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<「テスト企画」に「FNSドリームカバー歌謡祭」…>「めちゃイケ」らしからぬ素人のような問題点が目立った秋のSP

メディアゴン / 2015年10月13日 11時30分

高橋維新[弁護士]

* * *

2015年10月3日に放映されたフジテレビ「めちゃ×2イケてるッ!」は秋の改変期の2時間半スペシャルであった。前回の放映が8月29日であるため、1ヶ月以上休んでからのようやくの放送ということになる。

7月25日の「27時間テレビ」が終わってからの「めちゃイケ」は、休んでいるか「27時間テレビ」を焼き直したものを放送するかのどちらかであり、2ヶ月以上に渡り実質的に休止していたことになる。

さて、今回、久しぶりの完全新規回ということもあって、見る筆者としても力が入った。しかし、出来は褒められたものではなかった。

さて、中身を見ていこう。

今回の構成は3本立てである。一つ目の企画がスペシャルでは恒例の「テスト」、二つ目と三つ目は、いずれも「27時間テレビ」でやっていた「FNSドリームカバー歌謡祭」と「フジ縛霊」である。

まず、「テスト」についてである。

以前も書いているが、テスト企画は、「バカ」の珍解答という天然ボケを嗤うのがメインの部分である(http://mediagong.jp/?p=9005)。めちゃイケなので、生徒を集めるときにドッキリを仕掛けたり、珍解答をいじるときに色々なミニコントを入れてみたりと様々な小細工をしているが、一番楽しむべきはどう考えても珍解答である。よって、受験者には珍解答をしてくれそうな「天然の人」を集めなくてはならない。

「天然」には、おもしろい天然と、おもしろくない天然がいる。救いようのない話だが、おもしろくない天然というのは確実に存在する。

例えば、よゐこの濱口優や元・極楽とんぼの山本圭壱はおもしろい天然である。ところが、このテスト企画で成績が悪かった人たちは、この2人より「おもしろくない間違え方」をしていた人の方が多い。つまり、テスト企画自体、濱口に匹敵するほどのおもしろい天然が出てこなければ、おもしろくないのである。

しかし、珍解答は「素」なので、蓋を開けてみるまで本当にその人がおもしろい天然かどうかは分からない。事前にテストをしてみておもしろい「素」が出るかどうかを見るということは可能だろうが、これをやるとドッキリが仕掛けられなくなる。

もちろん、バカ呼ばわりされたくない本人が本番までに勉強したり、出演を嫌がったりしてしまう可能性もある。そのため、ぶっつけ本番という形じゃないとやりにくいだろう。

そうなると、やはり収録するまでおもしろくなるかどうかが分からなくなってしまう。おもしろいバカが出てこなければおもしろくならないので、おもしろい解答をしそうな人は複数、それもできるだけ多く用意しておく必要がある。

頭のいい人は、フリに使えるので入れてもいいが、1人でいい。あとは、全員バカで固めないとディレクターとしては怖いはずである。

ところが今回は、受験者に作家・国会議員・アナウンサー・気象予報士といった偏差値の高そうな人が多くいたため、「スキャンダルを抱えた女性有名人を集める」という表のテーマのみに気を取られ、バカ解答を楽しむという本来の趣旨が忘れられた印象がある。

頭の良さそうな人を増やすと、おもしろいバカが出現する可能性がそれだけ低くなってしまう。現に今回も、「濱口に匹敵するバカ」ならいたが、「濱口に匹敵するおもしろいバカ」は出てこなかった。

解答をイジる様子を見ていても、岡村も矢部も濱口も佐野アナも、(濱口ほどにはおもしろくないものを)無理しておもしろがっているように見えたので、筆者としてはどんどんと真顔になっていくだけだった。

 「スキャンダルを抱えた女性有名人を集める」

という統一的なテーマ設定自体に文句は言わない。そういうことをやると、それを元に笑いを生み出すことは可能である。

実際、MCの岡村は「ネットがザワザワしている」などと今回の人選をしきりにイジっており、またテスト問題や受験者の回答にも今回の人選に合わせたと思しきものが数多くあった。しかし、その種の笑いは、テスト企画においては副次的なものでしかない。

目先のおもしろそうなことに気を取られて、本命の「おもしろいバカのおもしろい珍解答」という部分がおろそかにされている。やっていることが完全に素人の生兵法である。

確かに、「めちゃイケ」では今まで散々テスト企画をやっているにもかかわらず、濱口に匹敵するほどおもしろいバカは現れていない。だから、珍解答の方向で笑いをとるのはもう諦めたのかもしれない。

