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<一番優れている笑いって何?>今、金を払ってみる「笑いの舞台」こそ面白い

メディアゴン / 2016年3月12日 7時40分

大森ヒロシ[東京ヴォードビルショー]

* * *

舞台、演劇と聞いて「小難しい」「分からない」と思う方も沢山いるだろう。最初に見た舞台がつまらないと、それがその人の舞台に対する印象全てになり、おそらく二度と劇場に足を運ばない。

そもそも好きな役者が出るとか知り合いが出るということでもなければ、なかなか劇場に足を運ぶことはないのではないだろうか。

でもね、騙されたと思って行ってみて下さい。笑いの舞台は本当に面白いから。客席が笑いに包まれてるから。

本当に面白い舞台を観た時は実に心地良いのですよ。何度も思い出し笑いをしてしまうくらい。

しかし、どれが面白くて、どれが面白くないのか。それはもう自分の目で確かめるしかないのだけど。「笑い」は好みだしね。

ブラックな毒のある笑いが好きな人もいれば、老若男女誰もが笑う普遍的な笑いが好きな人もいる。でも面白い舞台と言うのはやはり「笑い」に対して真剣に取り組んでる。

プロとして「笑われる」は最低。「笑わせる」のは当たり前。「笑わせてやろう」はおこがましい。

では、一番優れている笑いは何か? それは「笑っちゃう」。その笑いを舞台では稽古で作り出すんです。

時に台本に書かれていたり、稽古場で役者や演出家が生み出したり。アドリブのように見えて実は緻密に計算されている。ふざける、何か面白いことをやる。ではなく「真剣に真面目にやる」ことが笑いになる。

音や明かりのタイミングも非常に大事になる。どれか一つ微妙にズレても「笑い」は潰れてしまう。それを生で見る。楽しいんです。

だって舞台は一度きりだもの。その刹那に、膨らみ、弾け、消えてしまう。同じ舞台は二度となく、記録には残らず観客はそれを記憶に留める。生の空間で共有する一体感。これが舞台の魅力なんじゃないかなぁ。

芝居に組み込まれる「笑い」は非常に有用だから笑いの要素が組み込まれている舞台は沢山ある。

反面、組み込もうとしてはいるが笑えない舞台が数多存在するのも事実。喜劇・コメディを標榜していても笑えない舞台はたくさんある。

あざとかったり内輪ウケだったり、楽屋ネタだったり。板の上で役者だけが楽しんでいるものは笑えない。

私は今年に入って既に18本のステージを見ているがその中で笑ったのは1本か2本。

例えば星屑の会の「星屑の町~完結編」いい年をしたおじさんたちが実に楽しかった。細かいところまで笑いが仕込んである。何より真面目にやっている。巧みのストーリーと相まって最後は切なさすら感じさせる。

今流行りの2.5次元ミュージカル「Dance with Devils」に出演していた木村昂さんの芝居も面白かった。滑舌も体の動きも実にシャープで好感が持てた。そしてやはり「真面目に」やっていた。

ところで、私の大森カンパニープロデュース「更地」も面白い。役者がやる大人のコント。細かくしつこく何度も繰り返し稽古をして「笑い」を作り上げる。

舞台と言うのはテレビと違って自らが時間とお金を使って見に行くもの。作り手はそれを肝に銘じて常に謙虚に真摯に取り組んで作るべきなんです。

本当に是非一度「笑い」の舞台を観に劇場まで足を運んで下さい。

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