【高校野球】「紙一重の攻防」決勝で明暗を分けたもの 仙台育英、広陵、慶応、近江、履正社にみる「底力」きょう組み合わせ決定
MBSニュース / 2023年8月3日 14時43分
第105回全国高校野球選手権は、すべての地方大会が終了。いよいよ3日に抽選会が行われて週末の6日には、阪神甲子園球場での本大会がスタートする。例年以上の猛暑に見舞われた今年の地方大会、グラウンド上でも熱戦が繰り広げられた。特に決勝戦は、紙一重の攻防が連続、1点を争う好ゲーム、終盤での大逆転劇、タイブレークでの決着が目立った。その中で、勝敗を分ける大きな要因となったのが、甲子園を経験したチームの「底力」だ。甲子園を目の前にした決勝戦で、いかに普段の力を発揮できるのか?追い込まれた状況の中で、冷静に自分たちの役割を全うできるのか?接戦になるほど、修羅場をくぐり抜けたチームの「底力」が勝利を引き寄せたとみる。
「聖地での経験」が大一番でチームを後押し
広島・広陵と北北海道・クラーク国際、センバツ大会に出場した両校は、ともに優勝候補として登場。準決勝までは順調に勝ち上がったが、決勝戦は別物。あと一つ勝てば、甲子園という重圧の中で、追い上げムードに乗った相手の勢いに押し込まれる。それでも我慢強く守り、ミスが起こっても慌てず対応、ともに1点差で逃げ切った。
◎甲子園の組み合わせ:3日目 クラーク国際ー前橋商(群馬) 6日目 広陵ー立正大淞南・島根
昨夏、今年のセンバツと連続して甲子園に出場した、兵庫の社は、追い込まれた状況での冷静な判断が光った。明石商との決勝戦の9回、同点に追いつかれ、なおも1アウト満塁のピンチ。ここで明石商は、スクイズを試みる。2球続けての三塁側へのきわどいバンド。しかし、社の選手たちは、冷静に打球を見極めた。急いで処理しようとした投手に対して、内野陣が大きな声でこれを阻止。結果は2球続けてのファール。このピンチをしのいだことで、サヨナラでの勝利を手繰り寄せた。
滋賀の近江は、甲子園で多くの経験を重ねてきた選手たちが、大一番でチームを後押しした。決勝戦は、中盤で大きくリードを奪うも終盤まさかの展開。実力校・滋賀学園の強烈な追い上げの中でミスも出て、名将・多賀章仁監督も「負けも覚悟した。」という内容で1点差まで詰め寄られる。
それでも、数多くの修羅場を経験している選手たちは、決して慌てなかった。昨年からレギュラーの清谷大輔選手や横田悟主将を中心に、落ち着いて下級生を盛り上げていく。その声にこたえるように、下級生も実力を発揮。最後は、2年生の北川凌佑投手が投げ切って、5年連続、滋賀大会の優勝を果たした。
◎甲子園の組み合わせ:3日目 近江ー大垣日大(岐阜) 4日目 社ー日大三・西東京
全国有数の激戦区、神奈川と大阪は、ともに甲子園を経験した選手たちが激突した決勝戦となった。自分たちを信じて、一人一人が確実に、冷静に役割を果たし続けたチームに、勝利の女神が微笑んだ。神奈川は、2年連続の出場を狙う横浜と、センバツ大会に続く甲子園を目指す慶応の決勝戦。慶応が先制するも、横浜が逆転、5対3と2点リードのまま9回を迎える。
8回には、3者連続三振を奪うなど、終盤にきて、調子を上げる横浜のエース、杉山遥希投手。しかし9回、思わぬ形でピンチを招く。ダブルプレーを狙ったショートのベースカバーが、ベースを踏んでいないと判定されて、ノーアウト1塁2塁。送りバンドで1アウト2塁3塁となって慶応のスラッガー、渡辺千之亮選手を迎える。同点覚悟も、長打やホームランだけは、避けなければならない場面。しかし7球目の変化球が甘く入ってしまう。この一球を、渡辺選手が、起死回生の逆転スリーランホームラン。苦しい状況でもあきらめずに、つなぐことに徹した慶応。逆に勝利が目前に見えたことで、勝負をすこし急いでしまった横浜。決勝戦だからこそ、うまれた大逆転劇だった。
