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<チビタイガーマスクに見る>「めちゃイケ」の底力は岡村隆史の羞恥心にあり

メディアゴン / 2016年3月6日 10時43分

高橋秀樹[日本放送作家協会・常務理事]

* * *

3月5日放送の「めちゃ×2イケてるッ!」(フジテレビ)は、この番組がもっている「底力」を見せてくれた回であったといえよう。このところのていたらくを払拭するようなおもしろさだ。

チビタイガーマスクに扮した岡村隆史が「今、言って置いた方がいいことはないのか?」と言って、さまざまな有名人を訪ねる。尋ねられた芸能人は「めちゃイケ」と言う番組のある種の権威に疑心暗鬼となって、あることないことを自ら暴露、反省してしまう。

アポなしで突然聞かれた芸能人はうろたえる。うろたえてはいるが、ここで何を答えるかで、芸人としてのセンスや、実力があからさまになる。本業が女優の人はよい。答えは普通でも良いからだ。後は岡村がおもしろく処理してくれる。

しかし、芸人の場合はそうは行かない。何を答えるかが勝負のこの企画で失敗すれば能力がないことが丸裸にされてしまうからだ。緊張感も伝わってくる良い企画である。

宮迫博之、カンニング竹山、やはり売れている人には理由がある。

昔、筆者はこんなコントを書いたことがある。父親が息子を正座させてこう言う。

 「胸に手を当てて、じっと考えてみなさい。お父さんに言うことがあるんじゃないか」

子どもはあることないことを自白してしまう。「そうじゃなくて○○だ」と言うのがこのコントの落ちだ。

これはある落語からパクったネタだ。大家さんと粗忽(そこつ)な店子・熊さんの会話である。柳家小三治が「粗忽長屋」のまくらでやっていたと思う。

筆者がこのネタをパクったのは、優れていると思ったからだ。

「めちゃイケ」の落ちは、本当に言って欲しかったのことが、「東日本大震災へ鎮魂」ということであった。筆者は途中でこれに気づいたがそこから番組に対する興味がなくなった。

筆者としては、放送時間ぎりぎりまでまで「今、言って置いた方がいいことはないのか」と、聞き続けて欲しかった。そうする作法を持っていたのが、昔の「めちゃイケ」であったように思う。

どうしても「東日本大震災へ鎮魂」にしたいなら、最後に東北出身の「サンドイッチマン」という好素材がキャスティング出来ていたではないか。3分程度盛り上げることができればそれだけで良いはずだ。

一方で、狩野英孝はいじりすぎだろう。編集であれだけの時間を使ってしまうのは、「狩野ネタにはもう飽きている」という世の中の感覚と、制作スタッフの感覚がずれている、ということだ。

しかも、矢部浩之が役に立っていない。伏線にして、スーツくらいは着せるべきだろう。

岡村はずっとタイガーのマスクを取らなかった。設定を厳密に守ろうという、岡村の芸人としての潔癖さは美点である。だけれど、もうひとつのことも思う。

 「岡村は芸人として、恥ずかしかったのではないか。」

つまり「めちゃイケ」底力は、岡村隆史と言うことである、というのが筆者の見立てだ。

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