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<熊本地震の余波>「ワイドナショー」放送自粛に関する松本人志の見解は的外れだ

メディアゴン / 2016年4月26日 7時40分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

マンザイのリサイタルが、たとえば2時間サイズの独演会があったとしたら、筆者が最も見たいのはダウンタウンのマンザイである。

その松本人志が『震災時の自粛放送について』話すというので、4月24日放送のフジテレビ「ワイドナショー」を見た。「ワイドナショー」は前週の安倍総理出演の放送(収録済み)を自粛しているが、そのことについての見解も聞きたかった。

ゲストの中で的を射た発言をしていたと感じたのは武田鉄矢氏である。

 「今回、民放の放送自粛はすごく上手にやっていた」

自粛の度合いのことを言っているのである。3・11の経験を踏まえ、バランスが良かったと言うのである。筆者も一億総自粛状態にならなかったことについては、評価したい気持ちである。

それから、重要な問題提起をしていたのは宮澤喜一元首相の孫娘、宮澤エマ氏である。要旨は

 「日本のテレビ局は報道も娯楽もバランス良く放送しなければならいない(筆者補足、放送法の規定である)アメリカではCNNなど、報道専門の局があるので、どれを見るかは、視聴者の選択に任せられる」

と言うことである。

筆者は、やはり、民放局がすべて総合放送(娯楽も報道も教養も放送すること)での横並び、という状態にはもう無理がきていると思うのである。少なくても、必要な報道内容を自分たちの力で集めるという点において、民放は記者の数が少なすぎる。

【参考】フジテレビ 安倍首相と松本人志共演の「ワイドナショー」を放送休止

松本人志氏の自粛放送についての意見は次のようなVTRの後に発せられた。

VTRでは、教育者の尾木直樹氏、堀江貴文氏の意見が紹介される。(同番組から引用・原文ママ)

 尾木「水も食料もなく、避難所にも入れないでグラウンドで寒さの中身を寄せておられるたくさんの被災者の皆さん さておいて 普段通りの楽しい番組構成にブレーキがかかるのはあまりにも当然!人間らしい共感力があれば自粛して工夫しようとするのはあまりにも当然!」
 堀江「熊本の地震への支援は粛々とすべきだが、バラエティ番組の放送延期は全く関係無い馬鹿げた行為」

これに対する松本氏の答えは、

 「僕は堀江さんはいつもそんなに間違った事は言ってないと思うけど」

と前置きしつつ、

 「ただ、いつも思うのは、この人は心がない。釈然としないところが少しある。(放送延期になった)麻雀番組は止めてもいいんじゃないの?」

であった。それに対して、筆者の考えを書いておく。

 「僕は堀江さんの意見にはいつもどこかひっかかるところがあるけれど、今回は、堀江さんに賛同する。基本的に放送予定の番組はそのまま放送すべきである」

松本氏の言う堀江氏に心がないかの判断は、心というものの基準は人それぞれの違いがあるから何とも言えない。尾木氏の「人間らしい共感力があれば自粛」については、「共感力はみんなが持っている」と言うのが、教育者としての人への接し方ではないかと思う。

【参考】<熊本地震 テレビ報道のありかた>緊急事態の今だけは「視聴率調査」を休止すべき

さらに松本氏は「今回みたいな極度の緊張の中で、笑いは緊張を緩和するっていいますけど、中途半端な笑いをすると不愉快に思われるのは当然だと思うんです。許される笑いと、許されない笑いというか。例えば、ダウンタウンの笑いは、こういうときは不謹慎ですね。ダウンタウンは、こういう時は出る幕はないと思いますね」

話の流れで司会の東野幸治が「例えば、どういうタイプならいい?」と聞くと、松本は「ウッチャンナンチャンとか、『笑点』とか」「『笑っていいとも!』の安心感はよかったですよね」との主旨の発言をしている。

そこに秋元優里アナウンサーが「線引きはどういう風に分かれるかのか」と絶妙で、笑いの(放送の)素人ならではの質問をする。東野が「何となく分かりません?」と取りなすが、松本氏は「そこまで俺に言わす?傷ついてるんですけど」と返す。

このやりとりは分からない人も多いだろうから、筆者なりに解説を施しておく。『ウッチャンナンチャン』『笑点』『笑っていいとも!』は、「毒にも薬にもならない笑い」と言うことである。

対して松本氏のマンザイは以下ののようなモノを排した笑いである。

・寄らば大樹の陰
・触らぬ神にたたりなし
・当たり障りがない
・世間様のご機嫌
・無難
・角が立たない
・事を荒立てない
・奇をてらわない
・堅実な
・リスクの少ない
・波風立たない
・穏便な

だから筆者は松本人志のマンザイリサイタルが見たいのである。トークでは物足りない。

なお、番組の最後には4人の構成者の名前がクレジットされるが、松本氏はこれらの構成者のアイディアをもとにコメントしているのではないと思う。また、そう信じたい。

筆者はかつて、ある大物司会者に「報道番組に構成者は要らない」と言われたが、これは一面で真実である。報道番組に演出家の名前が制作者としてスーパーされるのが不自然なのと同様である。

【参考】<キー局全部になぜ出ない?>安倍首相『ワイドナショー』出演情報で考えるテレビの公平中立

だが、構成者も演出家も「報道が番組化」したとたんに必要になる。出すVTRをわかりやすく興味深く事実に即して作るのにはどうするか、コメントが思いつかない出演者へのコメント例を考える、スタジオの出し物を魅力的にする、ナレーションをブラッシュアップする、書けないディレクターの面倒を見る。仕事はたくさんあることを構成作家のひとりとして申し添える。

それから、最後にもうひとつ書き添えておかなければならない。

安倍首相が出演して収録済みの、前週4月17日のワイドナショーの放送が取り止めになった。このことについては、「松本が激怒しているなどと言われているがそんなこと全くない」「あの状況でオンエアした方が、フジテレビに激怒しますよね。バラエティーをやってはいけないとは思わないけれど、内容と番組次第。タイミングといい」と答えている。

しかし、この放送中止は地震による自粛うんぬんが問題なのではない。参議院選を占う前哨戦である衆院補選の直前に、自民党の党首である安倍晋三総裁だけをテレビに出演させようとしたことにある。

松本氏の言う「タイミング」を考えてみれば分かるが、このタイミングでは安倍氏は内閣総理大臣ではなく自民党総裁と判断されるからである。もちろん松本氏の責任ではなくプロデューサーの責任である。

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