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<弱いものを笑うな>強い者を揶揄してこそコメディアン「笑い」のプライドだ

メディアゴン / 2015年11月11日 15時0分

茂木健一郎[脳科学者]

* * *

「笑い」の効用はいろいろあるが、コメディアンのプライドの一つは、権力や強い者、威張っている人たちを揶揄してその弱さを露呈させることと理解している。Daily ShowでTrevor Noahがやっていることは、まさにそれである。

弱い立場にいる人、虐げられている人、苦しい人を揶揄する笑いも、理論的には存在するのかもしれないが、そのようなことは、プライドのあるコメディアンがやるべきことではないと理解している。そのような笑いは、いじめに近い。

民主主義は、権力に対する風刺や揶揄(しかも、それが、笑いというポジティヴな空気のもとに行われる)がないと、有効に機能しない。だからこそ、民主主義が困る権力側は、自分たちに対する揶揄や風刺を抑圧しようとする。

弱い者、虐げられている者を笑う者は、権力の補完者にすぎない。もっとも、弱い者、虐げられている者を笑うことで、権力に対する自分の位置を確認し、自分が権力側にいるという安心感を得るという効用はあるかもしれない。

しかしそれは、その人にとっての効用というだけで、社会全体の福利を向上させるものではない。プライドあるコメディアンはそんなことをしない。

すぐれた権力者は、古来、自らの近くに道化を置いて、権力にひれ伏すものたちが決して口にしない風刺や揶揄を言わせたが(シェークスピアの戯曲にそのような場面がある)、そうすることが、自らの為政の欠点を認識し、より権力を安定させるために必要なことだと知っていたからである。

笑いは、強い者を揶揄してこそ価値があるのであって、弱い者を笑うのはいじめでしかないという「常識」は、もっと認知され、共有されて良いことだと思う。

(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)



(茂木健一郎)

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