<国宝「納涼図屏風」こそラグジュアリー>ブランド品とは違う「素朴でシンプル」なラグジュアリー
メディアゴン / 2015年10月14日 11時30分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
2015年10月10日から、六本木のサントリー美術館で、久隅守景展が始まる。国宝「納涼図屏風」が出品される。何度か実物を見たことがあるが、実に味わい深い名品だ。
「納涼図屏風」でだんらんする親子の姿もいいが、ひょうたんのつるがくるくるしているところとか、月がぼんやりと見えているのもいい。余白が大胆に構図されているのもいい。ぜひ会期中に実物を見たい。
ところで、「納涼図屏風」を見ると、「ラグジュアリー」だなあと思う。
風通しのいい、広々とした庭で、ゆっくりと寝転がる。そんな時間を持つことができたら、本当に贅沢で、素敵で、心の奥底からこみ上げてくるような歓びを感じることができるだろう。
きらびやかなモノや、贅沢な設いがラグジュアリーなのではない。少なくとも、現代においては違うのではないか。ラグジュアリーは、もっと素朴で、シンプルな時間の中にある。「納涼図屏風」を、ラグジュアリーの一つの原風景として見ると、味わい深い。
そもそも、月見をするために適した設いは簡単なようでいて、現代では得難い。見通しのよい空間で、風が通り過ぎ、虫の音が聞こえてくる。そんな、かつては当たり前にあった情景が、大都会では不可能に近い。月見が廃れるのも、時代の流れだ。
マシュマロが一袋あれば、焚き火をして、マシュマロを小枝にさして、火であぶってやわらかく溶けたところをふうふうしながら食べれば、もう十分にラグジュアリーだ。しかし、現代では、焚き火をすること自体が難しい。思う存分焚き火ができる場所など、どこにあるというのか。
緑豊かなすてきな光景があれば、それこそ、安いウィスキーの小瓶を一つもって、ふらふら歩いていけば、十分にラグジュアリーである。そこに何本かビーフジャーキーがあったりしたらもう最高である。喉がかわいたら、せせらぎの水を飲める、みたいなことがあったら何も言うことはない。
「納涼図屏風」のような絵が描かれ、それが国宝に指定されるということは、日本人は何が生きる時間を豊かにするかということを本来は知っているということだと思う。
ブランド品の「ラグジュアリー」とは違う、生きるという時間に寄り添った持続可能なスタイルがそこにある。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
(茂木健一郎)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
箱崎みどりアナウンサーおすすめ!GW展覧会 ~美術館が動物園に? 今日、観に行きたい展覧会3選
ニッポン放送 NEWS ONLINE / 2024年4月29日 12時55分
-
仲間由紀恵、皇室の名品をひも解く「貴重な経験でした」
マイナビニュース / 2024年4月23日 17時0分
-
ルックスにもこだわりを。ソロキャンで使える“焚き火ギア”9選【趣味の傑作ギア買い物リスト】
&GP / 2024年4月21日 20時0分
-
国宝「唐獅子図屏風」の高精細複製品が国立博物館で公開 -文化財活用センターとキヤノンが制作
マイナビニュース / 2024年4月19日 19時41分
-
『大吉原展』炎上とキャンセルカルチャー
ニューズウィーク日本版 / 2024年4月12日 14時48分
ランキング
-
1元天才子役・黒田勇樹、激変した42歳の姿「こうなって…」ドラマ美少年役から30年超、意味深投稿も
スポーツ報知 / 2024年5月8日 15時30分
-
2仲村トオル 58歳の姿に衝撃広がる「えーっ!」「信じられん」「すっかり…」「めちゃ色気やば」
スポーツ報知 / 2024年5月8日 20時40分
-
3《真相スクープ》氷川きよしが事務所退所&活動再開 “独立金”3億円を払ってでも再出発したかった強い思い
NEWSポストセブン / 2024年5月9日 7時15分
-
4稲垣吾郎 運命を変えたのは“SMAPメンバー” 「グループは解散していますけど、すごいこと」
スポニチアネックス / 2024年5月8日 21時39分
-
5元インデペンデンスデイ内藤正浩、芸人引退へ 相方・久保田剛史さん急逝から1年「2人の楽しさには敵わず…」
ORICON NEWS / 2024年5月8日 19時19分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください