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<三島賞>蓮實重彦氏「中二病」会見は日本の文化にとって非常に嘆かわしいこと

メディアゴン / 2016年5月18日 7時30分

矩子幸平[ライター]

* * *

5月16日に開かれた「第29回三島由紀夫賞」選考会において、元・東大総長でフランス文学者の蓮實重彦氏「伯爵夫人」の受賞が決定した。

三島由紀夫賞といえば、「文学の前途を拓く新鋭の作品一篇に授与する」とし、気鋭の若手作家の受賞が目立つ。そのいわば「新人賞」に、齢80歳の蓮實重彦氏が選ばれたわけだ。

受賞に際して開かれた記者会見では、受賞自体を「はた迷惑な話」として、報道陣からの質問に対して、一貫して不機嫌と不快感を全面に出した発言をし続けた。

ほとんどに質問に対して、悪態をつくような返答か、あるいは「申し上げない」やら「答えない」やら・・・といった、具体的な回答拒否が大部分を占めた。

よく言えば「難解な対応」なのかもしれないが、その実、はなはだ失礼な反応ばかり。やりとりの字起こしを見るだけでも、「こんな幼稚な奴の自己満足のために、我々の血税が使われていたのか」と嫌な思いをさせられる。

蓮實氏は自身が受賞したことを次のように述べている。

 「80歳の人間にこのような賞を与えるという機会が起こってしまったことは、日本の文化にとって非常に嘆かわしいことだと思っております。」

もちろん、これは理解できる。80歳の老学者に新人向けの賞を出さざるを得なかった候補作品の相対的な魅力のなさ。これは言い換えれば、三島由紀夫賞が対象とする分野では「若手が育っていない」ことを意味するわけで、日本の文化にとっては嘆かわしいことだ。

しかし、それ以上に嘆かわしいことは、蓮實氏のあまりに幼稚で、「中二病」的な言動だ。東大総長まで務めた人物が、いかなる理由であれ、開かれた記者会見の場で、露骨に不愉快感を出すべきだったのか。単なる演出、スタンドプレーだったとしてもだ。

【参考】自ら「炎上」へと突き進む?舛添都知事の「理論的な釈明」

ましてや本人の嗜好にあわなかったのかもしれないが、著名な文学賞の受賞だ。悪い話ではあるまい。また、どう見ても「無礼とは言えない記者からの一般的な質問」に対して、それをバカにしたような発言も鼻につく。これが、大人のすべき対応なのか。日本の大人はいつの間にここまで礼節と教養のない存在になってしまったのか。

蓮實氏のような人物が公の場面であのような態度がとれてしまうということは、日本の文化にとって本当に嘆かわしいことだ。

天下の東大のトップだった人間がそれで良いのか。退任してもなお、教育者・学者として、国民の手本になるような対応をすることが求められるべきではないのか。例え演技でもそうすべきではないのか。

80歳の日本を代表する知性が「中二病」とはこれほど恥ずかしいことはない。不良ぶる発言で「俺って異例だよね」と自己満足に浸るよりも、黙って賞金100万円を熊本震災の復興支援に募金することの方がはるかにかっこいい。そもそも不愉快ながら受け取ってしまった文学賞なのであれば、その賞金は受けとるべきではない。それとも賞金が欲しくて賞を受けたのか。

東大総長にして難解な文章を駆使する評論家でフランス文学者。地位も名誉を手にいれている蓮實氏だけに、多少のわがままも「変わり者」ということで許容されるのかもしれない。

しかし、そんな元東大総長氏の2000万円を超える給料や多額の研究費だって、国民の税金で賄われてきたのだ。もちろん「収入の多くは講演会や印税です」と言うかもしれないが、その活躍も「東大教授」だったからこそであることを忘れてはいないか。

元東大総長たるもの、公の場面では死ぬまで国民の手本となるような対応が求められるはずだ。

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