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<難しいステマの定義>「著者『自作を語る』」や「商品テストの優良結果」はステマ?

メディアゴン / 2015年11月1日 7時30分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

言論をなす世界の片隅にいる一人として、「広告ステマ」(ステルス・マーケティング)は、強欲資本主義が招くものであるということを考えてみたい。

ステルス・マーケティング(Stealth Marketing)とは、消費者に宣伝と気づかれないように宣伝行為をすることだと定義される。しかし、この定義だけで足りるのか。それを考えるのが本稿の目的である。

略称はステマ。アンダーカバー・マーケティング(Undercover Marketing)とも呼ばれる。

「墨衣の僧衣の下から銀鈍色の甲冑が覗いているようなものだ」と言えば平清盛の逸話を知っている人はわかりやすいだろうか。

上述の定義に沿ってみて行くと、昔から週刊誌や夕刊紙ではステマと判断されるものがあった。記者が体験して書いたような体裁の健康食品や観光地の記事。批判は当然あって、こう言う記事は、本文記事と活字を変え、冒頭に、小さな字で(PR)とつくようになった。

読んでから「だまされた」と気づく気持ちの痛手は大きかったが、これなどは注意して読めば分かる範囲であった。

ネット上では、誰もが自由に映画やテレビ評、書評を書けるようになった。これもステマと紛らわしいこともあるのが実態だ。ただし、評論は立派な文化的行為だからこれを安易にステマとは呼べない。

当該評論と作者著者・提供会社に利害関係が無いことが必要なのか。そうとばかりは言い切れまい。例えば、著者が「自作を語る」というような原稿を書いた時は、ステマだろうか?

テレビにもステマ的行為はある。情報番組などで芸能人が出演して番組宣伝をすることはどうか。これをステマと判断されるのは番組にとっては得ではないので、最近は「番宣です」と、はっきり言う対応を取ることが多くなった。これはこれで良い傾向だ。

この「番宣」をCM総量の規制に数えるかどうかの問題はあるが、良い傾向だ。ここから分かるのは広告であることがステルス(隠されている)と言うことが問題だという認識だ。

ドラマなどの旅館観光地のロケタイアップはどうか。業界には「アゴ・アシ・マクラ」という隠語があってこれはロケ先の旅館、観光協会などが「アゴ=飲み食い・アシ=旅費・マクラ=宿泊代」を全部負担してくれることを言う。この場合は、タイアップだとをはっきり表示することが望ましいだろう。

隠す方法は巧妙だ。政治家のお説拝聴を唯々諾々と垂れ流すニュース番組。ドラマの中でイケメン俳優が何気なく使っている時計やアクセサリー。セットのインテリア。これらがステマではないとは言い切れない。

「けなしてある評論/批判的な批評」は「ステマではない」かといえば、必ずしもそうではないだろう。褒めようがけなそうが作品の認知度は上がる。実際には購入していないのに購入したと偽って書くレビューは完全にステマだが、これを見抜くのはなかなか難しい。

筆者は家庭向け総合雑誌「暮しの手帖」の愛読者だが、ここで行われる商品テストはどうだろうか? 商品は編集部が自ら購入し、細心の注意を払っているこのテストは、勿論ステマではないが、このなかで「成績の良かった商品」には大きな宣伝効果があることは明らかだ。この手法を悪意をもって利用する人がいないとも限らない。

ミシュランガイドは覆面調査員が調べるというが、他に多くあるグルメ雑誌はどうだろう。ネット上のグルメ情報サイトからは掲載料月に3万円を取られていると、ある料理店主から聞いた。

色々と考えを進めてゆくと、ステマというものは「広告であることを隠してやっている宣伝行為のこと」ではあるが、おこには精神的な側面が大きいことが分かる。その陰に潜んでいるには「これで儲けてやろう」という強欲資本主義だ。

いづにれにせよ、ステマが広告と商品自体の価値を貶めるとんでもない詐欺的行為と言うことだけは確かだ。

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