「お帰りはぜひ近鉄で」花園ラグビー場での久しぶりのナイトゲーム 主役は『花園近鉄ライナーズ』
MBSニュース / 2022年5月17日 16時1分
「とにかく勝ててよかった。夜空に浮かぶ花火を見たとき、もし負けていたら・・・と想像してしまいました」
4月1日、東大阪市の花園ラグビー場。高校ラグビーの聖地に、久しぶりにナイター照明が灯った。天候等の影響で、試合進行が遅くなったときの全国高校ラグビー大会を除けば、およそ3年ぶりのナイトゲーム。2019年のワールドカップでさえ、すべて日中に試合が組みこまれたこの地で、ナイター開催が実現したのは、この日の主役が、特別なチームだったからに他ならない。
その名は、花園近鉄ライナーズ。この花園ラグビー場を創設、過去3回の日本選手権優勝をはじめ、数々の日本代表選手を輩出してきた近鉄を母体とする名門チームだ。その実績は、まさに関西の社会人ラグビーの歴史といっても過言ではない。実に関西社会人リーグ優勝17回、全国社会人大会は全55回大会のうち53回出場して優勝8回。同志社大学で大学日本一に輝いた林敏之、平尾誠二といったスター選手が、神戸製鋼ラグビー部で栄光の歴史を積み上げる前から、関西のラグビーを中心となって盛り上げてきた存在だ。
ディヴィジョン2からスタートした花園近鉄ライナーズ
ただ、今年から始まったラグビーの新リーグ・ジャパンラグビーリーグONEでは、近年の成績が反映されて、2部リーグにあたるディヴィジョン2からのスタートを余儀なくされる。“近鉄漢-KINTETSU MAN-”と名付けられたこの日の試合は、ディヴィジョン1昇格を争う順位決定戦前の最後のホストゲーム。気温10度を下回る肌寒い天気の中、名門の復活を信じて疑わない、ラグビーを愛するファンが大勢つめかけた。
その観客を前に、ライナーズは、試合開始から日野レッドドルフィンズを相手に、気迫のこもったプレーを披露する。
チームが今年から取り組んでいる、自陣からでもパスつないでいく攻撃的なラグビーを展開。開始10分、幸先よく先制のトライを奪う。しかし、その後は何度もチャンスを作りながら、あと一歩のところでミスが出て、なかなか得点に結びつけることが出来ない。逆に、少ないチャンスをいかされて、レッドドルフィンズに同点、そして逆転を許してしまう。後半に入っても、最後のところでボールがつながらない。攻め込みながらボールを失ったところを逆襲されて、残り23分、ついに7対21と点差を拡げられてしまう。
そんないやなムードを動かしたのが、3700人を超える観客からのホームチームを鼓舞する熱い拍手。ラグビーをよく知る観客が、一つ一つのプレーごとに、メリハリをつけて、ライナーズの選手たちの気持ちを盛り上げていく。
力強い応援に後押しされたライナーズ、ここから、チームキーワードである“感動”の名のとおり、魂を揺さぶる試合を展開していく。差を拡げられてから4分後、自陣ゴール前からボールをつないで逆襲、ロックのサナイラ・ワクア選手が反撃のトライを奪うと、29分には、日本代表でもあるセンターのシオサイア・フィフィタ選手がトライ、17対21と4点差に迫る。そして残り時間が少なくなった36分、自陣深くから、フランカーのワイマナ・カバ選手がボールを持ち出すと、ミスなくボールをつないで最後は、ウイングの木村朋也選手が50メートルを走り切ってトライ。鮮やかな逆転劇で、ライバルを振り切った。
「ぜひ近鉄電車でお帰り下さい」
大事なホストゲーム最終戦での劇的勝利。冒頭の言葉で本音を語った野中翔平主将は「リーグONEになって、選手としての準備という点では、そんなに大きく変わらない。ただ、チームや会社の方は、本当に一生懸命取り組んでくださっている。地元の方からも、心から応援していただいている。だからこそ、僕たちは期待に応えなければいけない。やっぱり花園の雰囲気は、最高でした」とコメント。そして、ホストゲーム最終戦のセレモニーが終了、観客に向かって深く頭をさげたあと、こう締めくくった。
「本日は、寒い中ありがとうございました。この後は、気をつけて、ぜひ近鉄電車でお帰り下さい」
チームスローガン“近鉄漢-KINTETSU MAN-”
チームスローガンでもある“近鉄漢”には、こんな意味がこめられている。
『会社やチームを代表して、人や社会から愛され、尊敬され、憧れられ、信頼され、誇りに思われ、地域社会やラグビー界に貢献できる存在になること』
リーグ戦を2位で通過した花園近鉄ライナーズは、上位3チームによる順位決定戦に進出。3位の三重ホンダヒートに続いて、リーグ戦では苦杯をなめていた三菱重工相模原ダイナボアーズも撃破して、見事2連勝。来シーズンのディヴィジョン1昇格を手にした。
歴史と伝統を受け継ぎながらも、新しく生まれ変わった花園近鉄ライナーズ。リーグONEが目指す会社の誇りという存在意義を残しながら、地域社会にも愛されるチーム。“近鉄漢“の名のもと、ファン・チーム・企業・地域が一つになって、リーグ最高峰の舞台で、暴れまわる姿を期待せずにはいられない。
MBS制作スポーツ局 宮前徳弘
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