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<新聞とテレビの表現の差>安保法案の衆院通過で麻生太郎事務所にきた2本の苦情電話

メディアゴン / 2015年7月22日 7時0分

両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]

* * *

安保法案が衆議院を通過した7月16日、ちょっとした記事が目に付きました。私はネットで見たのですが、元の記事は朝日新聞で、派閥の会合における麻生太郎副総理の挨拶を伝えています。

 「いま安全保障関連法案が上がりつつある。誠に喜ばしいことだと思っています。ちょっと聞くけど、『とんでもねえじゃねえか』って言って事務所で抗議の電話をもらった人、どれくらい来た? そんなもんか、数十件ね。普通だいたいね、めちゃめちゃ来るはずなんだ、これ、新聞の言う通りだったら。だって80%反対してるんだもん。もっと来なくちゃおかしい。俺のところだってめちゃめちゃ来るはず。いつもだったら。今度も秘書を並べて待った。でも、ほとんどかかってこない。これは間違いなく、日本がより安全なものになるための抑止力を確保するために、自信を持ってみんなこれだけやったんで。ぜひ、きちっとした法案を作り上げて日本の安全が確保されるように、みなさん方の自信と誇りを持ってやっていただけることをお願いしたい。」

この挨拶をテレビ朝日のカメラも取材していました。もちろん朝日新聞の記事は麻生副総理の挨拶全文を載せているわけではなく編集されています。そしてこのシーンを撮影したテレビ朝日の映像も編集されて「報道ステーション」で放映されました。以下のようにです。

 「ちょっとちなみに聞くけど、「とんでもねえじゃねえか」って言って事務所で抗議の電話をもらった人・・・どれくらい来た? (出席者の「120ぐらい」という声をテロップでフォロー、周囲から「多いね」などの声)ああ、そんなもんか、数十件ね。普通はだいたいね、めちゃめちゃ来るはずなんだ、これ、新聞の言う通りだったら。だって80%反対してるんだもん。もっと来なくちゃおかしい。俺のところだってめちゃめちゃ来るはず。いつもだったら。今度も秘書を並べて待ったら・・・・・・、2本! それくらいかかってこない。」

麻生副総理はまるで噺家の如くウケを取るしゃべりが得意の方です。いわゆる麻生節ですね。

始めからオチを想定してしゃべっています。出席者に「どれくらい来た?」とたずねたところで、電話が多くないことを話のフリにして落とすという計算が見えています。ところが、あまり気の利かない出席者が「120本ぐらい」、「数十本」などと言い、周りも口々に「多いね」「多いね」と言ってしまったのでせっかくのフリがややすべり気味に。

それでも副総理は強引に、「秘書を並べて待ったら 、2本!」と落としたのですが、副総理にとって重要なのは「2本!」の一言だったはず。この大事な「2本!」をなぜか新聞はカットしてしまったので、新聞上ではこれはオチのないふつうの挨拶として伝わりました。

一方、テレビの方はVサインのように指を突き出して「2本!」と落とした麻生副総理のドヤ顔を正面UPでおさえていましたから、会場大ウケとまではいかなかったもののなんとかオチはつきました。

同じ場面を伝えても新聞とテレビではまったく伝わるものが違うことがあります。当たり前ですが場の雰囲気などを伝えるのは圧倒的にテレビが優れていますね。麻生節を伝えるならテレビが一番です。

ところで、麻生事務所には2本しか電話がかかってこなかったとおっしゃっていたので、ためしに翌日電話した与太郎みたいな友人がおりました。

衆議院議員会館の代表にかけるとかわいい声の交換手の方がこう言ったそうです。

 「申し訳ありません、麻生事務所の内線は朝から話し中でして、お待ちいただくのはけっこうなのですがずーっとふさがっておりまして・・・」

こちらがほんとうのオチかもしれません。

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