<民進党ロゴ騒動の本質>何をしても炎上するモードに突入した民進党
メディアゴン / 2016年5月22日 7時40分
藤本貴之[東洋大学 准教授・博士(学術)/メディア学者]
* * *
5月19日、民進党が募集していたロゴマークが決定し、発表された。4月から開始されたWEB公募で、応募総数は3676件。そこから最終候補4案に絞り込まれ、国会議員による投票などで決定したという。各デザイン案の得票数は非公表。
そんな民進党のロゴだが、発表直後から、肉まん・あんまんでお馴染みの「井村屋」のロゴに酷似しているという指摘がネットを中心に多発した。
続出する「類似指摘」に、岡田克也民進党代表は会見で、
「井村屋に連絡し『問題ない』と了承を得た。我々(民進党)とはコンセプトが違う」
と説明し、事態の収拾を図った。政党と食品メーカーなのだから、コンセプトが違うのは当たり前だろ!・・・といったツッコミはさておき、今回のロゴ騒動は、民進党が現在置かれた立場を象徴している出来事であろう。
すなわち、現在の民進党は、何をしても批判され、マイナスに受け取られ、すぐに「炎上」へと展開する危険なモードに突入していると考えられるからだ。
例えば、今回の民進党ロゴの類似問題も、民進党でなければ問題になっていない、ということが実情。また、民進党でなければ、類似が指摘されたとしてもニュースにもならないレベルで消えていたはずだ。
そもそも、漢字の「人」を見立てたような形状や、それを傾けることでスピード感や躍動感を生み出すデザインは多い。しかも、それらを2つ並べることで、「人間関係」や「関わり合い」といったハートフルな印象を醸すのはデザインの常套手段だ。これらの組み合わせは、陸上競技大会などのロゴマークなどによく応用されている。
「人間性や人間らしさ」を印象づけたり、「躍動感」を表現するような場合には、ありがちなデザインであり、同じような図案は有名無名問わず、無数に存在している。図にも示したように、井村屋のロゴのようなデザインは、今回の民進党ロゴに限った話ではなく、ちょっと探せば、いくらでも類似ロゴを見つけ出すことができる。(図を参照)
それは、「平和」を表すための「鳩」や、「世界は一つ」を表すための「様々な人種が手をつないで輪になっている」図案などと同じだ。世界中で認識が共有されているようなデザインをいちいち指摘してはきりがない。
つまり、今回の民進党や井村屋のようなロゴは、デザイン的にはありふれているのだ。よって、「誰が見ても完全にパクリ」「どう見てもほとんどコピペ」でもない限り、とりたてて批判的されるようなものではないデザインの一種だろう。
結論から言えば、民進党ロゴと井村屋ロゴは、印象や基本路線は似ているが、必ずしもパクリや模倣や類似が騒がれるほど酷似しているとは言えない。民進党ロゴの以上に、井村屋ロゴに似ているデザインは無数にある。
しかしながら、冷静に見れば大きな問題など起きようもない民進党ロゴが、発表早々から「似ている」という批判・批評を多発させてしまう現実。とりたてて問題にするようなことはではないことが「大問題」として認識され、拡散されてしまう事実。
これは民進党が恒常的な「炎上状態」に突入している組織/対象になってしまっていることの証明に他ならない。ロゴの類似指摘などは、民進党の言動を批判的に受け止めるための単なる「口実」に過ぎず、結局、「何をしても炎上する」のが現在の民進党のモードなのだ。
民進党の恒常的な炎上モードへの突入に関しては、筆者は熊本地震の時の「民進党公式ツイッター炎上騒動」の時に、その危険性を指摘した。
「民進党公式ツイッター炎上騒動」とは、熊本震災の対応について、与野党を超えた支援活動を要望する国民からのメッセージに対して、民進党公式ツイッターが、災害支援とは無関係の政治的な自民党中傷の繰り返したことで、「炎上」。さらにその理由を「スタッフが勝手にやった」と責任の転嫁をしたことで、さらなる炎上を加速させた騒動だ。
その時、筆者は拙稿「<熊本地震で民進党ツイッターが炎上>「中傷ツイートは職員の責任」理論は炎上が加速するだけ(http://mediagong.jp/?p=16573)」において、次のように書いた。
「最近、何かあればすぐに『炎上、炎上』と表現され、炎上未満のものでも、ネットで発生した苦情やトラブルは『炎上』とされてしまう。そのような早計な「炎上」乱用はすべきではないが、今回の一件は間違いなく『炎上』だ。(中略)炎上のメカニズムについては、筆者は拙著「だからデザイナーは炎上する」(中公新書ラクレ)でも詳述したが、一言で言えば、ネットでの非難や批判の枠を超え、リアルな社会や人間関係にも強い糾弾や影響を及ぼし始めるような展開を指す。今回の民進党ツイッター問題も同様に、単なるネット上での批判にとどまらず、党の活動や運営にも今後長く尾を引くことになるはずだ。」
もちろん、ツイッター騒動だけで、現在の民進党のモードが決まったわけではないが、筆者の予測のとおり、早くも「尾をひく」事態を生みだしたことになる。
さて、今回のロゴに関して言えば、東京五輪エンブレム騒動もあり、ゴシップとして批判や粗探しをするには格好の「炎上ネタ」だ。時事性、話題性もある。今回の民進党ロゴの類似指摘は、それを効果的に利用されただけであり、騒動の本質もそこにある。同じように今後、手軽なネタから民進党は次々と批判され、隙あらば「炎上」へと誘導させられてしまうだろう。
民進党としての再出発を象徴するために発表されたはずだった新ロゴが、早々と「パクリ疑惑」という負のジャケットを着せられ、批判的に受け取られ、拡散される。それを擁護する風潮も皆無だ。
スタートから出鼻をくじかれた形だが、何をしても炎上する「恒常的な炎上モード」に突入した民進党が、この負のスパイラルから抜け出すことは簡単ではない。
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