<方法論でノンフィクションは蘇る>「ノンフィクションは視聴率を取れない」は方法論を忘れた結末
メディアゴン / 2015年8月30日 6時50分
高橋正嘉[TBS「時事放談」プロデューサー]
* * *
テレビの番組制作には「フリーの人間」が欠かせない。これはテレビの番組制作が始まって以来変わっていない仕組みだろう。映画関係者や新聞社の人間や報道カメラマン、代理店の人間など、さまざまな人間が入ってきて成立していった業界だからだ。
かつて、インパール作戦に従軍した記者もいた。今は100歳を越えているが元気である。流入してきた人間たちの雑多な経験や考え方がテレビを作っていったわけだ。
ここで出来上がった鉄則は実は「テレビは自前では作らない」ということだったかもしれない。テレビ局が自前で番組を作るほどの数の採用を考えたことがない。「群がる人々」を最初から数に入れていたのだ。
逆に言うとそんな伝統があったから優秀な人々が集まったともいえる。ある一定の比率で組織からはみ出る人はいつもいる。それは優秀さとは関係ない。そんな人が流入して来た。面白そうだ、と。
流入してきた人々の中に「ブレイン」と呼べる作家の一群があった。ノンフィクションの番組が、視聴率を争う時間帯に進出していった時、こうした作家の一群の果たした功績は大きい。1980年代、各局にノンフィクション枠が次々に出来ていったときに作家の一群も、各局に散って行き、成果を出していった。
その中の一人に「ラーメン戦争」を仕掛けた人がいる。それまでのノンフィクションには無い手法だった。テレビの相乗効果は大きい。テレビに映ることで人が集まり、映ることでカリスマ性を帯び、更においしいものができていく。だから更に人気が出てくる。そうしたテレビの特性をうまく利用した。
ノンフィクションにはさまざまな手法が持ち込まれてきた。「あるがまま」を撮るのではなく、「起こっていく」ことを撮る。仕掛けるのだ。
たぶんこれはノンフィクションの世界だったから面白かったのだろう。そこには生身の人間がいた。生身の人間が変わっていくさまは面白い。あるシチュエーションさえあれば、人間はがんばりもするしその結果変わって行ったりもする。人生がそこに見える。そこは真剣勝負だ。それが笑えるものになったりする。真剣であればあるほどそれが起こる。
この頃、ノンフィクション番組の中にはさまざまな手法が生まれた。今も残っているものも多い。この頃生まれた「はじめてのおつかい」にどれだけフリーの作家がかかわっていたかは分からないが。
この作家はノンフィクションを面白がるという視点から、報道の番組にも盛んに進出した。報道の側もそれを望んでいた。報道の側にもさまざまな手法が生まれた。一年に起こったことをただ見せるのではなくどう見せるのか、それがいつも問いの中にあった。
そして一週間で起こったことをどう見せるか、そう考えると、面白がれることが次から次に起こっていくから不思議だ。そして長寿番組も生まれた。
ノンフィクションの中にこうした手法を発揮させることは難しい。生身の人間が変わっていく、という視点を持ち続けることが難しいからだ。それが出来ないからやってもらう、やってもらうならプロのほうが良い、ということになり、またバラエティーの領域に戻っていった。
ノンフィクションでは変わっていく人間という視点を忘れて「やってもらう」という安直さだけが残るようになった。これでは面白くならない。
「ノンフィクションは視聴率も取れないジャンルだ」というのは方法論を忘れた結末のように思える。
本物は強い、それをどう描くか、その方法論との葛藤のように思える。方法論が新鮮である時、ノンフィクションは興味あるジャンルによみがえるはずだ。
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