんです。司法においては捜査、取り調べをして裁判で真実を明らかにするという流れですが、今回の逮捕は48時間の身柄拘束以外の意味はないので、本当に取り調べをするのであれば、黙秘権を主張している尹大統領をあえてここまで無理して逮捕する必要はなかった」

 「なぜかというと、これは政治的な与野党の戦いであると。弾劾裁判が終わった後に、(辞めさせられる場合は)新しい大統領が決まりますが、誰が新しい大統領になるんだと、与野党の戦いが始まっているわけです。その意味では尹大統領側から見れば、捜査権のない合同捜査本部が自分に対して不当な捜査および逮捕状の請求を通じて官邸にまで踏み入ってきたと。だからこの捜査には応じられないけれども、武力衝突を避けるためにとりあえずは出頭するというスタンスをとっています」

 ―――拘束の目的は「取り調べ」よりも、「大統領を屈服させた」と国民へのアピール?

 「もちろん普通の人でも、警察が何度も出頭要請しているのに無視すると、逮捕状を請求して逮捕するのはよくある話です。ただ相手が大統領となるとそういうわけにはいかない。国会議員の場合も不逮捕特権みたいなものがありますから、それなりに手続きを踏むことはできたんだろうけれども、待ったなしで逮捕に踏み切ったと」

 「その背景は、合同捜査本部の中で主な陣頭指揮をとっている高位公職者捜査庁という過去に野党が作った組織が、『大統領を屈服させた』『我々は勝利した』と野党支持者側にアピールしたい、野党にもアピールしたい。今回相当無理をしていますので、とりあえずは逮捕に成功したけれども、手続きに関してはこれからも与野党の攻防などが続いていくと思います」

「政治的闘争は今後ますます本格的に」

 ―――韓国の世論は今、大統領を支持しようという声も増えてきているということですが?

 「そうなんですよね。ただ、これは必ずしも尹大統領を支持しているとか戒厳令が正しかったという意見ではなくて、今回の逮捕劇のように、野党側がまるで占領軍かのように大きな顔をしてどんどん踏み入ってきていると。それに対する反発でむしろ保守系の世論が結集している。その結果、今ほとんどの世論調査機関において40%対40%ぐらいで、戒厳令が出される前の状況に戻っています」

 尹大統領が出した『戒厳令』は軍事力を持って国家の秩序を維持するものですが、民主国家である韓国でそれが許されるのは、例えば戦争や国内で大規模なテロ・暴動が起きたとき。これを野党を抑えるために使ったことに国民の約9割は「あってはならない行為だ」と、ほぼ意見は一致しているといいます。一方で大統領を民主的、法律的な正当な手続きなしに引きずり下ろす形で弾劾に追い込むやり方にも賛成できないという反発が出ているのが現状だと金教授は話します。

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