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<小説・暴言作家問題>暴言を利用して比較優位の立場を得るための作戦か?

メディアゴン / 2015年6月29日 6時50分

リチャード・ディック・ホークスビーク[古書店経営]

* * *

暴君Aは、近頃評判が悪い。国民はやりたくない戦争の出来る法律を民主主義の多数決で、ごり押ししようとしているからである。

暴君Aは、家柄がいいのと、見た目が悪くないことで最初は人気が出た。昔、隣国に誘拐された国民を迎えに行くために飛行機のタラップを上っていくところが、全国に生中継されて、なかなか芯のありそうな人物ではないかと、騙された国民も多かった。

この時、暴君Aは、まだ下っ端で、君臨していたのはライオンのようなたてがみをなびかせた暴君αであったが、暴君Aはタラップを一段一段上りながら誘拐された国民の身を案じていたのではなく、心の中で

 「次か、次の次か、俺がこの国のトップになるだろう」

と言っていたのである。結局、次は暴君αで、次の次も暴君αで、次の次の次に暴君Aはトップになった。そこで暴君Aは、なぜ暴君αが、あれほど人気があるのか考えた。

 「家柄は確実に俺の方が上だ、学歴は……エスカレーター式で上にすすむ学力しかなかったから、まあ、俺の負けか。ルックスはまあ、いい勝負でちょっと俺の方が勝っているだろう、暴君αにあって俺にないものがあるとしたら…それは…。」

暴君Aはこういう所には政治家的動物的勘があるので、…気づいた。「やんちゃ」だ。俺は家が厳しかったし、親に反抗する事など考えられなかったから「やんちゃ」がない。

それに対して暴君αは「X-Japanが好き」とか「プレスリーは心の友」とか「人生いろいろ」とか言って国民に「やんちゃ」ぶりをアピールしている。国民は大概バカだから、難しいことより「やんちゃ」が好きで、そういう暴君αを「偉い人なのに親しみやすい」とか言う曖昧な判断基準で理解したつもりになっている。

 「そうか、俺に足りないのは「やんちゃ」だ。」

でも・・。と、暴君Aは考える。なぜ国のトップに「やんちゃ」なんかが必要なのか。芸人じゃあるまいし。芸人で「やんちゃ」な人と言えば、なんと言っても横山やすしだ。けれども、いくら国民が「やんちゃ」好きでも、横山やすしを国のトップには選ばないだろう。

待てよ、ビートたけしはどうだろう。「やんちゃ」な上に映画でフランス人から賞をもらったり、時々政治の難しい話を茶化したしているじゃないか。もし、国のトップが直接選挙で選ばれることになったら、ビートたけしが選ばれるかも知れない。いやいや、ビートたけしは明治大学中退じゃないか。俺は成蹊大学卒業だ。学歴が違う。俺の勝ちだ。なんだ補佐官?

 「北野武さんは、東京芸術大学大学院映像研究科特別教授に就任するときに、芸大側から、大学を卒業して下さいと言われ明治大学に掛け合ったところ、機械工学科の特別卒業認定をもらいました」

そういうことは早く言え。明治と成蹊どっちが偏差値高いかすぐ調べなさい。そんな事より文部科学大臣は何をしているんだ。そういう、いい加減な卒業認定をしないよう私大協に補助金減らすぞ、と圧力掛けなさい。

しかし、これだとすると「やんちゃ」は必要だ、どうしよう。

 「あなた、これから銀座でランチなんで、お昼はコンビニで食べといてね」

灯台もと暗し、青い鳥は家にいる。発見しました。

Aッキーちゃん。そうか、Aッキーを使えばいいんだ。暴君αには、離婚して奥さんがいなかった。Aッキーは聖心女子大卒業で、僕は飲めないけどAッキーは酒豪。Aッキーに「やんちゃ」をやってもらおう。夫婦でセットなら怖くない、女性の支持も得られるぞ。頼むぞAッキー。

