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爆笑問題・太田光氏が激怒する「芸人批評」をどう考えるか?

メディアゴン / 2016年3月23日 7時20分

高橋秀樹[放送作家]

* * *

筆者(高橋秀樹)とライター・高橋維新(弁護士)が書いたネット記事に対して、爆笑問題の太田光さんがラジオで激怒したそうです。ネット上では太田さんが「キレた」「激怒した」と表現していますが、それは太田さんの芸の持ち味だ、と筆者は思いますので、興味深く拝見しています。

少なくとも筆者は批評をただの批判としては書かないようにしています。批評は建設的であるべきだからです。筆者はテレビ批評家として、故・ナンシー関さん(1962〜2002)を尊敬しています。ナンシーさんには、筆者もずいぶん自分の番組のことを書かれましたが、腹が立ったことはありません。いつも、ダメなところの本質を指摘してくれるからです。

ナンシーさんのお叱りから見つかった自分の改善点は少なくありません。しかし、今回の爆笑問題の批評について、筆者の文章が十分に本来の意図を表現できていなかったとすれば、それはそれで大いに反省すべきことです。

さて、爆笑問題の漫才について筆者が書いた記事の全文は原文(http://mediagong.jp/?p=15120)で、ぜひ読んでいただきたいのですが、太田さんが指摘しているであろう部分を再録します。

 「2月13日土曜日のフジテレビ『ENGEIグランドスラム』は、残念な番組になった。(中略)最低だったのは爆笑問題。舞台衣装としてキラキラ光る素材のスーツを着ている時点でダメである。SMAP、ベッキー、石坂浩二・・・と時事ネタを拾うのはよいが、それならもっと『フリートークで漫才をやるのだという表現』をしなければならない。演芸場で古い漫才を見せているような衣装はダメだ。田中のおとし台詞もまるで、昭和30年代の漫才のように古くさく感じられる。制作側は意見を言わなかったのか。口を出せなかったのか、と疑問が残る」(http://mediagong.jp/?p=15120)

書いた本人として改めて読んでみると、確かに「怒るかもしれないなあ」と思う点もありそうです。しかし一方で、テレビを見る側は、感想を書く権利も、自由に発言する権利も持っていると思います。これはテレビに限った話ではありませんが。

「いやなら、見るな」という芸能人が時々いますが、それを言うのはルール違反です。芸能人はスポンサーからギャラをもらってCMや番組をより多くの人に見てもらうことを任務とし、そのように契約を結んでいるはずです。

さて、太田さんたちは3月8日放送のTBSラジオ系のラジオ番組『爆笑問題カーボーイ』で、記事を書いた筆者(と高橋維新)について、次のように発言なさっています。

恣意的に発言を選んでいるのではないことを示すために、入手できた発言のすべてを引用しています。(   )の中に筆者(高橋秀樹)の考えとコメントを加えます。ただし、ラジオでは筆者と高橋維新(の記事)を同一人格として混同している箇所もあるようなので、本稿では、あくまでも筆者の立ち位置からのコメントに限ります。

 太田光:俺、この間、若手に聞いて初めて知ったけど、高橋ナントカってお笑い評論家、ブログで・・・
 田中裕二:あー! 弁護士。いるらしいよ。
 太田光:弁護士。高橋維新ってやつかな。いるんだって言うんで見たんだよ。
 田中裕二:有名だよ。
 太田光:有名なの?
 田中裕二:いつもヤフーニュース見るとさ、「爆笑問題の漫才がどうのこうの」って悪口書いてるから

(全て悪口として読まれてしまうのであれば残念です。もちろん、純粋な批評も、褒めていこともあると思います。ただしネガティブなことのほうがバイアスがかかるので印象に残るのは確かなので、致し方ないのかもしれません。)

 太田光:あの野郎、あったまくるなぁ!

(こういった発言も自由ですし、自由な表現だと思います。)

 田中裕二:ははははは
 太田光:全部読んじゃった、あいつの。
 田中裕二:読んだの?
 太田光:全部読んだよ。『ENGEIグランドスラム』の俺らの漫才。何て言ったかな、「あれぐらいだったらアドリブでできるわ」みたいな事書いてあって。それこそ「太田はサンジャポのフリートークで、あれくらいの事やってるから、あんな練れてない漫才ならやらない方がマシだ」みたいな事書いてんだ。

(つまり、太田さんのフリートークは素晴らしい、漫才ではそれを超えてほしかった、という趣旨ではないでしょうか。少なくとも筆者が読む限り、それは怒るようなことではないように思いました。)

