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<「炎上もどき商法」の危険性>加藤紗里、浮上から終息までわずか20日?

メディアゴン / 2016年2月20日 8時3分

藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者]

* * *

今、「炎上」がトレンドワードだ。

ここ最近だけでも、ベッキー不倫騒動、狩野英孝との交際で話題の加藤紗里、宿題をやらない子供のゲーム機を壊すバイオリニスト・高島ちさ子・・・などの話題が「ネット炎上した」として取り扱われている。

拙著「だからデザイナーは炎上する」(中公新書ラクレ)において、五輪エンブレム騒動を事例に、「炎上」メカニズムについて詳述したこともあり、昨今の「ネット炎上」話題に思うところは多い。

「今日、なぜネット炎上が起きるのか」ということについての説明は拙著に譲るとして、本稿では「炎上」と「炎上商法」の実態と、その危険性について、加藤紗里氏を素材にして考えてみたい。

***

「炎上」と表現されるものの共通点をあげれば、発言やSNSなどのメッセージに対して、ネット上で、ネガティブな批判や攻撃、粗探しなどが多発する、ということだろう。

ネット民たちの食指を刺激する話題が発生するたびに、「炎上、炎上」と便利に利用されるが、筆者としては「炎上」の誤用ではないか、と思うことは多い。ネット上での批判的な盛り上がりがイコール「炎上」を意味するわけではないからだ。

しかし、著名人の発言や書き込みに対して多くのネガティブなリアクションが集まると、最近ではすぐに「炎上した」と表現されてしまう。もちろん、「炎上」とはネット民が騒ぐ、ネットで批判される・・・といった程度のことを指すわけではない。その程度のことであれば、意図的に生み出すことも容易だ。

一方で、本来の意味における「炎上(Flaming)」とは、ネットから着火される点では同じだが、それが無限に「延焼」し、ネットを飛び出してリアルな社会や生活にまで影響を及ぼし、当事者だけではなく、その周囲にまで大きなダメージを当たえるような状態を意味する。

もちろん、急速な鎮火などもしない。徐々に収まりはするが、それでも「忘れ去られる」ことはなく、一定のダメージや記憶が維持され続ける。終息したかに見えても、何かあれば「あの時の盛り上がり」は容易に復活してしまう。

例えば、「五輪エンブレム騒動」や「STAP細胞騒動」は、完璧で理想的な「炎上」のモデルケースだろう。「炎上」のケーススタディとして情報倫理の教科書に記載すべき事例だ。ネット炎上に端を発し、一連の騒動にまで至った佐野研二郎氏や小保方晴子氏が受けた歴史的ダメージは計り知れない。

昨今、「◯◯さんのブログが炎上した」などと表現されるものの大部分も、「炎上」と言えるような状態ではなく、単なる「ネットで批判された」といった「炎上もどき」程度のものだ。「炎上商法」と言われる事例も、その実態の多くは「炎上」とは似て非なる「炎上もどき商法」ばかりだ。そもそも「炎上」したようなモノがマーケティングに利用できようもない。

いかに注目を集めたい、売名したいと考えていたとしても、佐野研二郎氏や小保方晴子氏、ベッキー&ゲス川谷のような存在になりたいと思う人はいないはずだ。二度と浮上できなくなるリスクを考えれば、あまりにも危険だ。

よって、「ネット炎上」を画策するケースのほとんどが、「炎上もどき」を利用した「炎上もどき商法」を目指していることがわかる。下世話な話題で注目を集め、その後の露出や活躍につなげたい、という程度の目論見だ。

しかし、「炎上」と「炎上もどき」が違うとは言え、「炎上もどき」には本当の「炎上」とは異なる危険性があることを忘れてならない。

例えば、ネットが騒ぐ程度の「炎上もどき」状態は、簡単に燃え上がり短期的に注目を集めることができる一方で、同じスピードで終息もする。加藤紗里氏の事例でいえば、突然の浮上から、終息の兆しが見え始めるまでの期間はおよそ20日。この期間を長いと感じるか、短いと感じるかは人それぞれだろうが、テレビドラマでいえば2回〜3回分だ。

「炎上もどき商法」で得た注目は鎮火も早く、すぐに「あの人は今?」未満になってしまう。そこからの再浮上は極めて困難だ。「炎上もどき商法」に特化した活動の後にほぼ確実に待ち受ける「すぐに忘れられて、恥ずかしい印象だけ残して再浮上できない」という状態は、芸能界では絶対に回避したい致命的なダメージだ。

実際、「いわゆる炎上商法」としてうまく展開している事例は驚くほど少ない。むしろ、うまくコントロールできているのは、氷山の一角未満だ。「炎上もどき商法」とは、素人が安易に手をだすと取り返しのつかないデメリットを被ることの方がはるかに多い、「先物取引」のようなものなのだ。

その意味でも、加藤紗里氏の事例は「炎上もどき商法」の危険性を知る上で、わかりやすいモデルケースだ。

まず有名人(狩野英孝)との色恋ネタで検索対象となり、そこから誘導される自分のブログやSNSなどで「挑発的メッセージ」や「勘違いした発言」を投下することでネット民からのリアクションを集める。ネット民のエネルギーを利用して、一般や既存メディアからの批判や罵詈雑言を生産、拡大させ、自らに注目を集めるメカニズムだ。

基本的には、自分以外のエネルギーを利用した露出であるため、「どこまでが自分の実力なのか?」がおそらく本人でさえあまりわかっておらず、自分で自分自身をコントロールできていないはずだ。この「自分自身をコントロールできない」ということが、急激に終息したり、早々と消えてしまう要因でもある。

「炎上もどき商法」の基本は、ネット民からの批判や過激なリアクション、誹謗中傷に対して、当事者(加藤紗里)が自虐と開き直りを多用して「拾い」、それに反応することで、さらなる批判的盛り上がりやリアクションを導き出すことにある。いづれにせよ、すべて他者依存であるという点がポイントだ。

つまり、ネット民たちの「粗探しのセンス」とその攻撃量が命綱。そもそもが他者依存であるため、飽きの早い若者層の関心を長く引くことは難しく、急速に終息する。もちろん、その後の「再炎上」を狙った過激な言動の「悪あがき」で注目を集めることも難しい。

加藤氏のブログやネットからは早くも「命綱」であるネット民のコメントが激減し、フェードアウトの兆候が見える。本人もそれには気づいているはずだ。

例えば、すれ違いざまに他人から声をかけられた回数をカウントして「100人斬りした」という表現のブログを2月18日に公開。これなどは「一見、卑猥に見える言葉を使って引っ掛けよう」という、「炎上もどき商法」の最も幼稚なテクニック。

また、マネージャーが買ってきた弁当を「玄関の床の上」に置いて撮影した写真で紹介するインスタグラムなどは、批判を誘導しようとする意図がバレバレだ。しかも、弁当の横に「水戸黄門の印籠」を置くなど、「あわよくば『天然キャラ』にでも」という作戦も単純だ。

営業努力といえばそれまでだが、なんとも物悲しい。「炎上もどき商法」の実態は、自分の賞味期限を極端に短くさせる危険な手法だ。特に、芸能界にいる人たちは安易に手を出してはならないように思う。

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