「旧統一教会」関連団体との接点で実名公表の自民議員が語る"危惧すること"「2世信者らを社会から排除していいの?」
MBSニュース / 2022年9月17日 12時49分
自民党が実施した旧統一教会と所属国会議員の接点に関する調査結果。接点があったとされる179人のうち、121人の実名が公表されたが、このうち、関連団体への会合「出席」「講演」と「会費等の支出」の3つの項目で接点が確認された議員がいる。滋賀1区選出の大岡敏孝衆院議員だ。 9割近くの議員が旧統一教会との関連について「認識がなかった」(茂木幹事長)とする中、その関連を「知っていた」と語る、ある意味“少数派の議員”でもある。多くの議員が口を閉ざす中、あえて「取材に答える」というので、衆院会館の事務所を訪ね、改めて統一教会との関係や今の状況を聞いた。
まず、9割の自民党議員が旧統一教会の関連団体である認識がなかったとされる点について聞くと、大岡議員は「自民党は"素人の集まり"ということですか?それはありえないと思います」と率直に疑問を呈した。
大岡議員自身、関連団体(世界女性平和連合)の会合に出席しているが「呼び掛けたのは、地元の支援者であり(中略)世界平和連合の人たちであることはわかっていたし、旧統一教会の関係団体であることはわかったうえで対応した」と当初から認識があったことを認めた。
ただ最初に「旧統一教会がいままでやっていた霊感商法とか、社会的問題になったことはどうなっているのか?」と質したのだという。先方からは「過去には問題があったが、今はそれを反省して、そういうことは一切やっていない」という説明を受けたという。
だが実際には、旧統一教会は高額な壺などを買わせるかつての「霊感商法」から、高額の献金に対する見返りという形式に変わってきたといい、その手法は非常に巧妙化していると専門家は指摘している(ジャーナリスト鈴木エイト氏 よんチャンTVから)。
一方で大岡議員は「旧統一教会をかばう気もないし、擁護する気もない。過去にやってきたことを水に流すつもりもないし、被害に苦しんでいる人も多いと思うので、しっかりと支えたいと思う」とも語った。
自民・滋賀県連「地方議員の調査はしない」に抗議殺到
今、問題視されているのは、旧統一教会の活動が自民党の「政策決定」に影響を与えたのかどうかという点だ。大岡議員自身も会合などへの参加で、何らかの影響を受けることはなかったのか...この点について次のように強調した。
(大岡敏孝衆院議員)
「伝統的な性別を大事にしているので(旧統一教会は)LGBTには反対しているが、私はLGBTの社会的な理解の増進が必要だと彼らに伝えたし、日韓トンネルにも『はっきりそういう考えはない』と。同じお金を使うなら、沖縄までトンネルを掘りますと言っていますから、そういう意味では影響はうけていない」と強調した。
一方、大岡氏が会長を務める自民党滋賀県連では9月11日、地方議員については旧統一教会との関係を「調査しない」ことを決めた。旧統一教会の地方政治への浸透が問題視される中、岸田文雄総裁は9月8日、地方議員についても「関係を持たない方針を徹底してもらう」と表明している。
大岡議員は「広く地域のお世話をするのが地方議員の役割」だと前置きしたうえで、「私たち国会議員は、組織として(旧統一教会と)一切の関係を断つ、相談には接触しないので『子供がいじめられてどうしたらいいのか』という相談にはもう組織としてのれない。ここは地方議員の出番で、地域で行き場をなくしている子供たちや親御さんがいれば、統一教会であろうとなかろうと相談に乗ってほしいと要請した」と語った。
また、地域活動の役員などに旧統一教会の信者がいる可能性はあるが、そこまでは調べきれないとし、憲法で保障されている「信教の自由」に抵触する可能性もあるとの見解を示した。旧統一教会の「宗教の問題」と「信者個人の問題」は切り分けるという姿勢だが、信者との関係を"半ば容認した"とも言え、事務所には多くの抗議電話が寄せられているという。
「旧統一教会の実態把握」が大事 民主主義から"はじかれる信者"に危惧
秋の臨時国会では旧統一教会問題がクローズアップされ、とりわけ「法整備」の行方に注目が集まっている。立憲民主党は「カルト被害防止・救済法案」を作成中で、野党ヒアリングには2世信者が呼ばれ「高額献金を規制するべきだ」と訴えた。日本維新の会も弁護士から被害実態のヒアリングを行うなどしており、信者らの所得に応じ、寄付の上限規制を設けることが可能か検討するなど、法案を準備中だ。自民党は岸田総裁が、党の消費者問題調査会の下に小委員会を立ち上げ、被害防止や救済について検討するというが、あくまで現行法下でできることを模索するという姿勢だ。(9月8日に行われた閉会中審査での総理答弁)
大岡議員は「必要な法改正は躊躇するべきではない」とする一方で、まずは旧統一教会の実態を把握することが大事だと訴えた。
さらに大岡議員は次のように今の状況が続けば"憎しみの連鎖"を生みかねないと独自の見解を語った。
(大岡敏孝衆院議員)
「今の論調は、過去に何をやっていたのか、今何をやらせているのか、こういった事実認定や分析をしないまま、旧統一教会の信者やその関係者を『十把一絡げ(じっぱひとからげ)』にして、連座制を適用して"全員悪人"と、民主主義から排除すると。彼らは国民でありながら、民主主義政治にアクセスできないということになるので、今そういう方向に進みつつあるのを、私は危惧している」
確かに、旧統一教会問題の報道が続く中、現役信者がおかれている社会的な状況はあまり伝わってこない。
旧統一教会の問題を長年取材している鈴木エイト氏はMBSの取材に対して次のように答えている。
(鈴木エイト氏)
「現役の2世信者のケアーなどをどうするのか、国や自民党は基準を出して、信者の人権を守った上で相談に乗るべきではないのか。カルト問題の本質は、中の人は"被害者でもある"という視点で、山上容疑者のような社会から隔絶された存在を増やしてはいけない」
実名が公表された自民党の議員から積極的な発信が乏しい中、あえて発言する大岡氏の意図はどこにあるのか。それは「壮大な言い訳」なのか、それとも「危機感の裏返し」か。旧統一教会をめぐる一連の世論に、一石を投じることになるだろうか。
毎日放送報道情報局 解説委員 三澤 肇
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