<無声映画・ラジオ・テレビ・漫画・IT…>「名作」は古いメディアが新しいメディアに取って代わられる時に生まれる?
メディアゴン / 2016年3月27日 7時20分
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
古いメディアが新しいメディアに取って代わられるときには、いつも、優れた作品が生まれる。それはなぜだろうか。消えゆく者に対して誰もが持つセンチメンタルという感情をうまく描くことが出来るからではないのか。
映画がサイレント(無声映画)からトーキー(音声のある映画)になったことを象徴する優れた映画作品といえばビリー・ワイルダー監督の『サンセット大通り』(1950)がある。
サイレント映画の時代に活躍して忘れ去られたかつてのスター女優ノーマ・デズモンドの悲劇を描いたこの映画、ノーマを演じた主演のグロリア・スワンソン自身がサイレント映画の大女優であったことでも知られている。
「忘れ去られた過去の人間」という我が身の現実を理解できない往年の大女優が、妄想の果てに殺人を犯し、物語のラストでは押しかけた報道カメラを映画の撮影カメラと思い込んで演技を始める狂気を描くという時代を象徴した名作だ。
他にも、ラジオがテレビに取って代わられた時に登場したバグルスの「ラジオスターの悲劇」(Video Killed The Radio Star)も有名。1979年、まだラジオというメディアが若者に受け入れられていた時代、テレビ文化の到来とラジオの終焉を予言した名曲でありヒット曲だ。
「ラジオスターの悲劇」の一節を抜き出してみる。
テレビがラジオスターを殺した
僕の心の中に、僕の車の中に
僕等は巻き戻せない、余りに遠くまで来てしまったんだ
映像がやって来て、そしてあなたのハートを壊した
VTR(ビデオレコーダー)のせいにして
1979年という1980年代を目前に控えた時代。もちろん、まだまだラジオも大きな力をもっていた。その一方で、映像(ビデオ)とテレビの影響力が急激に拡大していった時代でもある。
近年、メディアは多様化し、ラジオの影響力やあり方もその当時とはさらに大きく変容した。しかし、ラジオは今も生きている。「自由に発言が出来ているラジオしか聞かない」というような年配者は多い。技術や社会がどんなに変化しても、変わらないものはあるのだ。
そして、2016年の現在。現代はテレビがITメディアに取って代わられる時代だと読む人は多い。ならばまた、名作が生まれるのだろうか。筆者はもう少しの間、メディアの切り替わりを象徴するような「名作」は生まれないような気がしている。まだまだセンチメンタルが足りていないように思うからだ。
例えば、最近、漫画家が自らの漫画家体験を描く「漫画家まんが」が流行している。どれもみな面白く、外れがない。先日、巻来功士氏(「ゴッドサイダー」など)の「連載終了! 少年ジャンプ黄金期の舞台裏 」(イースト・プレス )を読んだが、ここにはセンチメンタルがたくさんあった。
ところで、漫画の主要な媒体は未だに紙だ。そうそう電子書籍に席巻されるような感じもない。そうなると「紙の漫画」に取って代わる「まんが」とは何なのだろうか、と思わず考えさせられる。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
劇場アニメ「ベルサイユのばら」MAPPA制作で25年新春公開 オスカル役の沢城みゆき、アンドレ役の豊永利行らキャスト発表
映画.com / 2024年7月2日 6時0分
-
再放送で人気再燃、24年前の朝ドラ『オードリー』 今だからこそ発見できる“令和の傑作”『カムカムエヴリバディ』との共通点
文春オンライン / 2024年6月29日 6時0分
-
「普遍的な愛は家族間にのみあるわけではない」アレクサンダー・ペイン監督「ホールドオーバーズ 置いてけぼりのホリディ」インタビュー
映画.com / 2024年6月22日 9時0分
-
「ガンダム」生みの親が語る日本エンタメ史の裏側 安彦良和氏が驚愕した才能、原作のアニメ化に思うこと
東洋経済オンライン / 2024年6月15日 11時0分
-
「ライド・オン」70歳ジャッキー・チェンのアクションと私生活を詰め込んだ〝赤裸々半生〟
東スポWEB / 2024年6月11日 14時5分
ランキング
-
1NYで人脈構築の小室圭さん、対照的な生活の眞子さんは「ほとんど外出せず」紀子さまが抱える“複数”の不安
週刊女性PRIME / 2024年7月4日 7時0分
-
2実刑判決で「頭が真っ白に」 法廷に両親の涙 静岡バス置き去り死
毎日新聞 / 2024年7月4日 20時58分
-
3「魚民」の大量閉店は“大正解”か。運営企業「モンテローザ」の“稼ぐ力”は他社を圧倒
日刊SPA! / 2024年7月4日 8時53分
-
4【那須2遺体】長女・宝島真奈美容疑者が遺体発見翌日に応じたTVインタビューで見せた“違和感”について臨床心理士が分析
NEWSポストセブン / 2024年7月5日 7時15分
-
5新潟上越市でマンホール点検中の男性死亡 夕方になっても帰社せず捜索、マンホール内で意識不明の状態で発見
新潟日報 / 2024年7月4日 23時40分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)