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10.2~奇跡の逆転を可能にしたのは~「諦めている選手はひとりもいなかったし最後まで絶対に勝てると信じていました」

MBSニュース / 2022年10月24日 12時48分

「諦めている選手はひとりもいなかったし、最後まで絶対に勝てると信じていました」。2022年10月2日、奇跡の大逆転でリーグ連覇を果たしたオリックス・バファローズの中嶋聡監督は、優勝インタビューの中でこう答えた。パシフィックリーグの歴史の中でも、後世に語り継がれるであろう、ラスト1試合での筋書きのないドラマ。それは、長いペナントレースを戦い抜く指揮官の胆力と優勝争いを勝ち抜いた経験を持つ多くの選手がいたからこそ、初めて可能になった戴冠だった。

さかのぼること約1か月、8月26日、京セラドーム大阪。オリックス対西武の22回戦。この時点では、対戦相手のライオンズは、首位ソフトバンクに0.5ゲーム差の2位。追いかけるバファローズは、その西武に2ゲーム差の3位。エース山本由伸投手をたてて、どうしても、ものにしたい一戦だった。パリーグの上位を争う両チームの激突。緊張感が漂う中、試合が進んでいく。

4回、1点を先制されたオリックスが、その裏、ワンチャンスをものにする。ライオンズの先発、今井達也投手からラッキーな形で2点を奪って逆転。山本投手の調子も上々。このまま試合の流れを引き寄せる、そんなムードが球場を包み込んだ。しかし7回、リーグを代表する両雄の対決が、空気を一変させる。

昨年のパリーグMVP、投手タイトル7冠の山本由伸投手に対するのは、ホームラン王を独走する西武の主砲・山川穂高選手。ここまで2三振、この打席も1ボール2ストライクと追い込まれた山川選手だったが、そこから粘って7球目を強烈なフルスイング。 左中間スタンド上段に飛び込む36号ホームラン。一振りで試合を振り出しに戻した。

それでも、まだ同点。山本投手の投球数も100球を少し過ぎたところ。大事な一戦だけに、そのまま山本投手が続投すると、つめかけた多くの観衆がそう思った。ところが8回、オリックスベンチは、リリーフのワゲスパック投手をマウンドに送り込む。「ペナントレースの勝負は、まだまだ先にある」というメッセージとリリーフ陣に対する絶対の信頼、長いリーグ戦を全員で戦う意思を示したのだ。

一方の西武ライオンズは、そのまま今井投手が続投。144球の熱投で9回を投げ切った。

結局、延長にもつれ込んだ一戦は西武がものにしたが、極限の戦いの中で心身ともに疲労が蓄積した今井投手は、この試合を最後にチームから離脱。高橋光成投手と並ぶ右の2枚看板の一人である先発の軸を失った西武は、優勝戦線から脱落していく。逆に、この試合で無理をしなかった山本由伸投手は、ローテーションを守って、ロッテ、ソフトバンク、楽天といった優勝争いのライバルを相手に4連勝。特にゲーム差3.0で迎えた9月17日からの絶対に負けられないソフトバンクとの最後の天王山では、圧巻の完封劇でチームを勢いづけた。

プロ野球のペナントレースは、想像以上に長い。かつてのV9時代のジャイアンツや、2010年代前半のソフトバンクのように、多くの戦力を有していれば別だが、ドラフト制度が整備されて、人気面の格差がなくなり、戦力が均衡化してきた現代では、球団として選手を育成する能力とともに、いかにいいコンデションで選手一人一人がプレーできるかどうかが、優勝を争う上での重要な要素になっている。指揮官が、いかに我慢を重ねることが出来るか、選手たちを信じることが出来るかどうか、その上で選手たちが最後の最後まで役割を果たせるかどうかが、戦いを勝ち抜く大きな鍵を握っているのだ。

優勝インタビューの最後に、中嶋監督は、こう付け加えた。
「もうわかっていると思うが、うちのピッチャー陣の踏ん張りがなかったらここまで来られなかった。(この後のポストシーズンは)野手陣、頑張ってください」

その言葉通り、ソフトバンクとのクライマックスシリーズでは、自慢の投手陣に加えて野手陣が奮起。第1戦を山本投手の快投で勝利すると、第2戦ではシーズン中はなかなか調子が上がらなかった杉本裕太郎選手が決勝のツーランホームラン。日本シリーズ進出がかかった第4戦では4番・吉田正尚選手の豪快な一発に加えて、最後は進境著しい中川圭太選手が劇的なサヨナラヒット。どの試合も苦しい中、選手一人一人が諦めずに役割を果たし続けた結果、手繰り寄せた必然の勝利だった。

いよいよ日本シリーズ。相手は昨年と同じヤクルトスワローズ。今年も1点を争う息詰まる緊迫した試合が続いている。ただ相手は同じでも様相は違う。昨年と大きく違うのは、何よりもオリックスには一度日本シリーズを経験したメンバーが揃っているということだ。勝つためには、何が必要か?どれだけの我慢が大切か?絶対に諦めなければ必ず勝機はある。そのことを、身をもって知っているメンバーが多く存在することだ。

チャンスは最後の最後に来ると信じて勝利の女神を引き寄せたペナントレースのように、決して諦めないオリックスの強さ、その強さを知った上で迎え撃つ王者ヤクルトスワローズ。どちらが最後まで我慢できるのか、自分たちを信じることができるのか?明日からの京セラドーム3連戦からますます目が離せなくなってきた。

MBS制作スポーツ局 宮前徳弘

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