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『求人サイトで市長候補を公募』したのはなぜ?政治経験ない"素人"を市長に押し上げた四條畷市の前市長「市長選の4分の1が無投票当選。なり手不足と言われるが、素質や情熱を持つ人はいる」

MBSニュース / 2025年1月21日 11時58分

 市長が求人サイトで「次の市長候補」を募集するという全国初の試み。その旗振り役となったのは、大阪府四條畷市の前市長・東修平さん(36)です。公募にこだわったのはなぜか?公募から市長選までの舞台裏に密着しました。

 1月20日、職員に迎えられ、大阪府四條畷市で就任した新たな市長。実は、全く政治経験がない中で当選を果たしました。

 いわば「素人」を市長にまで押し上げたのは、東修平さん。四條畷市の前市長です。

 (四條畷市 前市長・東修平さん)「固定化された人が政治を担うのではなくて、本当に多くの人が政治に参加できる、そんな日本になっていくんじゃないかなという希望を持っています」

『求む。次の市長を目指す人。』公募を決めたワケとは…

 大阪府の北東部に位置する人口約5万4000人のまち、四條畷市。東さんはこのまちで生まれ育ち、外務省や民間企業での勤務を経て、8年前、28歳にして市長選で初当選しました。当時、日本で最年少の市長となり、10年連続となっていた人口流出の改善や、女性副市長を民間から公募するなど独自の政策を実現してきました。

 そんな東さんが新たに打ち出したのが…市長が自身の後継候補を求人サイトで公募するという全国初の試み。学歴・職歴を問わず、25歳以上の日本国民という条件で政策の継承も求めていません。

 東さん自らは立候補せず、公募をすることを決めたのには理由がありました。

 (前市長 東修平さん)「前回の統一地方選挙で市長だと4分の1が無投票だった。なり手不足と言われている中で、市長としてふさわしい素質や情熱を持っている人は一定数いると思っているんですね。ただ、あまりにこの選挙というブラックボックスが、壁が高すぎて挑めていないと」

 おととし行われた統一地方選挙では、224の市区町村で首長選挙が行われました。しかし、市長選では4分の1、区町村を入れると4割以上で候補者が1人しか名乗り出ず、無投票となったのです。

最終選考には市民も匿名で参加

 そんな中、東さんが公募すると国の内外から209人もの応募がありました。国際機関や会社経営などバックグラウンドはさまざまです。東さん自ら書類選考やWEB面談を実施。最終選考に残った6人に対し、公平を期すために匿名で参加した市民5人の選考委員と東さんで1人に絞ります。

 まずは、四條畷出身で市役所の財務部などに勤めていた銭谷翔さん(36)。

 【面談の様子】
 (銭谷翔さん)「私は四條畷市にずっと住むつもりなので、仮に市長を退任した後も、しっかりと責任を持ってこの街で生きていく覚悟を持っている。先のことを見据える本気度がたぶん違うと思うんですね」

 続いては、四條畷に縁もゆかりもない大阪府箕面市出身の元国連職員・篠原雄之さん(38)です。

 【面談の様子】
 (篠原雄之さん)「(四條畷市は)育休の取得は、まだまだ東京に比べて進んでいない。例えば条例を出して『市から言われているんです』『育休を取らないといけないんです』と会社に言えるようなレターと、あとは育休の期間は補填の費用を払ってあげる」

激論の末に選ばれたのは元国連職員・篠原雄之さん

 1人あたり1時間あまりの面談を終え、市長を目指す動機・誠実さ・真摯さなど12項目を選考委員と東さんが10点満点で採点。点数をもとにふさわしい人を選びます。

 (選考委員)「私はダントツで銭谷さん(が良かった)。私は自分自身が四條畷が好きだから、同じような思いを持ってくださっている方に後継候補になってほしい」
 (選考委員)「とくに篠原さんがすごく斬新なアイデアが多いなと思った。お話はすごく速くてバーってされてたんですが、話し方のレクチャーを東市長からしていただいたら、変わるのかなと」

 (前市長 東修平さん)「縁もゆかりもない方が独自の視点でいろんな市政をされて、『やっぱりそれじゃあかん』と、地元から『私が行くんだ』っていう方が今度また出てきて、みたいなことが本当に起きたら、めっちゃいいまちになるんじゃないかなって」

 3時間半以上にわたる激論の末、選ばれたのは…

 【電話の様子】
 (前市長 東修平さん)「もしもし、四條畷市長の東ですけれども。篠原さんを最終候補者として決定したいと思っております」
 (篠原雄之さん)「本当ですか、ありがとうございます」

健康上の問題で出馬が困難に…白羽の矢が立ったのは

 ところが、思いがけない事態が。出馬表明後に篠原さんの心臓に疾患が見つかり、立候補することが難しくなってしまったのです。代わりに白羽の矢が立ったのは、最終面談に残っていた元市職員・銭谷翔さんです。

 【去年12月の会見】
 (銭谷翔さん)「5万4000人の四條畷市の市民の思いを背負うリーダーとして、責任と覚悟を持って取り組んでいく決意を新たにしております」
 (前市長 東修平さん)「彼については多くの審査員から情熱の部分、四條畷にかける思い、あるいは真摯さとか誠実さが最も高い点として評価されていた」

“素人”の候補が歴17年以上の市議に挑む

 そんな銭谷さんの対抗馬となったのは市議17年以上というベテラン、渡辺裕さん(50)です。平日毎朝、駅立ちを続けてきました。

 (渡辺裕さん)「(Q朝早くから大変では?)これは慣れなので。全然苦じゃないですね」

 顔なじみの市民も多い渡辺さん。四條畷のことならなんでも知っていると、知識と経験をアピールします。

 一方、選挙は全くの素人である銭谷さん。駅でのあいさつも初めてです。

 (銭谷さんに教える東さん)「基本はこの横断歩道を渡ってくるか、バスを降りた人が入ってくると思うけど、基本的には多少近づきながら」

 東さんに教わりながら市民に声をかけます。

 (銭谷翔さん)「(Q手ごたえは?)全く政治経験もないし選挙に携わったことがないので、全く分からないです」

 市長選の開票結果は、渡辺さんが8891票、銭谷さんが9989票。約1100票差の僅差を制し、銭谷さんが初当選しました。

「切磋琢磨して競争し合える、そういう環境が整うことが望ましい」

 1月17日、最終登庁日を迎えた東さん。公募についてこう振り返りました。

 (前市長 東修平さん)「議論が巻き起こったこと、賛否ともども含めて、このあり方はいいんだろうかと考えるきっかけになったという意味で捉えた場合、良かったと思っています。意欲がある、素質がある方も市長になれる、切磋琢磨して競争し合える、そういう環境が整うことが望ましいかなと」

 東さんが遂げた公募による新しい選挙。その挑戦は日本の政治をどう変えていくのでしょうか。

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