人選や、それに即したコントで笑いをとる方向にシフトチェンジしたのかもしれない。ただ、その方向は今回の放送を見てもそんなにおもしろくないと断言できる。ゆえに、そんなシフトチェンジでテスト企画を延命させるぐらいなら、きっぱりとやめた方がいい。

あとはやはり、順位発表に尺を割き過ぎである。順位を発表するたびに受験者の顔を抜く「おもしろくない」映像を散々入れて、わざわざつまらない時間帯を増やしている。CMもこの間に何度も入る。視聴者は最下位が誰かに興味があるわけではないから、そこで煽りや引き伸ばしを入れられても白けるだけである。

視聴者は、ただ単におもしろい珍解答を見たいだけなのである。王者めちゃイケのスタッフがこの点を分かっていないはずはなかろう。もしかしたら、分かっていないのだろうか。こんな安い手法で尺を稼ぐのだったら、次回以降に回されたフジ縛霊の映像を今回出してしまえばよかった話である。

話に出てきたので、次は「フジ縛霊」について述べる。

これは、芸人をたくさん集めて一つのテーマでトークをするという普通の企画である。そういう意味では、「アメトーーク」と全体の作りは一緒である。そのテーマが、「フジテレビに対する恨み言」となっており、自分自身も笑いの対象として捧げるのはバラエティのフジらしい。

下手をすると、大しておもしろくない時の「アメトーーク」みたいに、個々のエピソードの紹介がただ繰り返されるだけで終わってしまい、芸人たちを一堂に集める意味がなくなる。

ただ今回のフジ縛霊はそれに止まらずに出ている芸人が盛んに「場外」で絡んでいたので、取り敢えずは安堵できた。今回放映されていない分がまだまだあるので、それを見ないと最終的な評価はできない。坂上忍の必要性は今のところよく分からないが。

次に「FNSドリームカバー歌謡祭」である。

本職の歌手に、コミックソングやかっこよくない歌を本気で歌ってもらうという企画である。笑いを生むズレがあるとすれば、「フザけた歌をカッコよく歌う」というものであって、「カッコいい歌をヘタクソに歌う」という「歌へた」のちょうど対局にあるズレである。

このズレ自体、筆者はあまりおもしろくないものだと思っているが、この企画は27時間テレビでも反響が大きかったようなのでその点はとりあえず措いておく。

この点を措いても、言うべきことはある。

まず、今回、May.Jが歌っていたのは「嘆きのボイン」「”ヘーコキ”ましたね」「アホの坂田」の3曲だったが、どれもド直球のコミックソングである。そのため、May.Jがこれをくそまじめに歌っても、「ウケ狙い」感がどうしても消えない。

冒頭で紹介された吉幾三の「DREAM」のように、ど真ん中のコミックソングではなく、ただ単にカッコ悪い歌、歌詞がスベっている歌、作り手は笑いを志向したわけではないのに笑える歌などを混ぜた方が良かったのではないかと思われる。

次に、提供されるズレが前記の「フザけた歌をカッコよく歌う」一本であるため、飽きが早い。May.Jの歌い方もずっと同じであるため、一曲を聞き終わらないうちに飽きる。

なんというか、素人がカラオケで歌手のモノマネをする場合と似ている。最初の内はウケても、ずっと歌い方(=モノマネ)が一緒なのですぐに飽きられるのである。ここでも、「発想が素人的」というテストと同じ問題点が出ている。

もっと一曲一曲の尺は短くすべきであろう。長くやるなら、May.Jは歌い方を途中で変えていくべきである(歌手のMay.Jの自由に任せてもおもしろくはしてくれないと思うので、具体的にどうやって変えていくかを考えるのはスタッフの役目である)。そして、何曲もやるなら(27時間テレビの本番のように)歌い手は変えるべきである。

May.Jは告知もしていたが、そのへんの事情のために他の歌手を使えなかったのだとしたら本末転倒である。

以上のように今回は「めちゃイケ」らしからぬ素人のような問題点が目立ったスペシャルであった。

筆者も別にテレビを作るプロではないので、ここに書いたこともあくまで素人の意見である。筆者は、別に「めちゃイケ」のみならずどんなテレビ番組を見るときも一緒であるが、単なる一視聴者として見た感想を述べているに過ぎない。的外れなことを言っているなら、一視聴者の妄言として無視してくれればよい。

プロならば、的を射た批判には耳を傾けねばならない。そしてプロは、

 「そんなに言うならお前がやってみろ」

という反論はしてはいけない。素人は、自分にできないからこそわざわざお金を払ってプロに頼んでいるのである。

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