舛添都知事のお金にまつわる「セコい話」に唖然
メディアゴン / 2016年5月3日 7時30分
両角敏明[テレビディレクター/プロデューサー]
* * *
石原慎太郎氏が書いた『天才』がきっかけでしょうか、田中角栄元首相の再評価が進んでいるようです。
田中角栄元首相は政治の『天才』だったのかもしれませんが、ありとあらゆる手法を駆使した裏金作りと税金逃れの『天才』だったことは立花隆氏の著作により明らかです。
世の中には形ばかりの法人を作って節税をはかる方が少なくありません。また法人に実態があっても、自家用車を社用車にしたり、個人別荘を法人の福利厚生施設にしたり、家族旅行を会社の出張扱いにするなどの税金逃れはよく聞く話です。
脱税は違法ですが、節税や税金逃れは手続きが整っていればおとがめはありません。『ルールに従っているから問題ない』ということです。
では、税務署長が法の抜け穴を探して節税や税金逃れに熱心だったらどうでしょう。違法でなければ問題はないのでしょうか。総理大臣ならどうでしょう。
【参考】都知事の高額出張費は「わかりやすいところを叩く」ネット世論の格好のターゲット[茂木健一郎]
田中金脈が騒がれたころ、立花隆氏の著作を読みながら、形式的には違法と言えなくても総理大臣が節税や税金逃れに走るってどうなの?と思いました。総理大臣は税務署長の行政組織上の最上位者であり、もとより国民に公平に税を納めることを求める立場なのですから。
下種の勘ぐりと言われそうですが、今回の舛添要一都知事のニュースを視ていると、どうしても同様の疑問を感じてしまいます。
問題の湯河原の別荘、表札には株式会社舛添政治経済研究所とあります。別荘は舛添さん個人の所有ではないようです。
世田谷の立派なご自宅も同じ株式会社舛添政治経済研究所からの賃借の形をとり、高額な家賃のやりとりが問題になったことがありました。
株式会社舛添政治経済研究所の社長は舛添さんの奥様です。役員に親族の名前もあるとか。社長である奥様に政治や経済を研究されているような経歴は見当たりません。
実態としてどのていど研究やシンクタンク機能を果たしているのかうかがい知れません。また報道によれば株は舛添要一さんが全株所有されています。要するに典型的なファミリー企業のように受け取れます。
世間によくあるこの形は、舛添さん個人と株式会社舛添政治経済研究所との間で、公私の区別が見分けにくく、筆者から見ると節税や税金逃れ、あるいは個人資産隠しのご努力をされているような感じがしないでもありません。もちろん仮に節税行為があったとしてもすべて合法に処理され、『ルールに従っているのだから問題はまったくない』とおっしゃるのでしょうが。
しかし、税に関して都知事のような高位の行政官と一般人とでは求められるモラルのレベルは違うはずです。税務署を含む行政のトップが総理大臣であるように、都知事は都民に公平な都税負担を求める都税事務所のトップでもあります。
もし万が一にも、舛添都知事がファミリー企業を楯に公私を使い分けて節税や諸負担軽減に走っているとしたら、たとえそれが合法であっても世界的大都市の知事さんとしてはいささかセコイと言われるのではないでしょうか。
公用車以外でも、飛行機はファーストクラス、ホテルはスイートと公費を使う時は大盤振る舞いと指摘されている舛添都知事ですが、調べればお金にまつわる話はいろいろあります。
一昨年、「しんぶん赤旗」が指摘したのは、舛添さん自身が結成した「新党改革」が、借金返済に使うことを禁じられている政党助成金や立法事務費を借金返済に充てた疑いでした。
また、元妻の片山さつきさんが語っていますが、舛添さんが隠し子の養育費減額をめぐり元愛人と争ったという話や、舛添さんの実姉が生活保護を受ける際、1万円でも2万円でもという役所からの負担要請を舛添さんが断ったという話もありました。
それぞれ部外者にはうかがい知れない事情があるにしても、舛添都知事にはお金に関してどうにもセコイ感じがつきまとい、人物としてのイメージは大物感に欠けます。
アメリカではトランプ氏が大統領選選挙活動をほとんど自費で賄っていることも人気の要因と言われています。舛添さんは、北海道とか福岡に別荘をお持ちだとか。土地を買い漁るなど資産形成にとても熱心だったとも一部で言われましたから、相当な資産家であり、かなりお金をお持ちなのではないでしょうか。
ならば、『ルールに従っているのだから問題はまったくない』などと強弁されるのはお止めになって、公用車もファーストクラスもスイートルームも、一定の範囲を越えたものはこの際どかーんと自腹をお切りになったらいかがでしょうか。
そうすれば、もしかしたら誤解なのかも知れない世間のセコイ印象が払拭され、大物感が出て、今後を考えればその方がきっとお得になるのでは。
【参考】<キー局全部になぜ出ない?>安倍首相『ワイドナショー』出演情報で考えるテレビの公平中立
お金の問題を離れて、もうひとつ書き添えれば、いかがなものかと思うのが問題の別荘が湯河原にあることです。
知事とはその都道府県、とりわけその観光地をPRするのも重要な仕事です。今回の騒ぎは、東京都知事が、都の公用車を使い、毎週毎週、遠路はるばる神奈川県湯河原まで出かけていたという話です。
舛添都知事はその批難に対し、『ルールに従っているのだから問題はまったくない』と言うほかに、湯河原は『のんびり、ゆっくりと落ち着いて公務ができる』と弁明しました。
さらに危機管理上の問題を指摘されると、『湯河原は奥多摩より早く帰ってこられる』とまで高言されました。しかし、フジテレビの『新報道2001』は奥多摩の方が早く都庁まで帰れることを実証しています。
これでは都知事がわざわざ具体的な地名と不確実なデータをあげてまで、東京の観光地よりも神奈川の観光地の方が知事の別荘に適していると断言したことになります。まるでセールスマンが自社製品を差し置き、他社製品を大声でPRしたようなものではありませんか。
たとえば奥多摩にある蛇の湯温泉とか、奥秩父の柴原温泉など、のんびり、ゆっくりと公務が出来そうな温泉地は東京にもあるのです。都知事ならこういうところをPRするのが大事なお仕事なのに真逆のとこをやっていてるのですから、名指しされた奥多摩のみなさんをはじめ都民はお怒りになって当然です。
舛添さんはオリンピックを控えた世界に冠たる大東京の知事です。堂々としていなければいけません。
自身にまつわるお金のことでとやかく言われ、その度に聞く人が納得しそうもない弁明をべらべらとしゃべりまくるようなセコいことはもうおやめになりませんか。
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