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<恥ずかしいことを真正面から言う魅力>TBS「おかしの家」はテレビ屋には作れないドラマ

メディアゴン / 2015年11月5日 11時30分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

筆者がTBSドラマ「おかしの家」を見ようと思ったのは、日経新聞10月28日(夕刊)で演出の石井裕也の記事を見たからである。

石井監督は32歳で、まだ若いが様々な賞を獲っている監督だそうだが、知らなかった。それ以外に記事には気になるところが2箇所あった。まず、経歴。

埼玉県で1983年に生まれ大阪芸大に入学した。大阪まで行かずとも、関東には日大芸術学部もあるし、今は大学になった横浜映画専門学校もある。両方とも優れた制作者を輩出している実績のある学校だ。関東人の石井監督がそういった学校へは行かず、なぜ関西ベタベタの大阪芸大に行ったのだろうか。

それから次のような発言だ。

 「映画の世界はハードルが高くなり、閉じている。誰にでも見てもらえる可能性があることにテレビの価値を感じる」

テレビ側の世界にどっぷりつかっている筆者には、この発言が理解できない。一般的な認識は、逆だろうと思うからだ。

 「テレビの世界は志を失って、閉じている。誰にでも見てもらえる可能性があることに映画の価値を感じる」

と筆者なら言う。

「関東人の大阪芸大」「テレビの価値」2つの事柄から、この監督は「逆張りの人」ではないか、と思った。逆張りの人ならとてつもないドラマをつくっているかも知れない、見なくては!と思ったのである。

筆者が視聴したのは第2話であった。公式HPから引用した文章に、補足する

 太郎[オダギリジョー」らがたむろする駄菓子屋「さくらや」の裏口に三枝[勝地涼]が駆け込んでくる。三枝が慌てていた理由とは、昨夜、同級生の武田武蔵[藤原竜也]と再会し、店にやってくるというのだ。太郎と三枝は、IT会社の社長となり、年収一億円を超えている武蔵に、上から目線でバカにされると不安になる。(駄菓子屋の売り上げは月に4万円しかないが、おばあちゃん[八千草薫]を悲しませないために太郎が継いだ)そして武蔵が「さくらや」にやって来た…。

実際にこのドラマを見てビックリした。このドラマが正統な起承転結だったからである。

やって来た武蔵は太郎たちを見下すどころかこう言う。

 「本当に大切なものは何かを考えているお前たちは偉い」

おそらく、「本当に大切なものは何か」という「直球ど真ん中」が、このドラマのテーマである。そう考えると、筆者の予想とは裏腹に、石井監督は逆張りどころか正統派ではないのか。

そして悪口ではなく・・・とお断りした上で、次のようにも評したい。

 「こういう恥ずかしいことを真正面から言われると、見ている側はドギマギしてしまう」

そういう意味では、テレビ屋には作れない新しいドラマであるように思う。

それからもう一点、石井監督とTBSにお願いがある。このドラマは一話完結型だが、縦を通すスジもあるので、すべて放送が終わったら。再編集して2時間の映画にしてほしい。

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