天才棋士・羽生善治と天才プログラマー・ハサビスの対話[茂木健一郎]
メディアゴン / 2016年5月17日 7時40分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
5月15日放送のNHKスペシャル『天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る』はとてもおもしろかった。さまざまな場面がある中で、白眉は、羽生善治さんが、ディープマインド社の(AI開発者の)ハサビス氏と英語で話し、チェスをするシーンだったように思う。
なぜ、羽生さんとハサビスがチェスをするシーンが面白かったのかと言えば、そこに、二人の「人間」が向き合っている、生々しい構図があったからである。つまり、そこには、二つの生命があった。
池上高志(東京大学教授)とも時々話すテーマだけど、artificial life >> artificial intelligence なのである。生命と知性を比較すれば、明らかに前者の方が広いし、深い。人間の場合は、知性が、生きることの必然の果実として生まれてきている。
生命の進化を記述するダーウィンの体系は、その含意が深くて、利他性や、包括適応度、生態系、ニッチなど様々な展開があるが、そのような成熟は人工知能の世界ではまだ見られない。人工知能は、計算という単一文脈の中での最適化だからだ。
【参考】<人工知能の時代には人格が大事>Nスペ「天使か悪魔か 羽生善治 人工知能を探る」[茂木健一郎]
人工知能の最も興味深い問題は、それが、先を見ずにはいられないという人間の生命の業のようなものの果実だということだろう。チューリング機械を考え、トランジスタを発明し、人工知能を開発せずにはいられない人間という生命のあり方がきわめて面白い。
アルファ碁とイ・セドルの対決に見られるように、自分たちのベスト・アンド・ブライテストを破る人工知能をつくることに情熱を傾ける人間は、「知性」ということを超えたsapere aude (dare to know)の暗い衝動にかられているように見える。
以上のようなことがあるから、ハサビスと羽生さんが向き合ったときに、ああ、二人は生きているんだなあ、という感覚をもったことが、昨日の番組の一つのクライマックスだったのだと思う。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
ノーベル化学賞のハサビス氏、AI創薬で「来年に臨床試験に入る」「開発は順調だ」
読売新聞 / 2024年11月22日 20時35分
-
ノーベル化学賞・ハサビス氏が来日 日本のトップ棋士と囲碁対局
日テレNEWS NNN / 2024年11月21日 20時51分
-
AI開発でノーベル賞のハサビス氏、日本棋院を訪問 井山王座と対局
毎日新聞 / 2024年11月21日 20時16分
-
ノーベル化学賞のデミス・ハサビス氏が井山裕太王座と対局 囲碁プログラム「アルファ碁」開発者
日刊スポーツ / 2024年11月21日 18時7分
-
ノーベル化学賞のデミス・ハサビス氏が井山裕太王座と囲碁対局「囲碁を楽しむ皆様へ感謝」
スポーツ報知 / 2024年11月21日 16時27分
ランキング
-
1大阪メトロの座席で尻にやけど…原因は「アルカリ性洗浄剤」 警察は液体が座席に付着した経緯を捜査
MBSニュース / 2024年11月25日 18時0分
-
2「70万円あまりを11月4日に支払った」 斎藤兵庫県知事代理人が内訳も明かす 知事選の選挙活動めぐり公選法違反の可能性との指摘を受け対応 近く「請求書を公開する」とも
ABCニュース / 2024年11月25日 14時43分
-
3「クマ駆除要請の拒否を認める」北海道猟友会 全道71支部に通知
HTB北海道ニュース / 2024年11月25日 18時31分
-
4和歌山知事が国民民主党を批判 年収の壁巡り「無責任」
共同通信 / 2024年11月25日 16時28分
-
5能登地震で不明の男性か 土砂崩れ現場で「人のようなもの」発見 石川・輪島市
日テレNEWS NNN / 2024年11月25日 20時18分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください