「余命1年半」がんと闘うピアニストが"残された時間"懸けて挑む『みんなで歌う第九』 同じ境遇の人に「病気と闘いながら好きなことやってるよって発信したい」
MBSニュース / 2025年1月29日 12時9分
余命一年半と宣告された、ステージ4のがんと闘うピアニスト・竿下和美さん(50)。「言い始めたら全部しんどくなるから“しんどい”を“楽しい”に変えていく」と話します。竿下さんが残された時間でやりたいこと、それは『みんなで歌う“第九”合唱コンサート』です。世代を超えた歌に込めた思いに密着しました。
『音楽で人生に潤いを』ステージ4のがんと闘いながら音楽活動
ホテルのロビーに、しっとりとした音色が響き渡ります。ピアニストの竿下和美さん(50)。ステージ4のがんと闘いながら、音楽活動をしています。
(竿下和美さん)「音楽をもうちょっと社会で必要なものにしたい。なくても生きていけるけど、あっほう方が人生は潤うし、社会も平和になることを伝えたい」
大学在学中からプロのピアニストとして活躍し、数々のコンクールで入賞。4年前からはNPO法人の理事長として、誰でも参加できるコンサートを主催するなど、精力的に活動しています。
余命『一年半』を、やりたいことを詰め込む『一年半』に
竿下さんが体の異変に気づいたのは、2023年2月でした。咳が止まらず病院を受診したところ、『ステージ4の肺腺がん』と診断され、告げられた余命は『一年半』でした。
(竿下和美さん)「やっぱりがんになったんや。仕事で3時間くらいしか寝ない生活をずっと送っていたので、しかたないなと。余命なので死ぬイメージはしていたけれど、死ぬまでにやりたいことを詰め込める一年半と考えた」
残された時間で街の人みんなで音楽に親しめる機会を作りたいと考えた竿下さん。小学生から高齢者まで、誰でも参加できる合唱コンサートを2024年の年末に主催することにしました。
宣告された余命だと夏ごろには命が尽きます。最後まで見届けられるか分からないなかでの決断でした。
(竿下和美さん)「シニア世代の人もパワーをもらえたり、子どもたちも気を遣ったり、心の交流ができる場になることが一番の目的」
コンサートのメインはベートーヴェンの『第九』。半年間、合唱の練習を重ねます。発音が難しいドイツ語の歌詞。子どもを前の列に配置し、大人の声でリードします。
『私は私で人生を楽しむから大丈夫』娘の言葉に救われる
2024年11月、竿下さんは病院にいました。
(医師)「CT画像を見ると、がんの大きさは維持してそうです」
(竿下和美さん)「よかったです」
(医師)「治療継続で問題ないと思います」
抗がん剤で病状の進行は抑えられていました。体調は安定しています。
竿下さんは夫と大学生の娘と3人で暮らしています。病気を家族に伝えるとき一番怖かったのは、娘・美月さん(19)の反応でした。
(竿下和美さん)「泣いたりとかいろいろするのかなと思っていたら、意外と普通に受けいれていて、『ママは簡単に死ぬわけもないし、私は私で人生を楽しむから大丈夫』と娘が言ってくれた。その言葉で救われました。親としては子どもを不幸にするのが嫌じゃないですか」
病気が分かった当初、夫の延日呂さん(48)は困惑したといいますが、いまは竿下さんの活動をサポートしています。
(夫・延日呂さん)「一般的には病気なので、家に閉じこもって療養に励んだほうがいいと言うのかもしれませんけど、それで1年、2年と寿命が延びたところで、妻の心が死んでしまう。それならしたいことをやって、いきいき生きて、たとえ療養には反していても、自分の人生なので全うできる」
(娘・美月さん)「『つらい』『しんどい』を表に出さないのはすごいなと思います」
宣告された余命を超え…本番は目前
第九の合唱コンサートまで残り1か月を切り、最終調整に入ります。難しいドイツ語の発音も揃い、歌声に一体感が生まれてきました。
(竿下和美さん)「本番ではお客さんのほうを見てドヤ顔しといてください」
(子ども)「ドヤ顔ってなに?」
(竿下和美さん)「うまかったやろうって顔しといて。いい顔しといて」
宣告された余命はすでに超えました。体力も気力も十分あります。目指していた本番はもうすぐです。
(竿下和美さん)「『音楽に出会って癒しの時間をもらったわ』とか『幸せな時間を持てたな』とか。ここにいるみなさんを音楽で幸せにしたい。私自身が音楽で救われているので」
7歳から84歳まで130人 世代を超えた歌声が響きわたる
2024年12月28日、竿下さんが主催する合唱コンサートの当日です。
合唱団の配置を最終確認し、観客を迎え入れます。出演者の家族や友人、音楽ファンなど約600人が集まりました。
(スピーチする竿下さん)「世代や性別も超えて、歌でつながることができる時間を楽しもうという人たちの歌声が、きっと皆さまの励ましになる」
7歳から84歳まで、130人の歌声が響きわたりました。
(参加者)「ぜいたくすぎて、歌っていて幸せでした。歌のとおり歓喜の歌」
3世代での参加者は…
(子ども)「とてもたのしかったです」
(母親)「生きていてよかったと思って楽しかったです。3人で出られて。私が病気があるから今まで閉じこもっていたけど、みんなと一緒に声をあわせてチャレンジしてみたいと思って」
同じ境遇の人たちの“きっかけ”になってほしい
体が許す限り音楽を続けたいと話す竿下さん。今年の年末も『第九』の合唱コンサートを開こうと、すでに準備を始めています。
(竿下和美さん)「同じく抗がん剤治療を受けている方や、病気の方が『ちょっと私も頑張ってみよう』と思うきっかけになるなら。自分も病気と闘いながらでも好きなことやってるよとしっかり発信して、皆も頑張ろうというサインを出す活動をしようと腹をくくった」
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