<漫画の実写化の難しさ>実写ドラマ「デスノート」の中途半端さ
メディアゴン / 2015年10月8日 11時30分
鈴木康太[俳優]
* * *
2015年7月クールで毎週日曜日22時30分から放送されていた日本テレビ「日曜ドラマ・デスノート」が9月13日放送分で最終回を迎えた。
最近ドラマや映画では、人気コミックを原作とした実写化作品が多くなっている。「デスノート」も週刊少年ジャンプで連載され、社会現象にまでなった「DEATH NOTE」(原作・大場つぐみ/作画・小畑健)が原作のドラマだ。
「名前を書くと、名前を書かれた人間は死ぬ」という死神のノートを巡り、ノートを使って犯罪者を裁き、悪のない社会を作ろうとする主人公・夜神月とその思想を否定し、殺戮犯として捕まえようとする世界的名探偵Lとの壮絶な心理バトルが魅力の作品だ。
こういった「コミックの実写化ドラマ」で起こることは、1クールの時間制限や話の実現性、映像作品の独自性を考慮した「物語の改変」であり、筆者が毎回一番気がかりになる部分である。人気コミックの実写化を魅力的にするためには、思い切った独創性を取り入れる必要があるように思う。
この「実写ドラマ版デスノート」も
「原作コミックとは違ったストーリーと結末になります」
が謳い文句で、その点は非常に楽しみにしていた。しかし、最終回まで見終わった率直な感想は、全体的に中途半端、ということだった。
原作では、超天才的な頭脳を持ち、幸せで裕福な高校生である夜神月を、ドラマ版では、アイドル好きの平凡な大学生へと変更している。最後にこの設定変更が効いてくる話になるかと思いきや、全く生かされないままラストを迎えてしまった。ストーリーも原作の場面をただ組み替えたような内容で、新しさは感じなかった。
この「原作に添わせる部分とオリジナル部分」のアンバランスさが、どこにも振り切っていない、中途半端さを感じた原因であるだろう。
いっそ思い切って、主人公を夜神月ではなく別人にして、「どこにでもいそうな男の子がデスノートを持ったら?」というパラレルワールド設定の方がドラマの独創性を引き出すことができたのではないだろうか。
主人公を実写化せず、原作の雰囲気を上手く取り入れた、映画「クローズZERO」シリーズのような楽しみ方の広がりが、きっと「実写ドラマ版デスノート」でもできたはずである。
誰も漫画の完璧な再現を望んでいるわけではない。新しい刺激を待っているのだ。そこに中途半端さは不要だ。人気タイトルに頼るのもいいが、毎週テレビに噛り付いて見られるような刺激のあるドラマがたくさん増えていってくれることを一視聴者として願っている。
(藤本義一・市川森一記念「東京作家大学」テレビ評優秀作品)
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