生徒が教師を驚かせてこそ、ほんとうの教育[茂木健一郎]
メディアゴン / 2016年5月23日 7時40分
茂木健一郎[脳科学者]
* * *
ぼくが最初に家庭教師をしたのはなんと高校生の時で(近所の小学生のお母さんがたのんでいらした)、それ以来、予備校や今の大学まで、いろいろな場所で教えてきたけれども、その経験から一つ言えることがある。
それは、教育とは、教師が完全情報を持っていて、その部分集合を伝え、時にはテストしてスコアリングする限り、あまりおもしろいことが起こらないということである。ほんとうに面白いことは、生徒側がサプライズするときに起こる。
いま注目されているアクティヴラーニングにしても、面接重視の入試にしても、あるいは志願のエッセイにしても、鍵になるのは、生徒が教師(ないしは評価者側)を驚かせることがある、ということにあるのではないか。
たとえば、ハーバードのサンデルさんの授業はネットで公開されているけれども、あの対話の中で、サンデルさんの予想を超えた、あるいはサンデルさん自身も気づいていなかったような点を学生が発言して、サンデルさんが感動しているような雰囲気の瞬間がある。
【参考】<実社会から乖離する司法>ろくでなし子「女性器データ」が有罪判決[茂木健一郎]
ハーバードやケンブリッジは入試で長時間のインタビューをするけれども、その時も、実は、志願者の発言から、評価者側が学んだり、「へえ、それは」と感嘆したり、そのような瞬間が必ずあるように思う。
今流行り始めた、スクラッチをつかったプログラミングでも、子どものつくってきたものが、教師の想定しているものを超えているときに、ほんとうに教育が成功しているように思う。考えてみたら、それは、人間と人間の関係の基本だと言えるだろう。
このように考えると、一般に、教師が正解の完全リストを持っていて、生徒の反応をそれと照合してスコアリングするようなタイプの教育が、いかにつまらないかということが見えてくる。
生徒が教師を驚かせてこそ、ほんとうの教育なのである。それは、教師にとっても同じことだろう。
(本記事は、著者のTwitterを元にした編集・転載記事です)
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
授業料無償化に大阪の公立校対抗 志願者確保へ入試前倒し検討
共同通信 / 2024年9月11日 15時33分
-
「お金持ちになりたい」オックスフォード大入試面接で秀才ほど落とされ、本音を語った人が受かった納得の理由
プレジデントオンライン / 2024年9月4日 9時15分
-
茂木健一郎氏 水ダウのコロナ対策企画に「相変わらずサイテーだな」「もうやめたら」
東スポWEB / 2024年8月30日 16時49分
-
ペーパーテスト一発勝負“万能説”に異論! 不公平感漂う「内申点」や「学校格差」の意外な事実
オールアバウト / 2024年8月27日 21時50分
-
トラウデン直美「おじさんの詰め合わせ」発言が物議 ひろゆき、茂木健一郎...著名人も見解示す
J-CASTニュース / 2024年8月23日 18時17分
ランキング
-
1救急車のフロントガラス壊す・酔った患者の家族が暴行、消防隊への妨害が5年で96件…東京消防庁
読売新聞 / 2024年9月20日 16時48分
-
2一家3人殺害、孫を鑑定留置=来年1月まで―静岡地検支部
時事通信 / 2024年9月20日 15時6分
-
3遺体の頭を金属の棒で突き、頭蓋骨が崩れる…岐阜市斎苑「きれいに火葬するためだった」
読売新聞 / 2024年9月20日 12時33分
-
4大分、北海道の原告が和解=強制不妊、合意後初―地裁
時事通信 / 2024年9月20日 18時43分
-
5歌舞伎町で若い男女2人死亡 ホテルの外階段から転落か
毎日新聞 / 2024年9月20日 11時17分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください