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<負けはじめたテレビ局の復活には9年かかる>日本テレビ・土屋敏男の「下降を始めたスタープレイヤーは引き際を早くすべし」という名言

メディアゴン / 2015年6月27日 7時10分

齋藤祐子[神奈川県内公立劇場勤務]

* * *

日本テレビの番組制作者・土屋敏男のインタビューが興味深い(「R25」誌・6.25-7.22号)。今はゼネラル・プロデューサーの肩書で自分史をビデオ化して買ってもらう新事業「ライフビデオ」に携わっている。氏のいうところのテレビ局の復活は「負けはじめて9年かかる」という説は、こういう内容だ。

曰く、今まで当てていた制作者の番組がじりじり下降線をたどりはじめても、彼らは踏ん張ってしまう。なんとかしようとじたばたして3年。次の世代にバトンを渡しても、番組を作ったことのない次世代が力をつけるのに3年。ようやく当て始めるのに3年、だという。

だから、下降線をたどり始めたスタープレイヤーは、引き際を早くするべきだ、そうすれば復活までのサイクルが早くなるから、というのだ。

これはなかなかの名言である。テレビ局は全くの実力主義のように見えるが、そこは大企業。年功序列のシステムもしっかりあるだろうことは予想がつく。となると多くの企業のように、一度権限を握ってしまうと(幹部になると)よほどのことがなければ、年限(定年)までは仕事も地位も保証されてしまう。

当て続けなければならない現場の第一線を、いかにして現場感覚がなくなった人間が早急に退くか。また、権限を乱用して若手のセンスを邪魔しないようにするか、はどの業界でも大事な世代交代と継承のシステムに違いない。

「週刊ダイヤモンド」誌では創業101年目の宝塚歌劇団の特集をしている(6.27号)。

それによると、この強固なレパートリーシステムを持つ老舗の歌劇団が、年功序列とスターシステムを実に巧妙に併存させていることがわかる。つまり、トップスターという、文字通りその組の看板、顔を育てる一方で、実力がありながらもそのトップを支える脇ともいえる組長、副組長を配置する。

役割で言えば、周りを固める大番頭といったところだろうか。トップの下に位置はするが、当然のこととして若手のトップにも意見できるくらいの経験や実力、人徳と権限もある。宝塚歌劇団のヒエラルキー、ピラミッド構造は有名だが、トップスターは時分の華、かなり早いサイクルで入れ替わる場合もある。

しかし、それをしっかり脇から支えるナンバー2と3の2人が安定的に機能すれば、レパートリーシステムとロイヤリティの高いファンにも支えられて、トップの継承も危なげない、ということだろう。

このシステムをなんとか取り入れられないか、と考える組織は今後増えてくるに違いない。変化の速い時代に、かつて成績をあげた功績で幹部となった社員も、今の現場の肌感覚からすれば時代からどんどんずれていく。変化についていくのが精いっぱいだ。

当然、半歩先を行く企画を生み出すことはできない。その彼らをうまく活用しつつ、現場の権限は大胆に感度のいい人間に委譲し、できるだけ口をださない。そうやってまだよちよち歩きのスターを脇で支えながら、次なるヒットを生み出す土壌をつくる。

やがては脇を固める人間たちも、そのノウハウを継承して世代交代する、そういったシステムが必要なのだろう。年功序列とスターシステムを共存させるという、稀有なことに成功した宝塚歌劇団に学ぶことは多そうだ。

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