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<風俗嬢は差別的な職業ではない?>自分の娘に「風俗で働く」と言われたらアナタは許せるか?

メディアゴン / 2016年1月30日 7時30分

<風俗嬢は差別的な職業ではない?>自分の娘に「風俗で働く」と言われたらアナタは許せるか?

メディアゴン編集部

* * *

「職業に貴賎はない」といいながら、親としては子供には決して選択してほしくない職業があるものだ。その最たるものはヘルス、ソープランド、AVなどのいわゆる「風俗産業」だろう。

その過激な仕事内容はもちろん、ドラックや暴力が横行し犯罪の温床だと噂されるなど、世間のイメージは最悪だ。病気の危険、金銭感覚のマヒなどにより一般社会への復帰は困難、「一度足を踏み入れれば人生は終わる」といわれるほど、ブラックな職種と考えられている。

しかし、それでも風俗業で働く女性は後を絶たない。現在、30万人近い女性が風俗産業に従事しているといわれ、仕送りのない大学生やシングルマザーなど、貧困女性を中心に、さまざまな事情で厳しい生活を強いられている女性にとっての貴重な働き口となっている。

女性の多くは、周囲に決してバレないように細心の注意を払って働いている。たとえ豊かになっても、普段着はあえて激安店で購入し、派手な夜遊びなどは一切行わないという人も少なくない。親はもちろん、親友にさえ打ち明けない人がほとんどだ。

大半の親は、娘が「風俗で働きたい」といえば、間違いなく大反対するだろう。これは当然の反応だ。親として、娘の人生がめちゃくちゃになるようなリスクは、決して受け入れられるものではない。

その一方で自らの意思で、決して周囲に隠すことなく、親にも応援されて「風俗嬢」という職業を選択し、その経歴を隠すことなく幸せな結婚をしたという女性もいる。

昨年末に「ベッドの上から世界を変える」(麻布書院・2015)を上梓した神野いのり氏はそんな元風俗嬢の一人だ。同書では、「普通ではない風俗嬢」としての彼女の人生が赤裸々に語られている。

神野いのり氏は、サラリーマンの父と専業主婦の母という、ごく普通の家庭で風俗や不良とは無縁に育った。高校では生徒会副会長もつとめた真面目な彼女は、高校卒業と同時に当時の生徒会長と結婚。多くの祝福を受けて人生をスタートさせたという。

しかし、順風満帆に見える人生とは裏腹に、中学生の時に受けた「初恋の相手から性的暴」というトラウマを抱え続けている「影」も持っていた。

生徒会活動をするという真面目な生活の裏で、生活はすさみ、だれかれ構わず性交渉をし続けていたという。そして神野氏は、PTSD(心的外傷後ストレス障害)、解離性障害などの精神病と診断までされている。

この「生徒会の真面目な女子高生」と「性に乱れた女子高生」という極端な二面性こそ、神野氏が「風俗で働く」という決断への導線となってゆく。

周囲からは幸せそうに見えた結婚後も、複数の男性と関係を持ち続け、精神の病をさらに悪化させてゆく。その結果、夫も精神的に不安定となり、ストレスからギャンブルに手を出すようになる。やがて家計は火の車に。

そしてとうとう「生活費のために」と、風俗嬢への門を叩くことになる。

通常であれば、これは、一人の女性の「堕落」の物語であり、それほど珍しくはないだろう。少なくない風俗嬢に共通して当てはまるような事例なのかもしれない。しかし、神野氏が他と大きく異なるのは、風俗で働くことで、むしろ彼女の人生を大きく前向きに転換させた、とうことだ。

風俗で働くなかで、客である男性たちからさまざまな「本音」を聞くという経験と通して、これまで抱き続けた男性への敵意を消してゆく。それはやがて、長く患っていた精神の病からの解放へと繋がってゆく。

神野氏は、人々を追い詰めているのは「性(や風俗)は汚いもの、恥ずべきもの」という偏見、思い込みであると言う。「神様にも恥じない、誠実で清潔な仕事をして、風俗嬢のイメージを塗り替える」ことを自身の使命であると確信するに至ったという。

自分自身の過去について、両親、夫、夫の両親に打ち明け、風俗嬢としての仕事とその決意を伝え、離婚を申し出る。そして2日間に及ぶ話し合いを経て、家族が風俗嬢としての彼女を活動を応援することになる。

ファッションヘルス店でNo.1風俗嬢となった後は、その活動にも限界を感じたことから風俗嬢を辞め、現在「エクスタシークリエイター」という肩書きで講演・執筆などの活動を通じて自身のメッセージを伝えている。

風俗は、社会の必要悪といわれる職業である。需要があるから供給があるのだ。しかし、需要側の男性からの風俗嬢に対する偏見が強い、と神野氏は言う。

 「風俗は、決して差別的な職業ではない」

世の中には、さまざまな職業が存在する。しかし、彼女のように前向きで真摯に「風俗業」に打ち込み、信念を持って働いている人は、少ないのではないだろうか。

同書を読んでいて、過激な描写以上に、その前向きさ、ひたむきさには驚かされる。「こんな風俗嬢がいたんだな」と。大切なのは「どんな仕事か」という肩書きではなく「どのように働くのか」というマインドなのかもしれない。

風俗業をせざるを得ない状況におかれた貧困女性たちを囲む社会問題。これを肯定するわけではないが、むしろ、一度、性と性産業について真摯に考えるべきではないだろうか。

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