 「夜、あなたのダイナース使うから、夜露死苦」

そう、その調子。しかし、今日は、ずいぶん長いこと考えたなあ。考えすぎは体によくありませんよ。あれ、なんだかおなかが痛くなってきちゃったあ。痛い痛い痛い、僕ちゃん、もうぜぇ〜んぶ辞めたい。

でも、暴君Aは次の次の次の次の次の国のトップに返り咲いてしまった。もう「やんちゃ」封印。Aッキー出番なし。硬派で行きます。

軍事おたくに決戦で勝つのは当然だと思ってたもんね、目つき悪いし、しゃべり方が怖い。あれ人気でないもんね。でも、僕は、この決戦で学びました。「私はネトウヨ」と、心情右翼を心の友に生きるのです。誰が着せたのか戦闘モードのモバイルスーツ。

 「辺野古は辺野古」「派遣は派遣」「集団は集団」「自衛は自衛」「合法は合法」「読んでないものは読んでない」「カモメはカモメ」
 「俺、結構つっぱっちゃったかなあ、おじいちゃん」
 「おじいちゃんて、A級戦犯でしかもノーベル平和賞の候補だったこともあるんだよねえ。なんかかっこいいよ」
 「まあ、これくらいの振れ幅を飲み込むようじゃなくちゃ政治家なんて、やってらんないよねえ」

と、そこに声。

 「Aちゃん、永遠のゼロですよ」

そこにいたのは作家の暴言甲であった。

 「最近、人気が陰り気味だというあなた。僕が力になりましょう。毒は毒をもって制す作戦で行きましょう。僕がまず、どんどん、いわゆる暴言を吐きます。僕は暴言ではなく信念だと思っていますが、通常は暴言です」
 「南京で日本軍による『大虐殺』はなかった」
 「元社会党首・土井たか子は売国奴」
 「米兵が犯したレイプ犯罪よりも、沖縄県全体で沖縄人自身が起こしたレイプ犯罪の方が、はるかに率が高い」
 「沖縄の2つの新聞は潰さないといけない」

暴君Aは思う。いくら暴言甲とはいえ、この発言はひどすぎるんじゃないの。僕、国会で問い詰められたら、なんて言って答えればいいかわかんないよ。

ガースーに相談すればって、最近、僕、ガースーが嫌いなんだよ、僕のことみるとき軽蔑した目で見るんだもん。次の次とか狙ってるんじゃないの。でもガースーって、法政じゃん。集団就職でしょ。下手したら高卒だったらしいじゃん。「担ぐ神輿は軽い方がいい」って、言ってたって聞いたのよ。「馬鹿にしないでよね」

 「補佐官! 今、オネエ言葉になっちゃったことは絶対秘密よォ」
 「話がそれたから元に戻すけど、暴言甲は、何考えてるのかしら」

お答えします。と、暴言甲。

 「暴言甲がひどいことを言う、暴言甲に非難が集まる。暴君Aは暴言甲と親しいと認識されているので暴君Aにも非難が集まる。そこで暴君Aは、暴言甲を諫めるような感じも含めながら紋切り型答弁をする。すると、国民は思う。暴言甲なんかより、暴君Aの方がずっとまともじゃないの、比較優位で暴君Aの人気がまた出てくる」
 「今は比較優位で充分勝算がある時代ですよ、大体、比較の相手が存在しない」

ところで名人桂文楽は昔、五代目小さん(後の人間国宝)のことを心配して、こんなことを言っている。

 「小さんはね、あたしゃ心配なんですよ、テレビで俳優とかやって人気がある。剣道も段をとって忙しい、おまけに人気があるもんだから弟子がものすごく増えちゃった。人気で表舞台に出てきた人ってのは人気がなくなると何でもなくなっちまう。でもね、小さんはね、そうじゃねえ、芸がようがす」

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