◎甲子園の組み合わせ:6日目 慶応ー北陸・福井
大阪大会で、王者・大阪桐蔭を打ち破ったのも、普段の力を存分に発揮した履正社の「底力」だった。森沢拓海主将が、「エラーしたほうが負けると思っていた」と語ったように、高い集中力からの堅実な守備でリズムを作ると、攻撃でも、一人一人が粘り強いバッティング。絶対的エース前田投手を擁する大阪桐蔭にプレッシャーをかけ続けていく。そして、2回、大阪桐蔭の守備の乱れから先制点を奪うと、4回にも2点を追加、大阪桐蔭に一度も流れ渡さず、そのまま押し切った。
圧倒的な個の能力や、豪快な打撃が目に付く大阪桐蔭だが、その強さの背景には、大事な局面でミスを犯さない固い守備力と、追い込まれた状況でも、決して慌てない打撃陣の対応力にある。しかし、今回は、ミスが出て、対応が遅れて敗れた。完封した履正社の福田幸之介投手が、「投げていて、今日のバックは、本当に頼もしかった。」と語ったように、やるべきことをしっかりやったうえで、高い集中力を保ち続けた履正社の必然の勝利だった。
◎甲子園の組み合わせ:2日目 履正社ー鳥取商・鳥取
厳しい地方大会を制して、晴れの舞台へ勝ち上がってきた49の代表校。出場したとしても、甲子園で勝ち抜くには、また別のチカラがいる。ここでも甲子園で、勝利した経験が、大きくものをいう。その意味では、昨夏優勝の仙台育英、センバツでも4強まで勝ち残った広陵の両チームとも、春から夏にかけてさらに戦力が充実しているだけに、本大会での活躍が期待される。
いっぽう、一つ勝つことで、甲子園の呪縛から解き放たれて、一気に波に乗るケースもある。春のセンバツ大会では、力がありながら、甲子園では初戦敗退が続いていた山梨学院が、苦しい戦いの中で一つ勝ったことで、頂点まで一気に駆け上がった。甲子園の怖さと、勝ち抜くすべを知っている経験豊富なチームが大会をリードするのか?それとも、勢いにのった実力校が、旋風を起こすのか?今年も、球児たちの熱い夏から目が離せない。
全ての組み合わせ
第1日
・土浦日大(茨城)-上田西(長野)
・共栄学園(東東京)-聖光学院(福島)
・浦和学院(埼玉)-仙台育英(宮城)
第2日
・川之江(愛媛)-高知中央(高知)
・履正社(大阪)-鳥取商(鳥取)
・英明(香川)-智弁学園(奈良)
・愛工大名電(愛知)-徳島商(徳島)
第3日
・花巻東(岩手)-宇部鴻城(山口)
・前橋商(群馬)-クラーク国際(北北海道)
・日大山形(山形)-おかやま山陽(岡山)
・大垣日大(岐阜)-近江(滋賀)
第4日
・鳥栖工(佐賀)-富山商(富山)
・日大三(西東京)-社(兵庫)
・市和歌山(和歌山)-東京学館新潟(新潟)
・立命館宇治(京都)-神村学園(鹿児島)
第5日
・東海大熊本星翔(熊本)-浜松開誠館(静岡)
・明豊(大分)-北海(南北海道)
・創成館(長崎)-星稜(石川)
第6日
・いなべ総合(三重)-沖縄尚学(沖縄)
・立正大淞南(島根)-広陵(広島)
・慶応(神奈川)-北陸(福井)
・文星芸大付(栃木)-宮崎学園(宮崎)
第7日
・明桜(秋田)-八戸学院光星(青森)
・専大松戸(千葉)-東海大甲府(山梨)
・九州国際大付ー(1日第一試合の勝者)
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