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かつて不登校だった女子生徒...高校で写真部に入り神戸市のビッグプロジェクトに参加「少しでも社会の一部になれてうれしい」 "自分と向き合った経験"を生かしシャッターを切る!

MBSニュース / 2025年2月2日 16時50分

 「見た瞬間、これはかなり上手だ」と驚いたのは神戸市の広報担当者。神戸国際大学附属高校の写真部が作った写真集の完成度に、目を見張ったと言います。これをきっかけに、市は写真部に“仕事”を依頼。今回は「通学定期代無料化」のPR写真の撮影というビッグプロジェクトを高校生と共に進めることになったのです。 自分たちの撮った写真が街に映し出される…そんな貴重な経験をした写真部に密着しました。

「プロにお願いしても出てこない」神戸市が高校写真部に“仕事 ”を依頼

 神戸国際大学附属高校・写真部。26人の部員それぞれが、独創的なアイデアで写真を撮っていて、兵庫県の最優秀学校賞を3年連続で受賞するなど、近畿屈指の実力を誇っています。

 例えば、県のコンテスト優秀賞をとった『Press』というタイトルの写真。カラフルな手が顔を覆いつくしている作品です。

 (撮影した写真部2年の金山基柱さん)「LGBTを象徴する色が虹色。『多様性を押しつけられて苦しんでいる人』を表現しました。自分から見たら、それは普通のことやから、押しつけられているという」

 また、クラスメイトがモデルのクレオパトラをイメージした作品や、力強く走り抜けた瞬間を切り取った躍動感ある作品も。

 そんな写真に目をつけたのが、神戸市でした。

 (神戸市広報戦略部 多名部重則部長)「きっかけは、この神戸国際大学附属高校が作った写真集。表紙を見た瞬間、これはかなり上手だと」

 市の広報を担当する多名部さんは、部員たちが撮影した学校の魅力を伝える写真集をたまたま手にし、完成度の高さに驚いたといいます。

 (多名部重則部長)「(写真部は)楽しい笑顔が撮れるし、真剣な眼差しのときは、より真剣になっている気がします」

 多名部さんは、写真部に広報写真を撮ってもらえないかと相談。去年7月、正式にタッグを組むことが決まりました。初めての依頼は、子育て情報の発信などに使用する写真の撮影。予想以上の仕上がりだったといいます。

 (多名部重則部長)「(モデルを)どうやって笑かしたんやろな。こういうのは、なかなか撮れない。プロにお願いしても出てこないと思う」

 滑り出しは上々です。

ビッグプロジェクト『通学定期代無料化』のPR写真を撮影へ

 去年9月、写真部のメンバーが地下鉄の駅に集まりました。この日は、市が力を入れている「通学定期代無料化」のPR写真の撮影。写真は三宮駅など主要な駅で使われるビッグプロジェクトです。撮影には実物の市バスを使います。

 (多名部重則部長)「やや望遠気味と広角でバストショット。その後は、実際にバスに乗って、車内から乗ってくるところを撮る」

 モデルは同級生。和やかな雰囲気で進んでいきます。

 (写真部3年 堀江彩加さん)「止まってほしいかも。動くんじゃなくて、止まってポーズとってくれると。そうそうそう!かわいい」
 
 (多名部重則部長)「高校生らしさがすごくあります。いろんな角度でいろんな切り口で撮っているので、ひょっとしたら面白い写真が生まれてくるんじゃないかなと」

 しかし、多名部さんの手ごたえとは裏腹に、撮影が進むにつれて…写真に納得がいかないような表情を見せたのは3年生の堀江彩加さんです。

 (写真部3年 堀江彩加さん)「(Q手応えは?)うーん…何とも言えないです。微妙。この場所で絶対撮らないといけないものを撮ることが少なくて」

 自分の作品なら自由自在に場所や設定を変えて撮影できますが、今回は神戸市の意向に沿う必要があるため、もどかしさを感じているようです。

「このままでいいんや」中学時代は不登校…写真と出会い前向きに

 堀江さんは、高校入学後にカメラを始めました。

 (写真部3年 堀江彩加さん)「これが私のカメラです。叔父と両親にプレゼントでもらって。ほんまに頑張れよって」

 自分のカメラを手にすると、部活動にも力が入り、様々な賞をとるようになりました。

 (写真部3年 堀江彩加さん)「(Q写真部に入るきっかけは?)友達が『写真部が気になるから一緒に行こう』と言ってくれて。先輩もすごく優しくて。中学のときにチームプレーの部活に入っていて、それがあまりうまくいかなかったので…写真は個人戦なのかなと思って、そっち(写真)の世界に入ってみようと」

 中学のときは団体競技の運動部だった堀江さん。人間関係がうまくいかず、1年の夏から不登校になったといいます。卒業式にも出られませんでした。

 (写真部3年 堀江彩加さん)「いま考えたら、自分と向き合う長い時間が他の人よりできたので、それがきっかけでより前向きに生きられるようになった。その経験を生かして、写真部で自分の世界を写真を使って表現したり伝えたりすることができて、それを評価もしてもらえて、『このままでいいんや』と思えるようになりました」

 こうした経験から生まれた、堀江さんのセルフポートレート『人生論。』では、他人に見せる表情の裏側には様々な感情が潜んでいることを表現しました。

最も市民に訴える写真は?撮影した5000枚以上の中から約10枚を厳選

 神戸市に依頼された「通学定期無料化」の写真撮影から1か月後。市役所でデザインの打ち合わせが行われました。

 (神戸市 クリエイティブディレクター 佐々木啓仁さん)「作品の良さだけではなくて、今回はメッセージとの組み合わせ。写真が入ることによって、メッセージがより伝わる、そういう視点で写真を選んでいきたい」
 
 最も市民に訴える力があるのはどの写真なのか、率直な意見を交わします。

 【議論する写真部員たち】
 「奥行すぎる?」
 「モデルより後ろのほうが…」
 「もうちょっと前…」
 「確かに」
 「今度トリミングしたとき、被写体が大きくなりすぎるから、何を伝えたいのかちょっと…」

 5000枚以上撮った写真から、最終的に10枚ほどに絞り込みます。

「本当に経験できないこと」大型ビジョンに自分の撮った写真が!

 そして、去年12月、堀江さんたちの写真を使ったデジタル広告が完成しました。

 メリケンパークの大型のビジョンに映し出され、目を輝かせる部員たち。日が暮れると写真はより鮮明になり、神戸市が伝えたいメッセージを引き立てます。1日11万人以上が利用する地下鉄三宮駅でも、広告が映し出されました。

 高校でカメラを始めた堀江さんは、写真部の集大成に手ごたえを感じていました。

 (写真部3年 堀江彩加さん)「うゎっすごって。本当に経験できないことだと思うので。社会の一部に、ちょっとだけでもなれたのは、めっちゃうれしいです」

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