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<通常ニュースと短いニュースは何が違うの?>NHK「首都圏ネットワーク」にある「短く伝えるニュース」の謎

メディアゴン / 2015年10月22日 8時0分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

筆者はバラエティを中心に活動する放送作家である、NHKのニュース番組「首都圏ネットワーク」(月〜金6時10分から7時)のファンである。この番組で良いのは「ストップ詐欺被害 私はだまされない」のコーナーであると考えている。

「おばあちゃんには絶対好かれるだろうなあ」と思わざるをえない「平和なルックス」の橋本菜穂子アナウンサーがフリップを一枚使って、呼びかけるように「こういう電話はぜったい詐欺だから、気をつけて下さい」と毎日呼びかける。

しかも毎日、違う詐欺電話の形態を伝える。よくネタが続くものだと、毎日見ている筆者が感心してしまうほどだ。

放送が毎日あるテレビ番組では「意味のあることを毎日続けること」が大切だと制作者として改めて思う。「意味があって、毎日続ける」に価値があるのであって、ダメな番組がスケベ心で視聴率を取ろうとして「意味のない占いを毎日続ける」のとは正反対の手法である。

伝えるアナウンサーの名前も「橋本菜穂子(はしもと・なおこ)」だ。幅広い世代に受け入れられそうな安定感のある名前であるところがまた良い。玲奈とか里沙でも、「亜理寿」みたいなキラキラネームでも、横文字の入った名前でもないところが良い。

別にそういう名前自体の善し悪しを言っているのではない。「ストップ詐欺被害 私はだまされない」のコーナー司会として「菜穂子(なおこ)」という名前が実に適している良い名前だと言いたいのである。

ところで、この橋本菜穂子アナウンサーが後半でメインのニュースが終わり、残りのニュースを伝えるときに必ず言うコメントがある。

 「続いて、短く、ニュースをお伝えします」

この中の「短く」は、誰に向かっていっている言葉なのだろう。通常は視聴者か、スタジオの他の出演者である。それ以外にはないとも言える。だが、その場合「短く」にはどういう意図が含まれているのだろう。

「短いから、トイレに行っちゃわないで見て下さい」ということか。民放なら視聴率が欲しいからあり得るが、NHKである。「短いから、すぐ終わるから、他の出演者の方も飽きずに見て下さいね」ということか。しかし、この番組はゲスト出演者がいることは滅多にない。

あるいは、「短いのでたいして重要なニュースではありませんよ」ということか。もちろん、それでは扱われるニュースに対して失礼である。

「続いて、短く、ニュースをお伝えします」の後には、リードがなく、それこそ、ひとネタ30秒ほどに編集されたトピックス風のニュースが3段積みくらいになって放送される。

リードというのはニュースの前振り。「長崎で自治体職員が○○しました」という風なコメントのことである。このリードは、次のニュースを見てもらえるかどうかにかかっている大事なコメントなので編集長が頭をひねってウンウン考える。

これが上手なニュース番組はみんなに見てもらえるはずだ。あざとすぎてもいけないし、平凡では編集長の才能が疑われる。「いい塩梅」につくるのは手練れの職人技だとも言える。

と、いうことから考えると、「リード付きのメイン格のニュース」が終わり、「メインのニュースでは放送しなかったけれど、ちょっと伝えておきたいニュース」を短く編集して紹介する、という意味であることがわかる。

確かに「続いて、ニュースです」では変だ。それまでもニュースをやっていたからである。「その他のニュースです」では、その他扱いされたニュースが気を悪くする。結局「短く」を入れた方がこれまでとは違うよと言う意味が入るのでコメントとして納まりが良い。

この「短く」を入れてニュースを切り替える手法を考えた人のアイデアに誰も異を唱えなかったからそのままになっているコメントなのであろう。

しかし、筆者としては「短く」伝えられてしまったニュースが可哀想な気がする。一生懸命取材した記者も可哀想な気がする。だから、これではどうだろう。

 「ニュースを続けます」

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