 田中裕二:あいつ、ひどいよな。
 太田光:冗談じゃない! お前、あんな漫才、アドリブでできねーよ!(一同爆笑)出来ないんだよ! そこまで才能無い!
 田中裕二:ははははは
 太田光:で、親父も作家だっていうからね、親父も偉そうな放送作家協会の・・・

(ここから、高橋維新の話題に筆者のことが加わります。筆者は放送作家協会の常務理事です。しかし、これは無給の役職であって、特別に偉いわけでも、利権があるわけでもありません。)

 田中裕二:そうなの?
 太田光:親父も一緒にブログやってんだよ。横で。

(筆者が高橋維新にコラムを書くきっかけを提供したことは事実ですが、親子でコラムや記事を書いているわけでも、相談しているわけでもありません。高橋維新は数多い無名ライターの一人に過ぎません。もちろん、読んでいただければわかる通り、筆者とは内容や趣旨・思想は異なります。もちろん、他のライターや執筆者とも無関係です。)

 田中裕二:親子でやってんの?(笑)
 太田光:で、親父のブログ見たら、「爆笑問題の漫才は、昔の演芸場に出てくるような漫才で、あんなのやらない方がマシだ」って書いてあるの。

(この部分は筆者の言葉足らずだったでしょうか。練った漫才をもう一度わざと崩して練った痕跡をなくしてフリートーク風の漫才にするなら、昔の演芸場に出てくるような光る繊維の背広は合わないのではないか、というのが文意です。そんなことは言われなくてもわかっていると怒られるかもしれませんが、「テレビは見た目も含めて」であるはずですから。)

 田中裕二:親子で?
 太田光:親子でやってんだよ。お前らな! 親子でネタ作って、今度のグランドスラム出てこい!
 田中裕二:絶対出てくるわけないじゃない。
 太田光:出てこい! 俺らよりウケてみろ! だったら。てめーふざけんな! 許せねーからな、ホントに!

(放送作家と弁護士ですから、演じる力は爆笑問題の0.1%以下です。ただし、筆者は長くテレビ業界にいますので、見る力は少しはあるのではないか、とは自負しています。もちろん、漫才は筆者のような作家なんかが書けるものではありません。)

 田中裕二:あ、そうなんだ。親子でやってんの。いや、高橋維新って人は良く見るんだよ。
 太田光:何なんだ、あいつは。何にもテレビの事分かってねーんだ。今日見てたらさ。
 田中裕二:そうそう。まったく分かってないのがよく分かるわけ。なんでさ、俺ら本人、知ってる人が見たら「それ間違ってる」ってバレる事を書くのか分かんないんだよね。

(大幅に間違ってると思うことは、40年近くこの業界にいて「知ってる人」の端っこにいる筆者から見て、そうないと思います。「こうやった方がいい」という指摘はあります。素人ですから、バレるもバレないも分からないかも知れません)

 太田光:「練れてない」って言いやがるんだ、バカ野郎。練ってるわ!『ねるねるねるね』だわ!(一同爆笑)どんだけかかってネタ作ってると思ってんだ。そんな才能ねーわ! アドリブであれだけやれたら天才だわ!
 田中裕二:本当にさ、本当に素人のさ・・・
 太田光:出て来いよ、お前ら! 勝負してやるよ、お前ら! 堂々とさ!
 田中裕二:出てこないって・・・『ひょうきん族』の作家なの?
 太田光:『ひょうきん族』の作家なの?
 田中裕二:「高橋ニセモノ英樹」ていう人なの? そうなんだ。へー。

(『オレたちひょうきん族』では、「高橋ニセモノ英樹」と言う筆名を使っていました。)

 太田光:『ひょうきん族』だか何だか知らねーけどな、知らねーわ、お前の事なんか。「テレビはもう駄目だ」とか書いてやんだよ。
 田中裕二:何でそういう事言うかね。

(筆者は「邦子のスター生たまご」と言う番組のオーディションで爆笑問題の2人に初めて会った時のことを覚えています。強烈なパワーがあるし、押し出しもある。でも筆者は「そのネタはテレビでは出来ないよ」と言ったと記憶しています。あの時に、もっとよいしょしておけば良かったと思う芸人さんが何人もいます。ホンジャマカの石塚さんは「夢の中で夢を見る男」と言うネタで出て頂きました。筆者は長くテレビに食わせてもらいましたから、「ダメでないテレビを作りたい」というのが信条です。)

 太田光:全然、お前の時代と違うんだよ! あったま来ちゃったよ。

(時代は違えど、筆者は「変わらないもの」もあると考えています。)

