石破総理に記者がぶつけた「万博の目玉って何ですか?」「もし赤字になったら?」モヤモヤ残る "無難な回答"から見えたこと
MBSニュース / 2025年2月6日 19時7分
開幕まで70日を切った大阪・関西万博。参加国数が伸びない、建設コストなどが増大している、パビリオンが間に合うのか、前売りチケットが想定の半分程度しか売れていないetcさまざまな課題が指摘されてきたが、約2か月経てば始まるのである。そう、なんだかんだ言っても開催されるのだ。
「こういうビッグイベントは直前になれば盛り上がってくる」
「半年間の開催中に魅力が伝われば来場者は増えてくる」
関係者からは自己暗示にも似た希望的観測が漏れ伝わってくる。
大阪の放送局に在籍している身としてはどうせやるなら盛況かつ意義あるものになればとは思うのだが、普段東京に身をおき取材していると、開催が近づいてもなお万博の熱量が上がってきているとは感じない。
何が「目玉」なのかが知りたい…
それはなぜなのか?とどのつまり万博へ行けばこれが見られる、楽しめる、体験できる、ぜひ行かなければ!といざなうような強烈な誘引因子が不明だからだろう。
簡単に言えば「目玉」は何なのかである。
かなり前から東京の人たちに「結局万博の目玉って何ですか?」とどストレートな質問をよく受けるのだが、どうにも答えに窮してしまう…。
そんなモヤモヤを解消するため私もどストレートに聞いてみることにした。国を挙げての大阪・関西万博。一大事業を推進、サポートしていくトップである総理にぶつけてみた。「万博の目玉って何ですか?」と。
去年12月24日、総理官邸で行われたの記者会見。質問を胸に手を挙げ続けたが、残念ながら指名されなかった。その日に官邸報道室を通じて質問を提出した。
約1か月を経過して1月23日に文書での回答が寄せられたので、紹介する。以下が私の提出した質問内容である。
(質問)
来年(質問当時)は大阪・関西万博が始まります、今回の補正予算にも万博関連の費用が積まれましたが、 開幕が近づいていますが依然として機運は盛り上がりにかけ、前売り券の販売も芳しくありません。その要因は結局のところ万博開催の意義が伝わっておらず、目玉がなにかわからないことではないでしょうか。総理は万博の意義、そして目玉はなんだとお考えですか?また、仮に赤字となった場合にはその責任はどこにあるとお考えでしょうか?
総理の回答「一つに定めることは大変難しいですが…」
まず「目玉」については以下の回答があった。
『万博の「目玉」については、人々の嗜好が多様化する中で、一つに定めることは大変難しいところですが、日本館における「火星の石」の展示はもちろん、各国による創意工夫あるパビリオンの内容や、各種イベントの内容も続々と明らかになってきており、どなたでも楽しめるものがあるものと考えています』
目玉の具体例として日本館の「火星の石」を例示した。1970年万博では「月の石」が目玉の一つとなったが2025年万博では火星である。これは先月14日に発表されたもので、幅29センチ、奥行き16センチ、高さ17.5センチで世界最大級の火星隕石のことである。
東京にある国立極地研究所が保管していて、2000年に日本の観測隊が南極で発見、広く一般公開されるのは万博が初めてだという。かつて火星に水が存在したことを示す粘土鉱物が含まれており、科学的に貴重な試料だ。
ただ、それ以外の総理見解としては全体として、人々の嗜好の多様化を挙げながら目玉は一つには絞れないとしつつ、どなたでも楽しめるものがあると無難な回答でまとめられている。
一方でパビリオンの内容に関しては展示内容の詳細を開示している海外参加国がこれまでのところ少なく、蓋を開けてみてのお楽しみとしているところが多いのも事実である。ようは行ってみないとわからないという面が多分にあるのだ。
この回答で「目玉」は何かと答えられるだろうか。強く行ってみたいと思えるだろうか。モヤモヤは消えない…
2025年に万博を開催する意義は?
そして、今回の万博を開催する「意義」については以下の回答だった。
『大阪・関西万博は、コロナ後、初の万博です。ロシアによるウクライナ侵略、緊迫する中東情勢など、世界が対立・分断し内向きになってしまいそうなときに、世界から日本に集まり、人類の未来を考える好機となるものです。
日本の魅力を世界に発信する機会ともなります。万博を契機に、開催地である大阪・夢洲だけでなく、各地に多くの人々が訪れる流れを生み出し、日本全体に万博の効果を波及させ、その意義を一層高めていきたいと思います。』
いのち輝く未来社会のデザインがテーマの大阪・関西万博だが、総理や政府の見解としては開催する意義は多くの人流を生み出し経済を含めた効果をもたらしたいということらしい。分断する世界において万博が人々の集う機会となり、日本の魅力も伝えながらひいては経済効果も生み出すという狙いで意義としては理解できる。
では、仮に人流が生み出せず期待された経済効果を生まないことになった場合はどうなのか。そう赤字となった場合の責任だ。
万博が「赤字」となった場合の責任は?
『博覧会の収支については、博覧会協会において赤字にならないよう、チケット販売の拡大等に取り組む方針と承知しています。経済産業大臣の下で、博覧会の健全な運営が確保されるよう、博覧会協会を指導・監督していくこととしております。』
要するに赤字にならないよう頑張るということで、その責任については言及されていない。
そもそも万博にはプレイヤーが多い。博覧会協会、政府(経産省、内閣府)、総理、大阪府市、財界それに維新と関わる主体が分散され、おのずと責任も見えにくい体制だ。
費用の高騰やパビリオン建設の遅れなどマイナスな情報が出るたびに、それぞれが責任をパスしていく様子も垣間見てきた。大イベントは終わってしまえばなんとなく開催して良かったという雰囲気が拡がり、目標や結果責任は忘れられていく傾向がある。開催後の検証は我々メディアの仕事なのだろう。
万博協会の名誉会長となった石破総理は年明けから様々な場面で万博について言及するようになり、ミャクミャクと絡んで意識的に機運醸成につとめている。前売り券の販売が振るわない中で当日券の販売にも踏み切ろうとしている。
まんじゅうの皮が厚くなっているのはわかるのだが果たしてあんこは詰まっているのだろうか。
(MBS東京報道部記者兼解説委員 大八木友之)
*万博関連の情報はPodcast「ナニワ記者永田町に猫パンチ!」でも展開中
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