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<舞台「星屑の町」>「笑い」に行ったのに「泣けてくる」水谷龍二の作劇

メディアゴン / 2016年2月5日 7時20分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

下北沢・本多劇場で水谷龍二の作・演出になる芝居「星屑の町」のゲネプロを見た。

「笑いに行ったのに泣いてちゃアしょうがないなあ」とは思うけれど、見ているとなんだか自分の人生とかぶってきてしまって涙ぐんでしまう芝居なのである。

それは、舞台の上にいるムード歌謡コーラスグループ「山田修とハローナイツ」を演じる面々が自分と同じ60歳を越えた役者たちだからだろうか。

役での年齢も、実年齢の設定である。そのせいか、大平サブローも、でんでんも、渡辺哲も実に肩に力の入らない芝居をしている。芝居を感じさせないと言ったら役者さんに失礼なのだろうか。

筆者は演じきる芝居より、こういう芝居のほうが好きだ。筆者は、センチメンタルな芝居を書くのが得意なくせに、そのままセンチメンタルを見せるのは恥ずかしいので笑いでくるんでしまおうという水谷の作劇のすばらしさにこれまで何度も感心してきた。この「星屑の町」もまたその例に漏れない。

閉店した函館一の賑わいを誇ったキャバレー「海峡」。「海峡」は成功した居酒屋チェーンのオーナー社長に買い取られ、もうすぐ改装されることになっている。

海峡のステージを壊す前に、この社長が自分ひとりのために歌を歌ってくれと言って呼び寄せたのが、解散してちりぢりになっていたムード歌謡コーラスグループ「山田修とハローナイツ」であった。

ラサール石井と小宮孝泰はこのグールプのメンバーを演じる。ご存じの方はもう少なくなったかも知れないが、2人は渡辺正行をリーダーとする「コント赤信号」というお笑いトリオを組んでいた。なんだか、「コント赤信号」の来し方もそのままハローナイツにかぶってきて泣けてきてしまうのである。

ムード歌謡コーラスだから、当然劇中で歌も歌う。「ズルい女」「中の島ブルース」「宗右衛門町ブルース」「ほんきかしら」「ミスユー」女性リードボーカル役を務めるのは戸田恵子。戸田だけが本当に歌がうまいのは当たり前で、ムードコーラスとは言え歌の下手な他のメンバーとの落差で筆者は笑う。

戸田だけがスターの光を放っているのに他の役者がくすんでいるその落差でも筆者は笑う。笑っていても、その後はいつの間にか泣けてきてしまう。涙腺の緩んでいる筆者のような爺には酷な芝居である。

「星屑の町」は下北沢・本多劇場にて、2月14日まで。

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