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リニューアル「笑点」は高齢視聴者を見限った大バクチに出たか?

メディアゴン / 2016年6月7日 7時30分

高橋秀樹[放送作家/日本放送作家協会・常務理事]

* * *

春風亭昇太が新司会の第2回「笑点」(6月5日放送・日本テレビ)を見た。リニューアル以前と以後で「明らかに変わった」と感じたことがある。それは編集の方針である。おそらく、編集の担当者(社)も交替になったのではないか。そう思うくらい編集の方針が変わっていた。

では、どのように編集の方針が変わったのか。

例えば、テンポが速くなっている。基本的には「ネタを連発する」と言う編集方針なのだろう。歌丸の司会時代にあった「ネタの間のだらだらトーク」(貶しているのではなく、良い意味で)が、一切なくなっている。もしかすると、現場ではこれまで通りなのかもしれないが、それをカットしているのかもしれない。あるいはカットはしていないが、番組自体にもう「ネタの間のだらだらトーク」がないのかもしれない。

【参考】<適任?不適任?>「笑点」新司会者・春風亭昇太の可能性

いづれにせよ、この「ネタの間のだらだらトーク」をやめて「ネタを連発する」ということは、いわば「若者にも合わせた」ということを意味する。もちろん、本当に若者に合わせた番組にするためには、ネタ自体も変えなければいけないが、そこまでには至っていない。

しかし、だ。「笑点」が、ネタ連発の速いテンポにするのは、非常な大英断でもある。

理由は簡単で、高齢者には聞き取りにくくなるからだ。筆者は61歳だが、職業柄、こういうネタは聞きつけているので年齢の割には聞き取り能力があると思っている。そんな筆者でも、何を言っているか分からないネタが2つもあった。筆者以上の年齢で、且つネタを連発させるような早いテンポのコンテンツに馴染みのない高齢者であれば、聞き取れないネタはもっと多いだろう。

今、日本一高い「笑点」の視聴率を支えているのは高齢者だ。しかし、大英断によってテンポの早い番組へと舵を切ったのだとすれば、「笑点」は自分自身の高視聴率を支えている高齢者を見限った・・・ということなのだろうか。それとも・・・。

昇太が冒頭で面白いフリをした。

 「では、三遊亭と林家の皆さんのご挨拶です」

大喜利のメンバーはすべて三遊亭と林家の亭号になっている。現在の「笑点」の大喜利メンバーには、大亭号である柳家も、古今亭も、最初から排除されている立川も登場しない。この絶妙のフリにどう答えるか筆者は期待したが、結局、スルーされて何も起きなかった。こういうところはまだ、いぜんの笑点流なのであろう。

「笑点」が高齢者を見限り、編集方針を変えるという大バクチしているなら、それもまた良し、ということも事実。所詮芸能である。これは卑下しているのではない。芸能には「所詮芸能」と思う開き直りが絶対に必要だからである。

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