<ドブ芸人ビートたけしと明石家さんま>芸能界はキラキラ輝いて見える「ドブには見えないドブ」
メディアゴン / 2016年1月3日 7時40分
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
1月2日の 「さんまのまんま30周年スペシャル」(フジテレビ系)を見た。ビートたけしがゲストに来るからである。
田中将大選手を脇に置いたまま、たけしさんとさんまさんは2人とも、所詮「ドブ芸人だった」と言う話で盛り上がった。
「下積みのドブの中からもがき苦しんで這い上がった芸人じゃないのか」
というのである。
筆者はその「ドブから這い上がってきた」直後から、放送作家として2人の番組に関わってきた。まだドブの匂いがぷんぷんする芸人にくっついて仕事をしてきた、いわば「ドブ板作家」である。
ドブ芸人だった彼等が今も第一線なのはなぜか。
2人は口を揃えて「幸運だった」という。2人の目から見れば今の漫才師やコント芸人は「自分たちが若い頃と比べて、みな腕を持っており、ネタも面白い。だが、そのレベルに沢山の人が並んでいるために目立たない」「図抜けることがない」「自分たちは他に新しい人がいなかったので目立つことが出来た」「幸運だった」と口を揃える。
だが一方で「若い人のネタを見ているとこれもやった、あれも俺たちがやったと思う」と口にする。
「幸運だった」ことも「自分たちが新らしい世界を切り開いたという自負」も両方本音である、と筆者は思う。おまけに2人が一世を風靡していく時代にはテレビに湯水にようにカネがあった。
「時代が味方した」
芸人がドブから這い上がってくると言うシステムは今も同じである。このドブからは毎年新しい芸人が生まれるが一瞬きらめいても、ほとんどがまたドブへと帰って行く。あるいは、ドブからでて清流に行くことを選ぶ。
たけしさんとさんまさんはドブから這い上がってきて以来、誰にも邪魔されずに芸能界の最前線にいることが出来るたのはなぜなのだろうか。
それは、彼等がドブから上がってきて住み着いた芸能界というのが「キラキラ輝いているようには見えるがドブには見えないドブ」だったからではないのか。
彼等はドブからでてまたスパンコールで化粧されたドブで暮らすことになっただけなのである。売れ続けている芸能人はつまり、ドブに住むことをいとわない、あるいはドブが体質に合う人々なのである。
このドブは住むのに余り適したところではないのは自明である。だからこそ芸能人は芸能人なのである。
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