「令和版"一杯のかけそば"みたいなことになってしまっている」「下の子は極度の貧血に...」物価高騰に耐えられない困窮子育て家庭 9割が『賃上げ無し』の現状(NPO法人キッズドア調査)
MBSニュース / 2023年12月6日 5時48分
認定NPO法人「キッズドア」は、困窮子育て家庭に対するアンケート(11月10日~16日実施)の結果を12月5日に公表しました。回答した約1800件のうち、90%が母子世帯です。12月に入っても乳製品を中心に677品目が値上げされ、回答からは物価高騰に耐えきれない深刻な状況が見えてきました。
まず家庭の経済状況です。「貯金はない」が40%を占め、「借り入れがある」という回答も43%ありました。こうした背景の中、物価高騰を受けて「とても厳しくなった」と、「やや厳しくなった」を合わせると99%の家庭が打撃を受けています。
しかし、昨年と比較して年収が増えた家庭は9%に留まっており、「変わらない」が57%、「減る」が34%と、9割以上が政府が進める賃上げの効果を受けておらず、物価上昇分を補いきれていません。
アンケートに回答した保護者からは、「お金が無く借りては返しての繰り返し。ローンも作りたくないが生きていくために仕方ない」。「コロナの影響を受けて貧困層のどん底から物価高騰の煽りをうけ、また貧困層に落ちている。もう借金できる金融機関もない」といった悲痛な声が届いています。
「値上げで、買えないものが多すぎます」
困窮家庭では具体的にどのような影響が出ているのでしょうか。昨年と比べた日々の食事の変化では、「外食を減らした」という家庭がもっとも多く74%。「おやつを減らした」が63%、「肉・魚を減らした」が61%となっており、育ち盛りの子どもにとっては厳しい現状があるようです。また7割の保護者が食事の回数を減らしています。
「給料もあがることなく、子どもは成長し食欲も増す中、十分に食べさせてあげることができていない。下の子は極度の貧血になってしまいました。運動制限もかけられました。」
「お肉や野菜、調味料など色々な物が値上げしていて、買えないものが多すぎます。子どもに食べさせるために自分の食べる分を減らしています」
燃料の値上げも冬の暮らしに影響しています。
「これから寒い季節になるのに灯油やガス代が高くて、週に一度くらいしかお風呂を沸かすことが出来ないです。暖かい毛布や布団も欲しいです。」
「私一人なら暖房等は我慢しますが、子どもたちに何枚も重ね着をさせて寒い思いをさせるのは切ないので、ガソリンや灯油、電気代などの価格が本当に下がって欲しいです。」
体験の機会も失っている「好きなイルカ、実際見たことはない」
保護者の声からは、子どもに十分なことをしてやれないという苦しい胸の内が伝わってきます。さらに、去年より今年のほうが、子どもに悪い影響が出ていると、半数以上の家庭が答えてました。
動物園や美術館などの「学校外の学びの機会を減らした」が55%、「友達と遊びに行くのを減らした」が44%など、体験の機会が得られていなかったり、「子どもにとって必要な栄養が取れてない」39%、「子どもが風邪などの病気になりやすくなった」38%「子どもの身長や体重が増えていない」22%など、育ちや健康にも影響が出ています。
成長期の子どもには体験も栄養もなくてはならないものなのに、です。
「普通の生活をするのが精一杯でお出かけに連れて行ってあげられないのが悔しい。お友達から出かけている話を聞くと羨ましそうでごめんねとしか言えない。」
「どこに行くにも入場料や交通費も高く、子どもを楽しませてあげられません。子どもの好きなイルカも実際には見たことはないです。」
部活を辞めてアルバイト 子供に突き付けられる「家計を助ける役目」
高校生世代の子どもにも厳しい現実が突きつけられています。「塾や予備校に行けない」58%、「参考書を購入できない」39%など、学びに影響しているだけでなく、「アルバイトを増やした」24%など、家計を助ける役目も負っています。
「経済状況悪化により下に妹弟がいるため大学進学を諦めた」
「遠征費用等の心配をしていた子どもが、部活を辞めました…。そしてその時間をアルバイトにあてています。」
「就職活動で面接して、合否連絡の時に携帯が止められていて、合格したのに不採用になった」
今年4月に施行されたこども基本法では、すべてのこどもが適切に養育されることや、健やかな成長をすることは権利だとしています。十分な栄養を与えられること、寒さに震えることなく冬を過ごせること、行きたい学校に行けることは、子どもにとって当然の権利として守られなければなりません。
「令和版”一杯のかけそば”みたいなことに」
キッズドアの渡辺由美子理事長は会見の最後に、今日届いたばかりの困窮家庭の保護者のメールを紹介しました。
「今、子どもは学校での昼ご飯をパン一枚で過ごしています。夏休みにラーメンチケット(キッズドアに協力している企業が支援)をいただき、お店に足を運び、美味しいラーメンを食べることができました。私にはラーメンを食べさせてあげることができないので、何より子どもがお腹いっぱいになれたこと、周りの人と同じようにラーメンを食べられたことに感謝いたします。どうか次回もラーメンチケットの支援をお願いします。」
渡辺理事長は、「令和版”一杯のかけそば”みたいなことになってしまっている」と話します。
物価高の影響は昨年に比べてもより厳しく、困窮子育て家庭はすでに切り詰めるものもないほど追い込まれていて、「子どもたちのお腹がいっぱいになることを何よりもお願いしたい」と締めくくりました。
この冬も、キッズドアだけでなく様々な団体が食糧支援などを計画しています。クリスマスやお正月、世間が華やぐ時期には、困窮家庭の保護者や子どもたちはより一層孤独感や辛さが増すといいます。こうした支援が一時的な支えになることは大切ですが、もっと重要なことは継続して安定した生活を送れることです。
児童扶養手当の所得制限引き上げや保護者の就労支援、賃上げや給食の無償化など、実現可能な施策はたくさんあります。早急な政府のリーダーシップ発揮が望まれます。
(東京報道部 石田敦子)
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