 田中裕二:そうだよね。アレはひどいよね。悪質だね、確かに。
 太田光:だから俺はああいうの見ないんだよ。
 田中裕二:そう、だから俺もね、見たくないんだけどさ、俺らが見出しにあったら見ちゃうじゃん。『爆笑問題、ENGEIグランドスラムを見て』とか。
 太田光:俺の見たやつは出てこないんだよな。
 田中裕二:「爆笑問題の漫才なんて」とか書いてあれば、それは見るじゃん。
 太田光:うん。
 田中裕二:そしたら、ひとつ、ひとつ評価してるわけ。
 太田光:ひどいのは、『アメトーーク』かな? トークに点数付けてたよ。
 田中裕二:そうだよ、毎回やってるよ。
 太田光:毎回やってるの?
 田中裕二:だって『アメトーーク』とか『めちゃイケ』とか『ENGEIグランドスラム』とか、ああいうのは全部観て、ひとつひとつのネタとかに寸評とかやってんだよ。エラそうに。何も知らないクセに。

(これは筆者ではなく、高橋維新の記事です。しかし、それは単に「おもしろい笑いが大好きなだけ」というだけではないかと思います。)

 太田光:お前、何目線なの? それ。
 田中裕二:『俺はお笑いを知ってる目線』
 太田光:知らないだろ! 出て来いっつーんだよ。『タイタンライブ』出してやるよ。『高橋親子』っていうので登録するわ、今度。
 田中裕二:ははははは
 太田光:出してやるわ! お前ら。
 田中裕二:それじゃ高田文夫先生は知ってんだろうね。高橋、その親父の方は。
 太田光:へー。どうせロクなネタ書いてないだろうよ。『ひょうきん族』だってよ。『ひょうきん族』のつまんない回はこいつの回だよ(一同爆笑)
 田中裕二:そうだよ。高田先生、このラジオ聴いてるから、よく知ってる人だろうね。
 太田光:じゃぁ、景山さん(景山民夫)とか高田さんとかの…
 田中裕二:まぁ多分、年とかは俺は知らないけど、『ひょうきん族』でやってたって事はその辺の事だからね。
 太田光:でもこう言っちゃなんだけどね、俺、高田先生を尊敬してるよ。澤田隆治先生も、そりゃもちろん尊敬してますよ。
 田中裕二:高平先生とかね。
 太田光:高平先生とかもね。時代を作った人達だから。そら高橋さんだってそうですよ。高橋洋二さんだって。だけど放送作家は放送作家です。言わしてもらうけど、我々芸人としてのプライドはあるから、放送作家に負けてるとは思わないですよ。そりゃ。全然。

(筆者は、勝ってるとか負けてるとかそういう価値観で仕事をやったことはありません。)

 田中裕二:うんうん。
 太田光:ましてやお笑いの事に関して、はかま満緒さん亡くなっちゃいましたけどね、そりゃもう、物凄い発想力で青島さんに始まり、全部そうだけども、そんな芸人の今の現役でテレビやってる芸人の悪口を、悪口っていうか批判をするような作家は信用しないし、センスのかけらもないんだよ。『ひょうきん族』のつまんない回書いたのお前だよ!(一同爆笑)

(高平さんも高田さんも、筆者にとっては多くの刺激を与えて下さった先輩です。景山さんは「ひょうきんプロレス」に演者としてご出演なさっていましたが、作家としては参加していません。筆者は7人のレギュラー作家の最若手として、ひょうきんベストテンも、タケちゃんマンも書きました。他の先輩作家と作風を変えるために「虹とスニーカーの頃」とか「木綿のハンカチーフと」とか、歌謡ドラマを多数書いていました。他のパターンも書いています「入間(イルマ)のたて琴」というのも書きました。個人的にはこれが一番気に入っています。「ラブユー貧乏」も企画しました。面白いか面白くないかは好きずきです。例えば、『ENGEIグランドスラム』の爆笑問題が好みでなかったのは、筆者の個人的な感想です。)

 田中裕二:もう絶対ネットでこの事が(笑)
 太田光:関係ねーよ、ネットなんか知らねー! 見ねぇもん。
 田中裕二:俺は見る(笑)

以上、ラジオ番組『爆笑問題カーボーイ』での爆笑問題の2人による、筆者(と高橋維新)の記事に対する発言を再録し、筆者としての考えとコメントを書かせてもらいました。これに対しても批判や異論もあるでしょうが、それを発言したり、書いたりすることもまた自由だと思います。

最後に、筆者は芸能人は全員尊敬しています。人生を芸能にかけてしまった勇気を、これは心から尊敬しています。芸能人になれていない「芸能人未満の人」は別ですが。

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