トランプ氏「イスラム教徒入国禁止」政策にみる人間の本質に根ざした脆弱性
メディアゴン / 2015年12月29日 7時20分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
以前「The Daily Show」で、トランプ氏の「イスラム教徒入国禁止」の政策を茶化していて、レポーターが「賛成だよ。」「えっ、なんだって?」「イスラム教徒を守るためには、このわけのわからない候補がいる国に入らない方がいい」「あっ、そうか」みたいなやり取りをしていた。
いちばん受けていたのは、次の瞬間。レポーターが、
「ひとつのカテゴリーの人を、個人差とか関係なく、一緒くたにするトランプ氏のすばらしい姿勢を学んで」
と言ってから、
「ぼくも、すべての共和党員を、ホワイトハウスから締め出すことに賛成だね」
と言って、観客の大喝采を浴びていたのだ。
「イスラム教徒はみんなこうだ」とか、「イスラム教徒は、国から締め出せ」とか、そういう発言は明らかに乱暴だし、認知的な失敗だ。日本でもアメリカでも、あるいは他の国でも、その類の発言が後を絶たないのは、つまりそれが人間の本質に根ざした脆弱性だからだろう。
人間の根本的な感情のひとつは、「不安」や「恐怖」だと思う。
不安や恐怖にとりつかれた時、人々の認知能力は曇る。有名なのは「mortality salience」(死の顕現化)だが、一般に、不安や恐怖にかられた人は、細かい差異を見なくなってしまう。
テロに対して、不安や恐怖を感じるのは仕方がない。しかし、そこで、あるカテゴリーの人たちを一緒くたにすることは認知的失敗であるというメタ認知が生じないのは、つまり、その人たちの能力の全般的な低さの指標であろう。
トランプ氏のような政治家、そしてそれを支持する人たちの問題がやっかいなのは、結局、不安や恐怖のような根本的な感情と、それに対するメタ認知の能力の高さという、能力の高低の問題と結びついてしまうからだろう。
知性に関する劣等感もまた不安や恐怖の源泉になるから、問題は混線する。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
(茂木健一郎)
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