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<テレビの特殊性>なぜテレビ局は自前のキャスターを育てることができないのか?

メディアゴン / 2016年2月20日 9時30分

高橋秀樹[日本放送作家協会・常務理事]

* * *

日本のテレビ局は誕生以来70年間、他の分野から人材を借りることで成り立ってきた。ジャズ屋などの音楽家、通信社、新聞社、ラジオ局、映画会社。それらの出身者を社員にしていた。

特に報道分野で言えば、新聞社。それだからか、テレビは自前のキャスターを育ててこなかったのである。そして、そのツケが今になって回ってきているように思う。

金を掛けて、じっくり、自前のキャスターを育てるという仕事は経営の判断で行われるべきであり、それがなされてこなかったのは経営の怠慢だろう。

テレビが好況であった1980年代以降は、テレビが自前でキャスターを育てるチャンスだったあはずだが、残念なことにその時機は逸した。「権威ある新聞社」ではなく、敢えて放送局で記者になろうという人々は、基本的にテレビに出たい人だったからであろう。本来は、そういう人を20年くらいの計でキャスターに育てればよかったのだ。

放送記者という身分で人を採用した時期もあった。放送記者はしゃべれて記事も書ける人だ。しかし、それは根付かなかった。

アナウンサーをキャスターに育てる手もあった。それも、できなかった。

両方には共通の理由がある。テレビ局では「画面に出る人は出世しない」という暗黙のルールがある。裏方より画面出でる人は通常、軽く見られている。

例えば、一人前の記者になるのが40歳くらいだとする。このぐらいの年齢がキャスターになるのに丁度いい年頃だが、同時にサラリーマンとしての出世も考え始める頃だ。すると、

 「出演者にはならない方が良い」

と判断してしまうのである。

アナウンサーからキャスターへの道は、報道マンからの「取材もしたことがないくせに」というやっかみで阻止される。久米宏は育った局ではニュースを読ませてもらえず、テレビ朝日に移った。

アナウンサーは局員のままでは、自局で偉くなれないことを知っている。だから、アナウンサー職を続けたい時にはフリーになって収入の方を取る。収入が上げることができるかどうかは「実力次第」の茨の道だが、うまくいけば局員時代の数十倍の収入になる。

アナウンサーを自局に引き留める方法はあまりないから、引き留めている間は傍若無人を許すことにもなる。

4月になって、新聞社や通信社からやって来たキャスターがニュースのメインに座る番組が新たに出来るだろう。ただし、これで筆者も含めた「テレビ屋の大好きな視聴率」が取れるとは限らない。

誰がキャスターであるか? は重要な要素のひとつだが、それよりも視聴率をとるのに重要なのことは「テレビ放送の特殊性をきちんとスタッフやキャスターに説明できる人がいるかどうか」である。

ならば、高い金で外部から人を連れてくるより、自前のキャスターを育てた方がよかったに違いない。これからでも遅くはない。

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