<リニューアル「NEWS23」>未完のコンセプト「脱ナリチュー」を活かせるか
メディアゴン / 2016年4月12日 7時50分
高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]
* * *
新しく朝日新聞から星浩キャスターを迎え、24歳の新人・皆川玲奈キャスターを起用して始まったTBSの新「NEWS23」。
どんな番組にもコンセプト、日本語にすれば企画意図、もっと平たく言えば「やりたいこと」が、あるはずである。しかし、残念ながら、番組にはそれが全く感じられない仕上がりになっていた。
テレビ番組制作は始まって1週間くらいは試行錯誤の時期で、あらが目立つのは致し方がない。よって、冷静な判断をするためにも、その時期はあえてスルーして、4月11日の放送をじっくり見ることにした。芝居で言ったら、まだダメ出しの済んでいない初日を避けて、中日に見に行ったという感覚である。
この日は富川裕太アナが起用された「報道ステーション」(テレビ朝日)が初日であったが、こちらはと言えば、「初日のこなれなさ」が漂っていたことだけを記し、もう少し経ってから総合的な意見を述べたい。
【参考】<膳場貴子氏・岸井成格氏「NEWS23」降板>何が自由な言論やジャーナリズムを弱体化させるのか?
さて話を元に戻すと、テレビ番組にとってはなぜ「コンセプト」が大事なのか。
それは、そのコンセプトを旗印にして、その旗の下にスタッフが集まり同じ方向をむいて仕事をしてこそ、番組の特徴が出るからということに尽きる。明確な旗印がないと、好き勝手にスタッフは動き出し、方向性を見失って番組がひとつの生命体であることが不可能になる。もちろん、そういう番組は魅力的ではない。見やすくない。
番組作りのプロたちは、そんなことは百も承知だろうから、コンセプトは決めているはずである。番組の公式サイトには以下のように書かれている。
(以下、番組HPより引用)
▼ 新しいNEWS23は“運動神経で勝負”
新しい情報や映像をドンドン入れていきます。夜11時・・・まだまだ眠れません! ちなみに新メインキャスター星浩は、中学からサッカーをはじめ、 子どものサッカーコーチを務めたこともあるスポーツマン。そして駒田健吾キャスターは熱い阪神ファン。スポーツ担当・宇内梨沙キャスターの特技はバドミントンや水泳。スポーツコーナーも一層華やかに!
▼ 新しいNEWS23は“スマホ超え”
ニュースの背景にある“なぜ”を解くキッカケは・・・ ニュースの延長線上にある“問題点”は・・・ スマホでは見えないニュースの姿が見えてくる!
▼ 新しいNEWS23は“脱ナリチュー”
“ナリチュー”=“成り行きが注目されます”は、 良く耳にするニュースの“決まり文句”。新聞記事を書き続けて30年のメインキャスター・星浩は、 「決まり文句を使わない」とスタッフに宣言しました!その宣言に、24歳・皆川玲奈キャスターも「私も挑戦する」と すっかりその気に。誰の耳にも目にも心地良い、分かりやすい言葉で、 どんな難しい事柄も納得!
▼ 新しいNEWS23は“新しい1日のために”
悲しいニュースも多い毎日・・・。でも放送中に迎えることになる新しい1日は、少しでも明るい日にしたい。そのために番組をどう作っていくか、スタッフ一同、真剣に追求中。
(以上、番組HPより引用)
一読して、「これは、いけない」と直感した。まず、コンセプトが4つもある。これは無いに等しい。スタッフたちが集う旗印たるコンセプトは、ひとつであるべきであろう。
1989年に始まった「筑紫哲也のNEWS23」のコンセプトは「キャスターは筑紫哲也である」。わかりやすく強固なコンセプトだ。それは望むべくもなく始まった新しい「NEWS23」であればこそ、コンセプトが大事なのだ。
少なくとも、上記の4つのコンセプトをひとつに絞るだけで、そうとう明確になる。上記4つの中でコンセプトになり得るのは「▼ 新しいNEWS23は“脱ナリチュー”」だ。これを使わない手はない。
「脱ナリチュー(=脱・安易なまとめ方)」になっているか? を丁寧に検証する。「安易なまとめ方をしていない番組」というコンセプトは誰にでもわかりやすい。新鮮なニュース原稿やコメントは耳目を引くはずだ。
では、筆者が視聴した4月11日の放送が、そのコンセプトの通り「脱ナリチュー」になっていたか・・・と言えば、残念ながら、なっていなかったように思う。
せっかく出身地・福島の居住制限区域の桜並木の前に立った星浩氏のコメントは「引き裂かれた住民」だったし、初めて福島に取材に来たと言う皆川玲奈氏のコメントは、「(被災した人に)がんばれと言わないで」だった。
全部どこかで言われて、これまで繰り返し視聴者が聞かされたコメントであろう。収まりはいいが、完璧な「ナリチュー」である。
まだ出来上がっていない、という意味で「脱ナリチュー」は、非常によいコンセプトである。星浩氏と皆川玲奈氏にコメントのアイディアを出す専属の記者を、それぞれつけて、案を練っていけば番組はどんどん良くなるはずである。
ただし、皆川玲奈氏は星浩氏が記者の大先輩だからと言って遠慮をしていてはいけない。テレビでは素人なのだから。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
石破元幹事長が菅前総理らと会食 「ポスト岸田」に向けた動き続くも報道を“けん制”する発言相次ぐワケは?【news23】
TBS NEWS DIG Powered by JNN / 2024年7月2日 11時18分
-
「大地主」「エリート家族」「3度の結婚」新TBS朝の顔・膳場貴子のあっぱれ素顔
週刊女性PRIME / 2024年6月29日 21時0分
-
長野智子アナはラジオ帯番組で“アップデート”、吉川美代子アナはいまもTBSの研修を担当【女性キャスターたちの現在地】
NEWSポストセブン / 2024年6月21日 16時15分
-
国会中継の方がマシ? NHK「午後LIVEニュースーン」大不振の原因とV字飛躍の秘訣…識者が指摘
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年6月20日 9時26分
-
2024年6月6日(木)発売「次につながる対話力~「伝える」のプロがフリーランスで30年間やってきたこと~」
PR TIMES / 2024年6月6日 10時45分
ランキング
-
1呪術廻戦、実写CMで「塩顔イケメン」Xトレンド入り 「ドンピシャ配役」人気キャラ再現に大興奮
J-CASTニュース / 2024年7月4日 18時30分
-
2「他に言い方がありますよね」工藤静香、テレビ出演で放った“ファンに失礼”発言が物議
週刊女性PRIME / 2024年7月4日 18時30分
-
3「アンジュルム」川村文乃 芸能界引退を発表「残りの約半年間を全力で」秋ツアーをもってグループ卒業
スポニチアネックス / 2024年7月4日 21時2分
-
42024夏ドラマ“見逃したくない作品”5選。「期待度の高い社会派ドラマ」が揃いぶみ
日刊SPA! / 2024年7月3日 15時50分
-
5「危機かも」女装YouTuber、投稿休止した衝撃の理由を明かす。ファンからは「お気をつけください」の声
オールアバウト / 2024年7月4日 21時5分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
![](/pc/img/mission/point-loading.png)
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください
![](/pc/img/mission/mission_close_icon.png)