創立は1900年!印刷だけじゃない「TOPPAN」の突破力 デジタル技術で事業を拡大...社長が見据える未来とは!?
MBSニュース / 2024年7月19日 10時49分
創立から120年余りが過ぎた去年、社名を「凸版印刷」から「TOPPAN」に変更し、同時にホールディングス化に踏み切った。いまや印刷にとどまらない広範囲な事業を手掛ける。その根源には、創立以来の開拓者スピリッツがあるという。情報コミュニケーション事業やエレクトロニクス事業などを担いグループの中核をなすTOPPANの齊藤昌典社長に業績を伸ばしてきた秘訣や女性活躍、来年に控えた大阪・関西万博への思い、見据える未来について話を聞いた。
カップ焼きそばの湯切りも 印刷技術を生かしたパッケージ開発
―――印刷というと雑誌やポスターをイメージしますが、それだけではないんですね?
食品や日用品の包装資材、パッケージを多く手掛けています。例えば、ネスレ日本さまのキットカットの外装材は元々プラスティック素材でしたが、それを脱プラ、環境配慮の観点で紙化されました。また、カップ焼きそばの湯切りですね。微妙な穴が開いていますが、内容物が流れ出てしまわないような形状を私たちの印刷テクノロジーを応用して作っています。
―――去年10月には社名を変更されましたね。
凸版印刷から去年10月に「印刷」を取って、同時に持ち株会社体制に移行してTOPPANホールディングスに変わりました。紙に執着をしていたら時代の流れの中で取り残されてしまうというようなこともありますし、印刷という文字が社名ついていますと一般的に紙を印刷するという事業のイメージが強いと思いますので、印刷という事業領域に特化しない社名に変更して取り組んでいこうということで決めました。
入社してから10年は仕事に没頭!激動の日々を過ごす
―――齊藤さんは子どもの頃、どんな少年だったのでしょうか?
体を動かすことが好きで、ずっと軟式野球をやっていました。結構、勉強の時以外はグラウンドにいました。中学校でも野球部に入っていましたし、高校では当時、ラグビーが流行っていて、ラグビーをやってみようかなと。私が会社に入って2、3年の時に会社で「ラグビー部を作るぞ」という声が上がって初期メンバーとして取り組みました。初めは人数も集まらなかったので違う会社と一緒にやらせていただいて、土曜日に江戸川の河原で練習をやっていました。練習の後のお酒も楽しみでした。
―――当時の凸版印刷に入社しようと思われたのは?
元々は「出版社や広告代理店がいいな」と思っていたんですが、企業研究をしたり先輩を訪問する中で、先輩たちが結構、生き生きと楽しく働いている話を聞いたりとか、「若い時から仕事を任せてくれる」というようなことを聞いたので、「この会社で働こう」と思って入社しました。入ってみると思った通り非常に皆さん楽しく働いていて。当時、本当に忙しかったので先輩から厳しく教えていただくこともありましたが、終わった後の懇親を含めて本当に仕事に没頭したといいますか、会社に入って10年ぐらいは激動の日々を過ごしました。
役員になるまで営業一筋 印刷の事業領域を広げるチャレンジを続ける
―――激動の最初の10年はどのような仕事だったのですか?
役員になるまでずっと営業をやっておりました。初めてのお客さまを含め色々な方々とお会いできてお話ができるので、毎日ワクワクしているみたいな感じでした。やはり自分の仕事が、お客さまから感謝されるというか、「ありがとう」と言っていただけるとさらにモチベーションが上がってくるみたいなところがありましたので、本当に営業をやっていてよかったなと思っています。
―――齊藤さんが手掛けてきた新規事業はどのようなものがありますか?
単純に印刷物だけを受注するのではなく、映像であったり、イベントであったり、制作物であったり、いろんな形で事業領域を広げて仕事の幅を広げることを営業時代に取り組みました。印刷需要がどんどん減っていく中で、その周辺の仕事が非常に貴重なものになると思っていました。印刷の仕事は色々な会社の色々な部署に入り込むことができるので、「この事業領域って、いま私どもにある機能を使うとできるんじゃないか」と考えてその事業領域にチャレンジしてお客さまから受託して…というような形で事業領域を広げていきました。
「会社は変化しないと進化しない」の精神はベンチャー企業時代のDNA
―――いままでで最大の決断というと?
大阪の事業本部長時代、1つのお客さまに品種の違う3つの事業部から違った営業が対応するようなことをしていたんですが、それを統合して事業部を超えて提案できる体制に舵を切りました。お客さまにとっては同じ凸版ですから、1つの部署で1人の営業担当が対応した方がより効率的だし、組織に横串を入れたことは、いまの仕事に非常につながっていると思っています。変化しないと進化しませんし、当社は最新の印刷技術を持ったベンチャー企業からスタートしていますので、そのDNAはしっかりと一人一人のマインドに受け継がれていると思っています。
―――ホールディングス化した去年、グループの中核企業の社長に就任しましたね。
本心からいうと「本当に私でいいのかな」というのが一番初めに思ったことです。でも、いままで組織に横串を刺すとか、事業部ごとにコミュニケーションをとって「新しい提案をお客さまに一緒にやろう」ということをやってきた経緯もありますので、全員をしっかりまとめていくことはできるかもしれないなと思いました。
―――話を伺っていると本当に忙しく日々を過ごしていると思うのですが、息抜きというか、ストレス発散法は?
