<オリジナルドラマ・ネット配信の衝撃>Netflixはテレビ業界のビジネスモデルを解体する力を持っている
メディアゴン / 2015年11月8日 7時30分
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
映画やテレビドラマを、
1. 自己資本を投下して
2. 自前のスタッフで
作れるところは、日本にどれだけあるのだろうか。
1、2の両方に当てはまるのは松竹、東映、東宝、角川、日活などの大手映画会社。NHK、日テレ、TBS、フジテレビ、テレビ朝日、テレビ東京などの在京キー局といったところか。
1だけなら、エイベックス、吉本興業などのコンテンツホルダー。あるいは、スカパーやWOWWOWなどは、ここに分類されるだろう。
2だけなら、共同テレビ、テレビマンユニオンといった大手テレビ制作会社などがあるだろう。
なぜ、こんなことを考えたかというと、Netflixが日本に参入したからである。
Netflixは「映画やドラマをもっと自由に」というキャッチフレーズを掲げているように、映画とドラマを配信することで勝負しようとしている。「バラエティもドキュメンタリーも」とは言っているが、それは表面上だけのように思う。主戦場は確実に映画やドラマだろう。
特に日本の場合は、無料(タダ)で見られるバラエティ番組が地上波テレビにあふれかえっている。賛否両論あるにせよ、それなりに楽しめるものもある。もちろんドキュメンタリーだってテレビをつければ無料で見れる。それ以上に、ドキュメンタリーは金を稼げるコンテンツにはなりにくい。そんなことはすべてお見通しのはずだ。
これまでの動画配信との大きな違いは、Netflixのいう「映画やドラマ」が、アメリカで配信しているものをそのまま流すだけではない、ということだ。日本オリジナルのドラマを作り、それを配信するわけだ。
つまり、上記分類で言えばNetflixは、当然1に相当する。しかも日本のそれとは比べものにならない巨額資本を持っている1である。
簡単に言うと「金は必要なだけ出すから、稼げるドラマをつくってくれ」という立場だ。しかも「内容には口は出さない」らしい。マーケティングのデータは提供するが、それで作れとは言わない、クリエイターを信用するとしているらしい。
これは、これまで様々に口を出されて辛酸をなめてきたドラマクリエイターにとっては魅力的なことだ。
ただし、映画会社やテレビ会社はシネコンやテレビ放送という媒体を持っているから、むやみに、Netflixには売れない。既存媒体で儲けるビジネスモデルに力があった10年ほど前なら、絶対にNetflixに売ろうとはしなかっただろう。
自分たちだけで儲けられるのか、Netflixにも売った方が儲けられるのか、儲けの額を天秤に掛けて決めることになりそうだ。
儲けの額を天秤にかけたとき、大事になるのが出す順番だ。通常コンテンツは「有料」から→「無料」の順で流通させられる。映画の場合は、金を取って映画を見せて、金を取ってDVDを売って、金を取ってレンタルビデオにして、最後に無料のテレビ放送になる。
その逆は通常あり得ない。最初に金を取られた人が怒るからだ。でも、これは地上波放送しかなかった時のビジネスモデルなのではないか。
従来の法則に従えば、Netflixはそもそも定額の有料ストリーミングなのだから、提供するのは最初「有料の段階」だけだ。しかし、地上波のタダ放送でも、見逃したヒットドラマをNetflixで見られるとしたら、金を出す視聴者も出てくる。あるいは、封切られた映画をちょっと待って安く見られるなら金は出すだろう。
つまり、Netflixはこれまで築かれてきたビジネスモデルを逆走したり、解体する力を持っていることが分かる。
有料と言うことで言えば、ケーブルテレビは日本で、有料放送で儲けるビジネスモデルとしては根付かなかった。タダの地上波のほうがずっとおもしろかったからだ。
そうなると、SVOD(Subscription Video On Demand=定額で好きなときにいつでも見られる方式)のNetflixにも金は出さないということも言えるかも知れない。
しかし、Netflixの出自はレンタルビデオ屋である。最初はモノで貸していたものを、次は郵送で、次はダウンロードで、次はストリーミングでと発展してきた。
便利なレンタルビデオ屋だと思えば、月に1000円ほどになるであろう定額の出費はしても良いと思うのではないか。しかも見られるのは日本オリジナルのドラマである。Netflixは有料ケーブルテレビの末裔ではないのである。ネットで映像コンテンツを視聴するライフスタイルも既にきっちり根付いている。
Netflixのドラマ販売が収益の柱の一つになるとすると、日本のテレビ界はこんな展開も考えられる。NHKや民放はドラマの放送をすべてBSに集中する、スポーツ中継もBSに集める、ということだ。そうなると、生放送で定時で見たいのはニュースだけになってしまう。
「ウチの地上波はニュース専門局になります」と、そう一番先に宣言して、始めた局だけが生き残るのではないか。
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