『壊滅的な被害は間違いない』発災21年前に"神戸の大地震"を指摘した報告書「これが伝わればもう少し人が死なずにすんだかも」京都大学名誉教授が当時を語る【阪神・淡路大震災から30年】
MBSニュース / 2025年1月28日 12時34分
今年、発生から30年となった阪神・淡路大震災。死者6434人もの被害を出した震災の21年前、神戸での大地震のおそれを指摘した調査報告書を神戸市が発行していた。その題名は「神戸と地震」。発行は1974(昭和49)年だ。この研究に関わっていた地震学者、尾池和夫・京都大学名誉教授(84)が、当時を語った。
微小地震の発生場所が線上に並んでいる
尾池氏は、当時、微小地震(発生頻度が高いものの人間が揺れを感じることはほとんどないマグニチュード1以上~3未満の地震)の研究を始めていた。「神戸と地震」に関する研究で、高感度地震計を設置した結果、「六甲山断層」などの活断層に沿った地下約15km周辺に地震が集中していると分かった。
微小地震が六甲山断層の南で続いていることは、「活断層」だということを示す。活断層はいずれ大きく動く。つまり大規模地震が起きるということだ。
地震の揺れを教えてもらう住民からのはがき
まだ地震計の設置が少なかった時代。地震の特徴を調べるため、神戸市の住民にアンケートはがきを送付。地震の揺れを感じたら、揺れ方などを書いて返信してもらう仕組みだ。その結果、「揺れやすい場所がある」と判明。そこは、後に「震災の帯」と呼ばれる阪神・淡路大震災で震度7となった帯状の地域となった。
「神戸と地震」はどう扱われたか?
「神戸と地震」の結論は断定的で明瞭だ。たとえば、地盤調査をふまえ「活断層の数多くある神戸市周辺においても今後大地震が発生する可能性が充分ある」と。これは「活断層」ということばが自治体の報告書に登場した初の事例でもある。
そして、六甲山地の断層の多くは活断層だと考えられるとしたうえで、「将来都市直下型の大地震が発生する可能性はあり、その時には断層付近でキ裂・変位がおこり、壊滅的な被害を受けることは間違いない」と記された。
発行当時、「神戸にも直下地震の恐れ」との見出しで新聞報道された。では、発行後、防災行政にどのような影響を与えたのだろうか。尾池氏によると、「『神戸と地震』の研究の代表者から、「報告書はなかったことになった」と聞いた」と振り返る。「この報告書のことが伝わっていれば(阪神・淡路大震災で)もう少し人が死なずにすんだかもしれないと、だんだん思いました。残念ではありますね」と話した。
なぜ神戸市は調査を依頼したのか?
では、なぜ神戸市は研究者に調査を依頼したのか?「不思議ですね」と尾池氏は振り返る。「神戸と地震」のまえがきには、その背景や理由は書かれていない。尾池氏は想像だとしたうえで、「ありきたりな対策をしておけばそれでよいという報告書だったら(神戸市にとって)よかったかもしれないが、(神戸市にとっては)結論がどぎつすぎた」と。
「神戸と地震」のまえがきには、「この報告は、『神戸市における地震対策』の第一歩」とある。21年後に起こる大震災への備えの歩みはあったのだろうか。
◆取材・文 福本晋悟
MBS報道情報局 災害・気象担当デスク。「阪神・淡路大震災記念 人と防災未来センター」特別研究調査員。阪神・淡路大震災発生時は滋賀県在住の小学3年生。震災で両親を亡くし転校して来たクラスメイトと過ごした。
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