少しでも空いている時間は体を動かしたいと思っていまして、ランニングをしたり、トレッキングをしたりしています。あとは最近、サウナにハマってしまいまして、空いている時間を見つけては「ととのい」に行かせていただくということで「サウナ党」になりつつあります。
社内ジョブチャレンジ制で“良い人材は部署間で取り合い”
―――TOPPANの強みはどのようなことでしょうか?
120年以上、2万社以上のお客さまと信頼をつなげて培ってきた顧客基盤、そして創業以来培ってきた印刷テクノロジーをベースにした技術力、これが最大の強みじゃないかなと思っています。例えば、平清盛が高野山にある金剛峯寺に奉納した両界大曼荼羅の想定色再生版の制作を手がけました。私どものデジタル技術を活用して、「当時はこんな色だった」というのを色々な学術の検証をしながら、当時の色に近づけていくというプロジェクトです。ちょっと長い期間がかかりましたが、取り組ませていただいていて、印刷テクノロジーを最大限に活用してできる1つの事業だったと思っています。
―――大阪・関西万博まで1年を切りましたが?
大阪・関西万博のテーマは「いのち輝く未来社会のデザイン」ですので、そういったことに応える意味で、私どものDX(デジタル・トランスフォーメーション)やSX(サステナブル・トランスフォーメーション)に資する商品やサービスを1人でも多くのみなさまに大阪・関西万博の中で体感をいただきたいと考えています。さらにはレガシーとして万博が終わった後でもお使いいただけるようなことができるといいなと思っています。
―――TOPPANは、これまでで最大幅の賃上げをされましたよね。
人財の確保が非常に重要だと思っています。そのためには働き方、働き甲斐をしっかりと考えるような、人事制度だけではなくて賃金で応えていくことも必要だと思っています。人事制度の取り組みの1つにジョブチャレンジ制度があります。外部の人財をたくさん募集していますが、内部にも人財がいるだろうということで、社内でも希望する社員を募集する仕組みを作りました。既存の部署も自分たちの部署があまり魅力的じゃないとどんどんジョブチャレンジで手を挙げられてしまいますので、会社全体が活性化して非常にいい方向に向かうんじゃないかなと思っています。
リーダーは「決意をもってともに進む道を示す」
―――女性活躍については?
男女雇用機会均等法が施行されてからさまざまな制度改革などの取り組みをしてきました。取り組みが始まった当時は、新入社員の1割くらいが女性社員でまだまだ少なかったんですが、最近では男女比が半分になってきましたので、労使で「働きがい推進委員会」というのを定期的に開いていまして、その中で忌憚ない意見を戦わせて、男女を問わず社員にとって有効な施策を実施することにも取り組んでいます。
―――思い描く社長としての夢は?
デジタルの活用で実現するDXと、パッケージの世界などで環境にやさしいものをしっかり作って届けるサステナブルな地球を作っていくというSXの領域ですね。会社の中身をしっかり変えていき、働く従業員やその家族のみなさんに「働き甲斐のある、働きやすい会社だな」と思ってもらえるような形にしていきたいというのが、いまの私の思いですね。
―――最後に、齊藤さんが考えるリーダーとは?
決意をもってともに進む道をしっかりと示す。そういったことを常に身をもって説明できるようにしたい。それがリーダーだと思っています。
■TOPPAN 1900年に凸版印刷として創立。大蔵省印刷局で紙幣の印刷指導をしていたイタリア人から技術を学んだ2人が、当時の先端技術「エルヘート凸版法」を用い、出資者3人とともに印刷会社を始める。1959年「エルヘート凸版法」で培った金属加工の技術を応用し、トランジスタラジオの主要部品の国産化に成功。1980年代にはICが埋め込まれたカードやレトルト食品などに使われる遮断性や保存性が高い機能性フィルムなどを開発。グループ連結売上高1兆6000億円、従業員5万人余り。
■齊藤昌典 1960年神奈川県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、1983年に入社。2015年取締役西日本事業本部関西情報コミュニケーション事業部長、2018年常務西日本事業本部副事業本部長などを経て、2023年TOPPAN社長就任。
※このインタビュー記事は、毎月第2日曜日のあさ5時30分から放送している『ザ・リーダー』をもとに再構成しました。『ザ・リーダー』は、毎回ひとりのリーダーに焦点をあて、その人間像をインタビューや映像で描きだすドキュメンタリー番組です。
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