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<笑えないバラエティ?>アメトーーク「侍ジャパン応援芸人」は分かり易すいタイアップ企画

メディアゴン / 2015年11月7日 7時30分

高橋維新[弁護士]

* * *

2015年11月6日放映のテレビ朝日「アメトーーク」のテーマは「世界野球プレミア12 侍ジャパン応援芸人」である。

侍ジャパンは、言わずと知れた野球の日本代表である。なぜこの時期に「侍ジャパン応援芸人」かと言えば、「世界野球WBSCプレミア12」という野球の世界大会が開催中だからであろう。

そして、その試合の多くをテレビ朝日で放映するからである。そういうことである。これほどわかりやすいタイアップもなかろう。

野球というスポーツは、日本では人気が高い。非常に高い。ところが最近はサッカーなど、他の球技スポーツも相当に台頭してきて相対的に人気は落ちてきている感は否めない。野球をバカにする言説もネット上には氾濫している。

 「一部の国でしか流行っていないマイナースポーツ」
 「オリンピックの競技からも外された」
 「WBCもイマイチ盛り上がっていないし、日本の選手でさえ出場を辞退する人がいる」
 「サッカーやバスケと比べると点が入るまでの過程が複雑すぎて、初見だと何をやっているかがよく分からない」
 「WBCが盛り上がっていないのに世界野球プレミア12が盛り上がるわけがない」
 「興行偏重の大会運営・マッチメイクなら一流選手も集まりにくい」

などなどである。

バラエティ番組で「世界野球プレミア12」をテーマに笑いをとるなら、このような言説を用いて世界野球を盛んにバカにして揶揄しなければならない。

ところが、今回の「アメトーーク」はタイアップ企画なのでそういうことはできない。世界野球を「おもしろい」と持ち上げなければならない。この時点で、大したことのない出来になることは容易に想像できる。そして、実際のオンエアもこの想像から一歩も外に出なかった。

芸人たちは世界野球を「おもしろい!」と持ち上げ、出場している国や選手のすごい点を褒めちぎる。そこには、笑いはない。何かを褒めても笑いは生まれないのである。

ただ、芸人たちは世界野球そのものよりもむしろ侍ジャパンの選手個人個人のすごいところの紹介に力点を置いているように見えた。

「世界野球がおもしろい」という言説がどっちらけでしかないことを芸人やスタッフたちも分かっていたからこそ、「侍ジャパン応援芸人」という少しズラしたテーマ設定にしたのかもしれない。そうだとすれば、芸人とスタッフたちが、自らの矜持でささやかな抵抗を見せたということになる。

笑えるところも、皆無だったわけではない。主に笑いを生み出していたのは、芸人や個々の選手のおもしろい言動がバカにされていた時である。

芸人・かみじょうたけしの高校野球マニアっぷりがバカにされたり、マエケンの絵のヘタさがバカにされたりといった具合である。

野球選手も、体育会系の世界に生きる人間なので「イジられる」ことにはかなり寛容である。そのため、素材としては最高なのだが、芸人たちのイジリ具合はかなり控え目だった印象である。これなら、インターネット上のキツいイジリ方の方がおもしろいと言われても仕方がない。

一度「野球がなんだかわからない芸人」みたいな企画をやって、トコトンまで野球をこき下ろしてみるのも一つの手だとは思う。もちろん、これは熱烈なファンがいるテーマであれば、野球でなくてもいいのだが。

さて、これまで筆者はバラエティ番組評論を書く時に、常に、出演者を五段階評価で採点をしてきた。しかし、そういった主観の数値化について、編集部から記載を止められたので今回は採点はせず、ざっくりとした感想だけを書こうと思う。

芸人たちで目立ったのは、やはり「バカにしてください」オーラをきちんと出せた芸人である。博多華丸(博多華丸・大吉)はホークスが、徳井義美(チュートリアル)はカープが、かみじょうたけしは前述の通り高校野球が好きすぎる言動をきっちりできており、そのマニアっぷり・変人っぷりが笑いを生み出していた。

クイズコーナーで2問続けてホークスの「松田宣浩」が回答になる問題を出して偏執的な愛を強調した華丸、侍ジャパンの小久保監督の話をしている時にカープの小窪の話をしだして止められた徳井は、芸人の面目躍如と言っていいだろう。

各選手の高校時代の話しかしていなかったかみじょうもそうである。渡部建(アンジャッシュ)は、かみじょうと同じく高校野球好きのはずであるが、全体のスポークスマンに徹していた結果あまり目立った活躍はできていなかった。

出川は、華丸や徳井のような変人っぷりは出ていなかったが、普通にしゃべるだけでバカにされるのでまあいつも通りである。

伊達みきお(サンドウィッチマン)に関して言えば、体型がバカにされてはいたが、笑いにつながっていたのはそのシーンだけである。そのシーンも、笑いを生み出せたのは伊達の体型を江夏に例えた華丸の手柄である。

ザブングルの松尾と女性ゲストの生駒はほとんど何もできていなかった。生駒の位置には野球に疎そうな実力派芸人を置いて色々と喧嘩をさせてみても面白かったとは思う。

その延長線上にあるのが、前述した「野球がなんだかわからない芸人」である。

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