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炎上ブーム時代のテレビ作り『だからデザイナーは炎上する』

メディアゴン / 2016年3月1日 7時30分

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安達元一[放送作家]

* * *

最近、「炎上」という言葉を目にすることが多い。

「STAP細胞」や「五輪エンブレム」は言うまでもなく、SMAP独立、高嶋ちさ子ゲーム機破壊、桂文枝不倫、狩野英孝二股・・・などなど。いずれも問題それ自体というよりも、いわゆる「ネット炎上」ということで注目を集めることさえある。

狩野英孝二股騒動にいたっては、渦中の加藤紗里の言動が「炎上商法」と言われ、それ自体が炎上し、良い意味でも悪い意味でも話題となっている。

今、テレビ番組を作る上で、出演者も含めた制作者たちが、少なからず気にすることは「ネット炎上」だ。

間違った内容や捏造やヤラセなどが万が一にもあれば受けるが、そこから、番組とは関係のない個人への糾弾や、職場や家族、人間関係にまで批判の矛先が向けられ、個人情報までもが暴かれ、叩かれる「炎上」の発生は、そう簡単には受け入れがたいものだ。

ネットで着火された炎上が、リアルな社会生活にも大きな影響を及ぼすようになっている昨今、(良い意味でも悪い意味でも)それを完全に無視してテレビ番組作りはできない。

番組放送中であっても、SNSやツイッターなどを利用して批判や反論が発信される。その真偽や是非はさておき、それがネット民にとって面白いものであり、興味を引くものであれば瞬く間に拡散される。

テレビ局やタレント事務所もネットのリアクションには比較的敏感だ。「炎上は恐ろしいものである」というのがメディアで働く人間としての本音だろう。

しかしその一方で、同じような事象でも、人により・対応によって、炎上する場合と、しない場合がある。何をしても炎上する人もいれば、そうでない人もいる。同じことでも炎上する人/場合と、炎上しない人/場合がある。

この違いはなんなのだろうか?

「炎上商法」などと呼ばれる言葉もあるように、ネット上で批判的であれ話題を集めることで、その是非はさておき、そのパワーは利用して知名度の向上を狙うこともできる。「本当の炎上」にさえ至らなければ、「炎上商法は効果がある」と思わせるぐらいの「魔力」はある。もちろん、ネットで批判されたぐらいが炎上ではない、という前提で、だ。

コントロールできれば、これほど力強いものはないかもしれないが、なかなかそうはうまくゆかない、ネット時代の困った文化である炎上。発生要因はもとより、その過程や実態もよくわかっていない。

藤本貴之(東洋大准教授)の著書「だからデザイナーは炎上する」(中公新書ラクレ)では、そんなよくわからない炎上のプロセスが、「五輪エンブレム騒動」を事例にしてわかりやすく分析され、参考になる。

五輪エンブレム騒動で話題となった「パクリ問題」という身近でありがち(?)な出来事が、どのようにして炎上へと発展していったのか・・・ということを、ネットや社会の流れと、佐野研二郎氏(とその周辺)の言動から、細かく分析し、炎上の発生過程までも詳しく解説している好著だ。

もともとのテーマが、東京五輪に巣食うデザイン/デザイナー業界の魑魅魍魎への一刀両断であるため、単に「炎上の解説」ではなく、炎上しないための手法やこれからのデザイン/デザイナーのあり方や手法も具体的に提示しているあたりは親切でもある。

ここで論じられた炎上のメカニズムは、エンブレム騒動だけに限った話ではなく、あらゆる場面で目にすることだ。五輪エンブレムというわかりやすいトピックを利用はしているが、よく考えれば、多くの炎上の事例が同書で分析された流れに当てはまる。

詳しい内容はネタバレをしないためにも割愛するが、番組を守らなければならないテレビ制作者(出演者を含め)にとっては、ネット時代の今日、炎上の要素はそこかしこにある、ということを肝に命じなければならない。

もちろんそれ以上に大事なことは、騒動が発生し「炎上しかかった」場合に、それが本炎上し、延焼しないためには、どうすべきであり、どうすべきでないのか、という基本的な炎上メカニズムを理解することだろう。

しかし、多くの炎上している事例の当事者たちは、その現実に気がついていないという指摘には、ハッとさせられる。

そう考えると、これから取り返しがつかないような「炎上」しそうな人も自ずと逆算できるように思う。少なくとも、問題の大きさ、事態の過激さとは無関係に、弁明が上手で反論が理論的(に見える)な著名人は、炎上の有力候補かもしれない。

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